アングル:カタール提供の「エアフォースワン」、戦闘機の護衛が必要との指摘も

5月15日、トランプ米大統領はカタールから高価なボーイング747型機を譲り受けて暫定的に大統領専用機「エアフォースワン」として使用する計画だが、航空専門家や業界関係筋は、巨額の費用をかけてセキュリティが強化されない限り、戦闘機による護衛が必要になったり、飛行が米国内に制限される可能性があると指摘している。写真は2月、フロリダ州ウエストパームビーチで、カタール所有のボーイング機を視察するトランプ米大横領の車列(2025年 ロイター/Kevin Lamarque)

[ワシントン 15日 ロイター] - トランプ米大統領はカタールから高価なボーイング747型機を譲り受けて暫定的に大統領専用機「エアフォースワン」として使用する計画だが、航空専門家や業界関係筋は、巨額の費用をかけてセキュリティが強化されない限り、戦闘機による護衛が必要になったり、飛行が米国内に制限される可能性があると指摘している。

カタール王室が提供を予定している豪華機の改造には、セキュリティの強化に加え、盗聴を防ぐための通信機能の改善や、飛来するミサイルを回避する能力が必要になると専門家は指摘する。改修費用がどの程度かかるかは不明だが、ボーイング (BA.N), opens new tabが受注した2機の新エアフォースワンの建造費用は50億ドル(約7300億円)超となっている。

専門家からは、仮にカタールから機体を譲り受けて数カ月かけて改修したとしても、軍用機によるエスコートや飛行の国内制限は解除されない可能性があるとの指摘も出ている。一方で、トランプ氏は最高司令官としてこうしたあらゆる制限を停止することもできると指摘する元米空軍高官もいた。

戦闘機による護衛と短期的な改修で、十分な大統領警護が得られるかどうかについては疑問も出ている。

米ワシントンのシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)国防安全保障部門の上級顧問マーク・カンシアン氏は、改修の規模と確保できる改修期間を踏まえれば、「それは不可能だと思う」と語った。

同氏は、「エアフォースワンは、核戦争を含むあらゆる環境に耐えられるよう設計されている」と指摘。核爆発による電磁パルスへの耐性は、設計段階から機体の配線やシステムに組み込まれていると述べ、「これは後付けできるものではない」と述べた。

カタール側が提供を申し出たとされる機体は13年前に建造され、価格は4億ドル。トランプ氏の同機受領計画は広く報じられ、批判されたが、同氏は申し出を断るのは「愚かな」ことだと述べて一蹴した。

トランプ氏はまた、これは実用的な判断だと強調。大統領1期目に自ら再交渉した2機の新エアフォースワンの契約で、ボーイングによる納品が大幅に遅れていることに失望していると述べた。

元空軍当局者は、「トランプ氏がその飛行機を望み、『本物のエアフォースワンにあるべき装備がないことによるリスクを受け入れる』と言うのなら、(機体受領は)実現できる」と話した。

エアフォースワンは通常は戦闘機の護衛を伴わないが、カタール機の場合はミサイル防御のために護衛を必要とするかもしれないと元当局者は付け加えた。

コンサルティング会社エアロダイナミック・アドバイザリーのマネージングディレクター、リチャード・アブラフィア氏は、カタール機には「電子戦システムやミサイル警戒システムなど、エアフォースワンの防衛力に関わるあらゆる装備が搭載されていない」と、護衛が必要になる理由を説明した。

同氏はまた、「国際空域や空港の安全レベルを保証することはできない」ため、国外への飛行は禁止される可能性があると付け加えた。

エアフォースワンにはミサイル攻撃を防ぐフレアや電子妨害装置、赤外線探知システムなど一連の先進的な防衛システムが搭載されているため、戦闘機による護衛はほとんど必要ない。

国外を飛行中や、2001年9月の同時多発テロ後のように国家安全保障上の危険が生じた際には、護衛機が同行することもある。

米政府は、カタール機を暫定的にエアフォースワンとして使用するため、防衛請負業者のL3ハリス・テクノロジー(LHX.N), opens new tabに改修を委託した。

ミッチェル航空宇宙研究所のダグラス・バーキー氏は、この他に、ホワイトハウスや航空機乗務員の機密業務を処理できる通信設備や、トランプ大統領やスタッフ、シークレットサービス、報道陣を乗せられるようにする改修も必要になる可能性があると述べた。

専門家らは、いずれにしてもこの飛行機がトランプ氏の移動に使用される前に、米軍は新たなセキュリティ機能と新たな配線を設置する必要があると指摘する。

<遅延>

10年前に始まったエアフォースワンの新造計画は、慢性的な遅延に直面している。新しい747-8型機2機の納入は、計画の3年遅れの2027年に予定されている。

ボーイングは2018年に2機の建造を39億ドルで受注したが、その後、コストは少なくとも47億ドルにまで上昇。ボーイングはまた、このプロジェクトに関連して24億ドルの費用を計上している。

カタール側が提供を申し出たとされる機体は元々、カタール王室や政府関係者に私的なフライトを提供する国有VIP専用航空会社カタールアミリフライトが運航していた。23年に民間チャーター会社のグローバル・ジェット・アイルオブマンに売却されたと報じられた。

同機の価格は4億ドルとされているが、アナリストのシリウムは、中古の747-8型機なら価格はその4分の1となる可能性があると指摘。一方、VIPジェット業界の関係者は、特注の内装は機体そのものよりもはるかに高い価値があると述べた。

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Mike Stone is a Reuters reporter covering the U.S. arms trade and defense industry. Most recently Mike has been focused on how the war in Ukraine has changed the future of war and how industry has adapted, or faltered. Mike, a New Yorker, has extensively covered how the U.S. has supplied Ukraine with wepons, the cadence, decisions and milestones that have had battlefield impacts. Before his time in Washington Mike’s coverage focused on mergers and acquisitions for oil and gas companies, financial institutions, defense compnaies, consumer product makers, retailers, real estate giants, and telecommunications companies.

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