「無料でラグドール差し上げます」保護猫人気につけ込むペット詐欺、杉本彩が鳴らす警鐘

熊本で悲惨な事件が判明した。猫の保護活動を続ける団体に所属する女性の自宅からなんと約150体にも及ぶ猫の死骸が見つかった。6月2日、複数の保護団体と県警立ち会いのもと、熊本市動物愛護センターの調査と猫の亡骸の回収を行った。室内は、ゴミと猫の糞尿だらけで、中にはキャリーケースの中に入ったままの亡骸もあったという。6月10日、熊本市は女性を動物虐待による動物愛護法違反の疑いで熊本県警に刑事告発した。

「犬や猫の保護活動をしている団体の多くは、きちんと熱心に活動されています。今回熊本で起きた事例に関しては調査中で詳しいことがすべて把握できていませんが、保護をしていた人、団体が自分たちが飼育できる範囲を超えて多頭飼育崩壊を起こす『アニマルホーダー』の事例、飼育放棄や悪環境での飼育で命を奪ってしまう事例も各地で起こっています。この問題については他の事例も含めて、いずれじっくりとお伝えしたいと思っています。

こういった動物保護のアニマルホーダーとともに、問題となっているのが、動物たちを利用した詐欺ビジネスです。保護猫や保護犬が話題になる中、そういった動物たちを利用した詐欺が横行しているのです」というのは、『公益財団法人動物環境・福祉協会Eva』 の主宰でもある俳優の杉本彩さんだ。

長野県松本市の繁殖事業者の事件など、動物虐待事案の告発や、動物福祉向上に関する普及啓発活動を積極的に行う杉本さんが自ら執筆する連載の第5回では、「保護猫を利用した新たな里親詐欺」について寄稿いただく。

以下より、杉本彩さんの原稿です。

「保護猫」人気を利用した悪質詐欺ビジネス

猫や犬との出会いは、人生を豊かに彩ってくれるかけがえのないものだ。近年はSNSやメディアの影響もあり、特に猫の魅力に注目が集まるようになった。さらに、保護猫を迎えるという選択肢も広く知られるようになり、多くの命が新たな家族と出会うチャンスを得ている。一頭でも多くの保護猫が幸せになることは、人と動物が幸せに共生できる社会を目指す上で、とても大切なことだ。

photo/iStock

しかし、残念ながらその「注目」や「善意」に便乗する悪質な行為も増加している。そのひとつが、保護活動や支援団体の存在を悪用した、新たな形の「里親詐欺」だ。

最近、ある保護猫支援団体の事務所住所が、まったく無関係な詐欺行為に利用されるという被害が報告された。

詐欺犯はSNS上に「猫舎閉鎖のため、純血種の子猫を無償で譲渡します」といった投稿を掲載。まるで信頼できる団体を装って、「餌代や保険料の名目で数千円をPayPayで送金すれば譲渡できる」と誘導し、お金をだまし取る、という手法だ。今回のケースで詐欺情報として使われたのは、人気猫種の「ラグドール」だった。

人気猫種でもある「ラグドール」の名前が使われた。photo/iStock

さらに、引き取り場所として、まったくもって無関係な団体の事務所住所を勝手に指定。振り込んだ人が実際に訪れても、猫はおらず、当然お金も戻ってはこない……。被害に遭われた方にとっては大変ショックであり、住所を利用された保護団体にとっても、まったく無関係な詐欺に巻き込まれることで信頼を損なわれ、活動に支障をきたすことになった深刻な事案だった。

こうした詐欺にはいくつかの共通点があった。「純血種が無料」「即日譲渡」「SNSだけのやりとり」「匿名決済」……。あまりにも“手軽すぎる”話は、まず疑ってかかるべきだ。

ペットの譲渡をSNSのやり取りだけで完結するのは「おかしい」という認識を持つべきだ。photo/iStock

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