ダリもアインシュタインも信じた「夢うつつ時間」の力(ライフハッカー・ジャパン)

昔の私は、夜中に目を覚ますと不安に駆られていました。 でもやがて、夜中に目覚めて眠れなくなるのもそれほど悪いことではないと気づきました。この半分眠っているときに浮かんでくるアイデアには、びっくりするほど役に立つものがあったからです。 そうした時間のあいだに、記事のアイデアを思いついたり、複雑で曖昧な問題に思いを巡らせたりすることができました。 こうして私は、心理学で言うところのこの「変性意識状態」のおかげで、昼間とはまた違ったかたちで人生のさまざまな課題と向き合えることを知ったわけです。 どうやらそれは、私だけではなかったようです。

2022年、のちに広く知られるようになる「Mind after Midnight」と題された研究論文が発表されました。 アリゾナ大学の科学者が率いたこの研究では、深夜の考えごとはネガティブなものになりやすいほか、繰り返し思いを巡らせたり、衝動に駆られたりする傾向があることがわかりました。 また、夜中に起きていると、危険な行動が増えることや、リスクのある報酬がより魅力的に思えることも明らかになりました。 しかし、夜中の考えごとにはいい面もある、と考える人もいますし、一部の睡眠医学専門家もそれに賛成しています。 ひとつの理由は、ひっきりなしに鳴る通知音などの気が散る要素から逃れて考えごとができる時間帯は、深夜以外にあまり存在しないことです。また、完全には目覚めていないため、夢見心地の状態が独創的な考えを育むというメリットもあります。

サルバドール・ダリやアルベルト・アインシュタインは、「ヒプナゴジア(hypnagogia)」と呼ばれるこの半覚醒状態のときに、独創的な問題を解決していたことはよく知られています。 コロラド州オーロラのUCHealthで睡眠医学を研究するKatherine Green博士は、「夜は脳にとって、静かな時間帯なのです」と指摘します。 「夜になると、気が散る要素が少なくなります」 ウィスコンシン州ミルウォーキーに拠点を置くクリニック「Advent」の設立者Madan Kandula氏は、夜中に考えごとをする習慣によって、経営の効率化が促されると述べています。 その成果もあって、30カ所を超える場所で自身のクリニックを展開できるようになったそうです。 「私の場合、考えがひとつにまとまるのはまさに夜中なのです」とKandula氏は述べます。「自分は、この奇妙なはざまの世界で暮らしているようなものです。そこにいると、前日に取り組んでいた問題について、解決の糸口が見つかります」 自身も医師として訓練を受けたKandula氏は、数時間ほど眠ったあとの午前3時ごろに目が覚めることがあるそうです。 まだ夢うつつの状態では、「何事にもとらわれず、解決策に到達できる」と言います。


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唯一のマイナス点は、寝不足で翌日に頭がふらふらするときがあることだそうです。 UCHealthのGreen博士によれば、深い眠りから目覚めた時には、(たとえそれが真夜中であっても、)前日に学んだことがまとまりやすいそうです。たしかに、途切れることのない質の高い眠りは大切で、7時間以上が理想ですが、 その一方で、こうした眠れない時間はアイデアをまとめるのに役立つと、Green博士は述べています。 「夜中にいろんなアイデアが浮かんで目が覚めたとき、脳はシナプスを活性化させたり、アイデアとアイデアを結びつけてたりしています」 これをうまく利用するための方法としてGreen氏がすすめるのは、ノートを手元に置いておくことです。 そして、思いついたことを書き留めたら、あとは放っておくのがいいとのことです。 「思いついたアイデアを忘れてしまうのはイヤですが、そのアイデアが頭のなかを駆け巡って眠れなくなるのも困ります」

こうした夜中の「はざまの時間」をうまく活用するうえでのカギは、脳を完全に覚醒させないことだ、と話すのは、カナダ・マニトバ州で睡眠と健康のコーチとして活動するAnnika Carroll氏です。 論理的思考や、衝動の抑制、意思決定を司る前頭前皮質は、深夜の時間帯には活動量が減ります。 それに伴い、自分を過小評価するインポスター症候群的な思考も減る場合が多いと、Carroll氏は述べます。 インポスター症候群的な思考には、より合理的な脳活動が欠かせないからです。 ただし、深夜の脳をうまく活用するに当たっては、注意点がひとつあり、感情的に考えすぎると「悲惨なことになる」そうです。 真夜中に思い浮かぶアイデアが実際に役に立つかどうかを判断するのはなかなか難しい、と語るのは、ニューヨークを拠点とするボディーケア・ブランド「Soft Services」の最高経営責任者(CEO)Rebecca Zhou氏です。 「すぐには反応せず、しばらく時間を置くようにしています」とZhou氏は言います。 「そのアイデアが一日中、何度も頭に浮かぶようなら、信頼できるチームメンバーに話して反応を見て、そのアイデアに追求する価値があるかどうかを見極めます」 深夜の考えごとは独創性を刺激してくれますが、やりすぎには注意しましょう。夜中に目が覚めている時間があまりにも長い場合は、もっと深刻な何かが隠れているシグナルかもしれません。 そのせいで、思考力が低下するおそれもあります。Carroll氏はこうアドバイスしています。 「そんな状態が続いた場合は、私なら、自分が夜中に目覚める理由を探ってみますね」 Originally published by Fast Company [原文] Copyright © 2025 Mansueto Ventures LLC.

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