資生堂が過去最悪の赤字に 低価格撤退やM&Aの迷走……再建の望みは?

 日本を代表する化粧品メーカー、資生堂が苦しんでいる。  11月10日に発表された2025年12月期通期連結業績予想では、売上高を従来の9950億円から9650億円へ下方修正。最終利益も60億円の黒字から520億円の赤字へと変更された。昨年に続く最終赤字であり、過去最悪の最終損失となる見通しだ。 本社、汐留オフィス  人員面でも構造改革が続く。年内に約200人の希望退職を募る予定で、昨年は国内社員の1割超にあたる1500人、今年は米国子会社でも同じく1割超の300人を削減するなど、スリム化を進めている。  コロナ禍での外出自粛による“巣ごもり”により、化粧品の需要が大きく減退したことは、資生堂を含む化粧品メーカー各社に打撃を与えた。その中で、資生堂は2021年2月、選択と集中を掲げ、低価格帯のパーソナルケア事業を投資ファンドへ売却。中・高価格帯に注力することを選択した。売却対象には、ヘアケアの「TSUBAKI」やメンズ化粧品「uno」といった人気ブランドも含まれている。  同社が勝負をかけたのは、中国の14億人市場だった。しかし、ここ数年の景気低迷により、中・高価格帯商品の販売が伸び悩んでいる。加えて、低価格帯ブランドを手放したことで、台頭する中国・韓国メーカーのプチプラ商品に市場を奪われる結果となった。  さらに、米国で買収したブランド「Drunk Elephant(ドランク エレファント)」が、突如として大不振に陥る事態も重なった。  こうした複合的な逆風が資生堂を追い込み、同社はいま大きな岐路に立たされている。果たして資生堂に、再生の道はあるのだろうか。

 資生堂の2025年12月期第3四半期(1~9月)連結決算によれば、売上高ベースの事業構成比は、日本事業が31.6%、中国・トラベルリテール事業が34.6%、アジアパシフィック事業が7.6%、米州事業が11.3%、欧州事業が13.9%、その他1.1%となっている。  事業区分が地域別となっているのが大きな特徴で、特に中国・トラベルリテール事業が日本事業を上回り、最大のシェアを占めている。トラベルリテールとは空港や市中免税店での化粧品・フレグランス販売を指し、インバウンド観光客の“爆買い”需要もここに含まれる。  今年と昨年の第3四半期の伸び率を比較すると、好調なのは日本事業と欧州事業だ。日本事業は今年こそ0.1%増と横ばいだが、昨年10.2%増と高い伸びを示していた。プレステージブランドの「クレ・ド・ポー ボーテ」やアンチエイジングライン「エリクシール」など、コアブランドの新商品の売れ行きが好調だったのが理由だ。  欧州事業も5.0%増と堅調で、昨年の10.9%増に続いて最も成長が続く地域となった。「ZADIG&VOLTAIRE(ザディグ エ ヴォルテール)」や「narciso rodriguez(ナルシソ ロドリゲス)」といったフレグランスカテゴリが成長を後押しした。  一方、米州事業とアジアパシフィック事業は不調に転じた。米州事業はドランク エレファントの不振が大きく影響した。また、アジアパシフィック事業は、タイや韓国は堅調だったものの、台湾で高額化粧品の需要が減退し、今年は1.4%減となった。  中国事業とトラベルリテール事業は、昨年に続き厳しい状況だ。中国では景気低迷が続き、百貨店を中心としたオフライン販売が伸び悩んでいる。トラベルリテール事業は、日本ではインバウンド拡大で堅調だったものの、中国・海南島や韓国での中国人旅行者の消費が大幅に減少し、業績を押し下げた。

ITmedia ビジネスオンライン
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