脱「高みの他人事」(196)
ニュースタパで掲載されているサムネイル
そんな言い方はないだろう。
山上徹也被告に、無期懲役を言い渡した奈良地裁の判決のことだ。
「不安定な家庭環境の中で、母の言動や家族間の激しい言い争いもあり、被告は家庭内で安息の場所を得ることができなかった。生い立ち自体は不遇な側面が大きい」
「兄の自死に大きな衝撃を受け、教団に対して抱いていた複雑な感情が激しい怒りに転じたことも、それ自体理解が不可能とは言えない」
「不遇な側面」、「理解が不可能とは言えない」・・・。なぜ「不遇であり、よく理解できる」とはっきり言わないのだろうか。
裁判長は、田中伸一氏。判決で自民党と統一教会との関係に言及しなかったことを考えると、政治権力に忖度したのが大きな理由だろう。自民党は統一教会による信者や家族への加害を、長年にわたって黙認してきた。その党の総裁を最も長く務め、統一教会との関係が近かったのが安倍晋三氏だ。常識的に考えれば、判決でも言及する。それをしなかったのは、「とにかく山上被告が悪かったことにする」という結論ありきだったのではないか。
ただ、もう一つ理由があると思う。
それは、高みから人を裁く仕事を続けているうちに、他者への共感力がすり減ったのではないかということだ。「高みの他人事」になってしまっている。
他者の痛みを理解するのは難しいが、分かろうとする努力は大切だと思う。女性として産まれ、男性として生きている知人がアドバイスをくれたことがある。
「他者の痛みを理解しない人には、『あなたが傷ついたらどうしますか』と聞くよりも、『あなたの大切な人が傷ついたらどうしますか』と問いかけた方がいいですよ」
山上被告の痛みを理解することと、殺人という暴力を絶対に許さないことは決して矛盾しない。
重要なのは、安倍氏の遺族や友人の痛みだけではなく、山上被告の痛みも理解しようとすることだと思う。そうしない限り、同じ境遇にある人たちが追い込まれる。追い込まれれば、新たな暴力を引き起こすかもしれない。絶望と暴力の連鎖は、絶対に食い止めなければならない。
地べたを這う
日本のメディアもまた、「高みの他人事」のような報道が多い。安全地帯に身を置いて、天下国家を語っている印象だ。
Tansaのメンバーは決して高みに立たず、「地べたを這う」方針を共有している。地べたを這えば、目を背けたくなるような現実に向き合うことになるし、攻撃してくる相手も現れる。だが地べたからの視点を持たないと、力ある探査報道はできない。
韓国のニュースタパとTansaが、「TM特別報告書」の探査報道で協力することは、あっという間に決まった。「地べたを這う」精神が共通していることを、折に触れて確認し合ってきたからだ。
「TM特別報告書」の共同企画に関する、最初のオンラインミーティングが痛快だった。
私は終盤で言った。
「統一教会はすぐに訴えてくるし、反撃もあるでしょう。こちらはしっかり対処するし負けることはないが、覚悟はしておいてください」
ニュースタパのメンバーたちは笑顔だ。
「統一教会の報道では、すでに世界日報から訴えられました」
世界日報は統一教会が運営する新聞社だ。ニュースタパのサイトを確認すると、世界日報はニュースタパに対し、統一教会のハン・ハクチャ総裁が世界日報を訪問した際の映像を削除するよう求めていた。裁判所は却下した。
ニュースタパは早速、Tansaが1月22日に出した記事について報じてくれた。タイトルは「【日韓共同取材】 日本のTansa、『TM特別報告書』に記された統一教会と自民党の追跡」。
筆者のイ・ミョンソンさんは次のように書いている。
「Tansaは創刊当初からニュースタパと協力関係を続けてきたパートナーメディアだ」
「現在、日本は高市早苗首相による衆議院解散を受け、2月8日投票の総選挙を控えている。Tansaは投票日までTM特別報告書の核心内容を集中的に取り上げる計画だ」
「Tansaは、TM特別報告書が単なる宗教団体内部資料ではなく、自民党と統一教会の長年にわたる共生関係を立証できる核心文書だと判断している。特に自民党の公式調査で事実上除外されていた安倍元首相と統一教会の関係が各所に登場する点から、自民党の説明を根本的に再検証する必要があるとの立場だ」
頼もしいパートナーと共に、Tansaは統一教会と自民党との癒着を徹底的に追及していく。
編集長コラム一覧へ