石油問題 国民目線で踏み込んだ情報を 新聞に喝! 経済ジャーナリスト・石井孝明
「日本は6月に詰むんですよ」。4月4日放送のTBS系の「報道特集」で専門家がそう発言した。ホルムズ海峡の封鎖で、ナフサ(石油化学製品の原料)供給がなくなるのだという。
この発言はネット上で批判を集め、高市早苗首相も自らのX(旧ツイッター)で、番組名こそ出さなかったものの「国内需要4カ月分を確保」と具体的な数字を挙げて反論する事態となった。番組は後日、「趣旨を適切にお伝えすることができなかった」とXで釈明した。
この専門家の発言はあおり気味で、批判を受けるのは仕方ないかもしれない。けれども、政府の石油問題への危機意識のなさが、批判でかき消されないかが心配になる。
ホルムズ海峡の事実上の封鎖で世界的に石油の流通が混乱し、「石油節約海外で先行 週4日勤務や車使用制限」(4月5日付日経)などの動きがある。日本では4月に各地で例年通り「お花見渋滞」が起きた。昨年末の暫定税率廃止、3月のガソリン・軽油補助金の実施で、自動車燃料の上昇が抑えられたことが一因だろう。その政策は、自動車利用の頻度を増やして石油不足に拍車をかけかねない。そして補助金などの負担により財政を痛める。政府の動きはちぐはぐだ。
これまでの新聞・メディアの報道も歯切れが悪い。
「補助2カ月で枯渇か ガソリン1兆円政府基金」(同7日付毎日)など、月5千億円と見込まれる補助金の継続支出を危ぶむ報道はある。しかし、国民が燃料の値上げを受け入れるべきかどうかという、価値判断への視点がない。それはこの問題を巡る記事に見られる傾向だ。
本当に石油製品は不足しているのか。石油関連製品の流通は裾野が広く、記者は実情を追いづらいのかもしれないが、現場の状況を伝える報道が少ない。
「ナフサ不足で調達リスク 製造業3割『影響』 供給網巡り民間調査」(同18日付日経)は、帝国データバンクの調査結果から、流通は止まっていないものの、将来の不足への懸念が出始めたことを伝えた。しかし、実態がいまひとつ不透明だ。
トランプ米大統領のイラン攻撃や、日米関係を大切にしている高市政権への一部メディアの批判は続く。その熱心さに比べると石油製品不足をめぐる報道は、踏み込みも数も少なく、やや物足りない。
「事実は無視されたからといって、存在をやめたりしない」と英国の作家、オルダス・ハクスリーは言った。
事実を追うと、「石油ショックの再来」という恐ろしい未来が見えるかもしれない。そうであっても、新聞・メディアは事実に迫ってほしい。主張や不安をあおることよりも、国民がたどり着けない事実・情報を、読者はプロの記者とメディアに求めている。
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石井孝明
いしい・たかあき 昭和46年、東京都生まれ。慶応義塾大学経済学部卒、時事通信記者などを経てフリーに。経済・環境情報サイト「with ENERGY」を主宰。著書に『埼玉クルド人問題』など。