園遊会 元アイドル二人の着物に個性がキラリ 佐野量子さんは豪華な「京友禅と西陣織」の逸品 菊池桃子さんは清楚な「五つ紋の正礼装」
赤坂御苑で開かれた天皇、皇后両陛下主催の秋の園遊会には、各界の功労者ら1500人が出席した。女性皇族のドレスコードは洋装だが、和服で臨む招待者は多く、赤坂御苑の緑に、色とりどりの着物が美しく映えた。なかでも注目を集めたのは、俳優の菊池桃子さんと、武豊夫人で元俳優の佐野量子さん。二人の元アイドルの和の装いは、それぞれの個性が伝わる美しさがあった。
【写真】2人の元アイドル着物に個性がキラリ 菊池桃子さんは清楚な「五つ紋・正礼装」 佐野量子さんは豪華「京友禅と西陣織」の逸品!
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80年代に、正統派アイドルとして人気を博した菊池桃子さんは、昨年デビュー40周年を迎えている。いまもライブ活動やドラマなど、活躍は続く。
天皇陛下と皇后雅子さまは、夫の元内閣審議官の新原浩朗さんと隣に並ぶ菊池桃子さん、仲睦まじいふたりに、お祝いの言葉を伝えた。
「少し早いですが、(結婚記念日)おめでとうございます」
新原さんは、妻の菊池桃子さんが40周年の記念CDの発売やコンサートをしたこと、大学を卒業した娘が就職をしたことを、両陛下に報告。ともに家庭を大切に思い、互いを支え合う夫妻の姿が伝わってきた。
陛下は、穏やかな声で、菊池さんにエールを送る。
「長く活躍されていますね。テレビで、お母さん役で」
おふたりは、菊池桃子さんが短大の客員教授を務めていることもご存じだったという。
園遊会が終わり、取材を受ける菊池桃子さんと夫の新原浩朗・元内閣審議官。新原さんは、昼間の正礼装であるモーニングコート。菊池さんは、既婚女性の正礼装である五つ紋の色留袖と、品よく落ち着きある佇まい=赤坂御苑、2025年4月22日15時26分、JMPA新原さんは、昼間の正礼装であるモーニングコート。隣の菊池桃子さんは、既婚女性の正礼装である五つ紋の色留袖と、夫婦ともに落ち着きと品のある佇まいであった。
菊池さんが選んだのは、淡い青みを含んだ白色を指す、白縹(しろはなだ)の絹地に、吉祥豊かな意匠が描かれた京友禅の着物。
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京都市で京友禅の誂えを専門とする、「京ごふく二十八」を営む原巨樹(はら・なおき)さんは、謙虚な人柄がにじむ着物選びだと話す。
「色留袖、それも五つ紋付きとなると、着用する機会も限られます。しかし、きちんと正礼装をお仕立てになる、そうしたご選択も大切なことと思います」
衿元は、白の伊達衿。小物も白で統一した正統派で控えめな着こなし、と原さん。
ほんのり青みのある白の絹地に描かれたのは、波を背景に帆を張る宝船。
「船に積まれているのは、かぶると体が隠れる『隠れ蓑』や『隠れ笠』、宝が出る『打出の小槌』。そして砂金やお金を入れる『巾着』と知恵の象徴である『宝巻(ほうかん)』、金を計る『分銅』、重ねた輪がどこまでも広がる『七宝違い』といった、宝づくしの文様です」
小槌や蓑は、金銀の箔や金糸の刺繍で彩られ、華やかな柄行に。
菊池さんの和装の品の良さは、帯合わせからもにじむ。
「黒地に金の配色が美しい西陣織の帯。金の輪宝文(宝輪文)を中心に、桐唐草や瑞雲などが織り表されるなど、落ち着きのあるお品です」(原さん)
菊池桃子さんの京友禅に描かれた宝船。積まれているのは、かぶると体が隠れる「隠れ蓑」や「隠れ笠」、宝が出る「打出の小槌」。砂金やお金を入れる「巾着」と知恵の象徴である「宝巻(ほうかん)」、金を計る「分銅」といった宝づくしの吉祥柄=赤坂御苑、2025年4月22日、JMPA凜とした和服姿が注目を集めたのは、競馬騎手の武豊さんの妻で、元俳優の佐野量子さん。
デビューは1984年。おっとりとした性格と天真爛漫なキャラクターで人気を博し、94年に芸能活動を引退、翌年に武豊さんと結婚した。
テレビなどに姿を見せる機会はほぼないが、園遊会では、変わらぬ美しさと、洗練された所作が際立っていた。
園遊会が始まる前、御苑内を散策する武豊さんと妻の佐野量子さん=赤坂御苑、2025年10月28日13時11分、JMPAPage 3
京都に住む佐野さんが園遊会に選んだのは、やはり京友禅の訪問着。
わずかに黄みがかった白を指す「卯(う)の花色」の絹地に、牡丹や菊、橘といった草花の吉祥文が描かれている。
「熟練の職人が糸目糊を置いた模様部分に色付けをする、『挿(さ)し友禅』の技法で華やかに染め上げられた訪問着です。花と同じ朱色の入った帯締めを使う色の感覚も素晴らしいな、と感じます」(原さん)
佐野さんが選んだ帯は、西陣織の逸品で、限定の品だという。
帯の柄は、正倉院文様を現代風に織り出したもの。数珠状に円が連なる「連珠円文」のなかに、白虎と鳳凰を配されている。
「連なる円文は、古代ペルシャで登場し、シルクロードを経て奈良時代に日本へ伝わったと言われています」
佐野さんが手にするのは、七宝文が優美なビーズ織りのバッグ。専用の織機を用いて、一粒ずつ丁寧につなぎ織り上げられたビーズ織りは、熟練の職人の手で丁重にバッグに仕立てられた美しく格調高い品。
秋の園遊会。両陛下と言葉を交わす武豊さんと妻の佐野量子さん。背筋が伸び、凜とした佇まいの佐野さんの和装は、注目を集めた。見事な西陣織の帯は、「連珠円文」の円のなかに、白虎と鳳凰を配した見事な品=赤坂御苑、2025年10月28日14時15分、JMPA園遊会の懇談で雅子さまより、
「いかがでいらっしゃいますか」
そう、声をかけられると、佐野さんは控えめな声で、こう答えた。
「サポートを頑張っております」
そうした武豊さんへの気遣いは、いたるところで感じられた。園遊会がスタートする前、中の池のそばで、待機するおふたり。佐野さんが、武豊さんのモーニングコートを整える場面もあり、仲睦まじさが伝わってきた。
ふたりの元アイドルの和装は、それぞれの人柄と個性が伝わるような、しっとりとした装いだった。
(AERA 編集部・永井貴子)
佐野量子さん。手にするのは、最高級のビーズ織りを職人がバッグに仕立てた、美しく格調高い品=赤坂御苑、2025年10月28日13時10分、JMPA こちらの記事もおすすめ 【秋の園遊会】とっておきの瞬間をもう一度 信子さまはそっと華子さまに手を添え 天皇陛下と雅子さまは振り返りながら丘を下り