定年夫の「週3夕飯作るわ」宣言に妻は 「道楽」「科学実験」の先に

前日に漬け込んだ豚肉を串に刺して焼く安孫子邦夫さん=新井義顕撮影

 ワカメと昆布。最初は見分けがつかなかった。

 妻へのざんげの念から、「料理おじいさん」となった今、思う。

 定年男子こそ、厨房(ちゅうぼう)が似合う。

妻は現役、家に一人 もやもや

 安孫子(あびこ)邦夫さん(78)=大津市=は、元市職員。定年後の再雇用も終わった64歳の頃、時間ができた。真っ昼間から、NHKのBSで大好きな映画を楽しんでいた。

 一方、妻の恵子さん(74)は当時、薬剤師として働いていた。

 一人で家にいると、何だかもやもやする。思い返すと、家庭を顧みない生活を送ってきた。

 市職員時代は、仕事、仕事、仕事……。残業に喜びすら感じていた。残業後に同僚と交わす晩酌も楽しかった。妻は働きながら、娘2人を育て、家事と育児をワンオペでこなしていたのに。

 ある夜、布団の中でぱっと目覚めた。背中が汗ばんでいた。

 「根性入れ替えて、家事をせなあかん。このままやったら極楽浄土に行けへん!」

 ♪包丁一本 晒(さらし)に巻いて

 藤島桓夫が、板前修業に旅立つ男の心情を歌った「月の法善寺横町」。歌詞が聞こえてきた。

 料理をやってみよう。若い頃から関心はあった。

 妻に宣言した。「週3回、夕飯作るわ」

 「そんなんできるんか」。冷ややかに返された。

 がぜん闘志がめらめらと燃えた。

妻の恵子さんと会話しながら食事を楽しむ安孫子邦夫さん=新井義顕撮影

 とはいえ、経験ゼロ。

 同時並行で複数の作業をする…

この記事を書いた人

北村有樹子
大津総局|教育、県政担当
専門・関心分野
教育、人権、多文化共生

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