超大口トレードにざわつく日本株市場、政策株売却に税金対策観測も
商社や保険株で相次いだ超大口のブロックトレードを巡り、市場では取引の主体や目的に関するさまざまな臆測が広がっている。
最近話題を呼んだのが三井物産と伊藤忠商事だ。ブルームバーグのデータによると、2月26日以降、両銘柄合計で約1300億円規模のブロックトレードが成立した。米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が日本の大手商社5社の株式を買い増す意向を示した直後とあって、市場参加者の注目が集まった。東京海上ホールディングス株でも同様の取引が確認されている。
関連記事:超大口ブロックトレードに投資家困惑-三井物と伊藤忠、東京海上
三井物や伊藤忠の担当者はブロックトレードの主体は把握していないとブルームバーグの取材に回答したが、それでも市場で取引主体を突き止めるようとする動きが止まる気配はない。
現在分かっているのは、いずれのトレードも同じ手法で執行されたことだ。全て始値で取引され、価格にディスカウントはない。三井物や東京海上H株では、同じ手法によるブロックトレードが今月5日まで続いており、背後には同一の主体がいる可能性が高いとみられている。
以下は、フィリップ証券の増沢丈彦株式部トレーディング・ヘッドやT&Dアセットマネジメントの酒井祐輔シニア・トレーダーら複数のトレーダーへの取材で挙がった主なシナリオだ。
政策保有株の売却
近年、コーポレートガバナンス(企業統治)の改善や資本効率向上といった観点から政策保有株(株式持ち合い)を解消し、売却益で株主還元や成長投資を強化する動きが相次いでいる。政策株の売却を進める大手損害保険グループでは、MS&ADインシュアランスグループホールディングスが約3兆6000億円(時価)の売却で得る資金のうち、2兆1000億円程度を成長投資に振り向けると発表していた。
T&Dアセットの酒井氏は、政策保有株の売却だった場合は、銀行や保険会社といった金融機関が売り手となる可能性が高いと話す。買い手はヘッジファンドなどが想定されると言う。
関連記事:日本株の持ち合い解消に商機、手数料8000億円巡り証券各社が争奪戦
税金対策のトレード
年度末が接近する中、大口の投資家が口座間で保有株式を移動させた可能性も浮上している。3月末を基準日に配当が支払われる株式について、税金の支払いで有利になるよう社内の別の口座に移すことがあるためだ。
関連記事:海外勢4年半ぶり日本株売越額に外資系証券の影、財務省と東証で違い
配当金が支払われる国や地域の税率が適用されるため、より税金が安い地域の口座に動かすという仕組みだ。三井物や伊藤忠、東京海上H株の配当基準日はそれぞれ3月末。こうした税金対策は、一部投資家にとってブロックトレードで口座間の保有資産を入れ替える動機になり得る。