mineoが「音声フルMVNO事業」に参入する狙い なぜKDDI回線から? 既存mineoサービスへの影響は?(1/2 ページ)

 オプテージは2026年1月27日、携帯電話サービスであるmineoにおいて、KDDI回線でのデータ通信、音声通話、SMSに対応したフルMVNO事業に参入することを発表した。事業の開始時期は2027年度の下期を予定する。

 音声フルMVNO事業へ参入することにより、データ通信に加えて音声やSMS通信の設備を自社で提供し、電話番号の管理やSIMの自社発行を行えるようになる。これにより、従来は制約のあったかけ放題などの音声通話サービスや、独自性の高いデータ通信サービスを柔軟に設計できる体制を整える。

取締役 常務執行役員・モバイル事業推進本部長 松本和拓氏(写真=左)と、モバイル事業推進本部 モバイル事業戦略部長 松田森弘氏(写真=右)

 国内では、IIJ(インターネットイニシアティブ)が2018年からNTTドコモ回線を用いたデータ通信対応のフルMVNOサービスを法人やIoTデバイスに向けて提供している。この他、ソラコムがKDDI回線でデータ通信のフルMVNOサービスを提供している。2026年11月には、日本通信がNTTドコモ回線の音声通話に対応したフルMVNOサービスの提供を予定している。

 従って、「KDDI回線のデータ通信、音声、SMSに対応したフルMVNOサービス」は、オプテージのmineoが国内初となる。

 これまで多くのMVNOは、通信設備の大半を移動体通信事業者であるMNOから借り受けてサービスを提供するライトMVNOという形態を取ってきた。mineoも2014年のサービス開始以来、このライトMVNOという立場で事業を継続してきたが、その中でもユーザー同士でパケットを分け合う仕組みの導入など、独自のサービスを展開することで差別化を図ってきた。しかし、ライトMVNOという仕組みの中では、通信制御や管理機能に多くの制約が存在し、特に音声通話やSMSに関しては、MNOの仕様に依存せざるを得ないという課題があった。

mineoは2014年のサービス開始以来、このライトMVNOという立場で事業を継続してきた

 取締役 常務執行役員・モバイル事業推進本部長の松本和拓氏も、これまでの事業展開を振り返りつつ、現状の課題を次のように説明する。「われわれは単なる格安携帯ではなく、ユーザーと共に価値を創るというスタンスを大切にしてきた。しかし、現状のサービス基盤は限界に達しており、音声通話やデータ通信の設計自由度が低いため、新サービスの開発に時間がかかるという制約がある。モバイル通信は単なるツールから、個々のライフスタイルに合わせたパートナーへと進化しており、多様なニーズに応えるためには、自社で通信の中核機能を担う必要がある」

現行基盤は限界に達し、自由度の低さが開発の遅延を招いている。モバイルが生活のパートナーへと進化する中、多様なニーズに即応するには、通信の中核機能を自社で担い、柔軟なサービス設計を可能にする基盤への刷新が不可欠だ
オプテージが示すライトMVNOにおける課題。mineoは音声フルMVNO参入により、SIM発行や音声通信を自社管理化。ライトMVNOの制約を脱し、データと音声を一体とした柔軟な設計が可能になる。顧客ニーズに寄り添い、独自性を生かした新たな通信体験の創出を目指す

 さらに細かくライトMVNOの課題を見ていくと、ライトMVNOではMNOから提供される通信制御の枠組みの中でしかサービスを構築できないことも見逃せない。例えば、特定の利用シーンに特化した通話プランや、高度なセキュリティを必要とする業務用途の通信設定など、細かなカスタマイズを行うことが困難だった。音声フルMVNO化によって、自社で音声交換機を運用できるようになれば、これらの制約から解放される。データ通信と音声通信を一体として捉えた自由度の高い設計が可能となり、これまでにない利便性を提供できる。

 ライトMVNOにおける課題に対し、今回参入を決定した音声フルMVNOでは、加入者管理装置やデータ交換機、音声・SMS交換機を自社で保有することになる。そのため、回線の開通作業やMNPの手続きも自社で対応可能となる。また、物理的なSIMカードだけでなくeSIMを含む多様なラインアップを自社で発行・管理できるようになるため、デバイスに応じた最適なソリューションの提供が可能になる。これまでMNO側に依存していた海外ローミングについても、自社でコントロールできる範囲が広がることで、提供エリアの拡大やコストの最適化が期待されている。このように、音声フルMVNOへの転換は、単なる通信機能の強化にとどまらず、ユーザーに提供する体験価値そのものを引き上げるための戦略的な転換点となる。

加入者管理装置や音声交換機の自社保有により、音声・SMSの制御権を確保。回線開通やMNPも自社で担うことで、MNO主導の制約を解消する。データと音声を融合した自由度の高いサービス設計を可能にする基盤だ
音声フルMVNO化により、通話プランの柔軟な設計が可能。SIMの自社管理で、eSIMや海外ローミング、法人向けIoTなど多様なニーズに対応する。利用スタイルに即した、付加価値の高い通信サービスを幅広く展開していく
ライトMVNOと音声フルMVNOの違いを設備面で比較した図

 今回の発表で注目したいのが、オプテージが最初の音声フルMVNOの提携先としてKDDI回線を選択したことだ。mineoはこれまでもNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3回線を提供するトリプルキャリアを強みとしてきた。その中で最初にKDDIを選んだ理由について、松田氏は「MVNO業界全体を見渡した際、選択肢の広さが非常に重要だと考えている。特定の回線に限定せず、多様な選択肢を提供できる体制を目指しており、今回、KDDIとの接続条件が整ったこと、そしてタイミングが合ったことが大きな要因だ」と答える。

「多様な選択肢の提供」を重視するmineoは、音声フルMVNO回線にKDDIを選択。松田氏は「接続条件とタイミングが合致したことが主な要因だ」と話す。特定の回線に限定せず、利便性を追求する体制構築の一環といえる

 その松田氏の回答に補足する形で、松本氏は「われわれは基本的にマルチキャリアでの展開を前提としている。NTTドコモとの接続も当然視野に入れており、どちらかの回線が劣っているといった理由で選定したわけではない。最終的には両方の回線で展開することを目指しており、今回は諸条件を検討した結果、KDDI回線との接続を先行して進める形となった」と述べた。

 将来的には、国内では例を見ないマルチキャリアでの音声フルMVNO事業者へと進化することを目標に掲げている。これは、ユーザーが自分の利用環境に合わせて最適な回線を選べるというmineoのブランド価値を、フルMVNOの領域でも維持・発展させることを意味する。ドコモ回線を用いた音声フルMVNOの実現についても、引き続き検討が進めており、実現すればさらに柔軟なサービス提供が可能となる。このように、KDDI回線からのスタートはあくまで通過点であり、真の狙いはあらゆるユーザーニーズに応えられるマルチキャリア基盤の確立にある。

 また、データ通信だけでなく、音声通話にも対応させる理由について、松田氏は「音声があればメインのスマホになる。さらに、音声とデータの違いを超えたようなサービスも提供できる」と話す。音声に対応したことで、よりサービスを多様化させる狙いがあるようだ。

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