トランプ関税巡る日米交渉、円のボラティリティー高めるリスクはらむ
米国の関税措置を巡るトランプ政権との協議で日本側の交渉役を務める赤沢亮正経済再生担当相が米国に向け出発した。赤沢氏は自身が望む以上に為替について議論を迫られるリスクに直面しており、展開次第では円相場のボラティリティー(変動率)が高まる可能性がある。
米側の交渉役であるベッセント財務長官とグリア通商代表部(USTR)代表は、為替について議論したい意向を既に明確にしている。米国時間16日に始まる交渉で赤沢氏がどの程度、為替に関する議論に巻き込まれるのかは依然として不透明だが、米側の発言からすると、遅かれ早かれ赤沢氏が対応せざるを得なくなることを示唆している。
グリア氏は13日のCBSの番組で、「われわれの見解では、為替の操作または不均衡、呼び方はどうであれ、米国の輸出業者に悪影響を及ぼし、外国からの輸入品を不当に利する可能性がある」と語った。
トランプ米政権との通商交渉で先頭に立つ日本に世界中が注目している。今回の結果は、特に為替が争点として浮上する中で、今後の交渉の方向性を決める可能性がある。同じように米国から通貨政策で圧力を受けている国の交渉戦略にも影響し得る。
トランプ大統領も円安が日本の輸出業者を助けていると批判してきたが、今週は円が対ドルで半年ぶりの高値を付けている。16日午後の時点で円は1ドル=142円付近で推移しており、年初に付けた158円台から上昇している。
こうした動きを受けて、米国がさらに円高を促すような約束を日本に求めるかどうかは不透明だ。仮に米国がその方向へ日本を動かそうとするなら、日本は関税措置で起こり得る世界的な景気減速と、円高による輸出企業の収益悪化という二重苦に直面するリスクがある。
ニッセイ基礎研究所の上野剛志エグゼクティブ・リサーチ・フェローは、今回の日米交渉の焦点について、為替レートの問題を米国がどの程度深刻に捉えているか、そして円安是正のためにどのような具体策を求めてくるのかという点にあるとの見方を示した。
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日本側で交渉の最前線に立つのは、石破茂首相の側近である赤沢再生担当相だ。赤沢氏は、米側からの為替を含む議論の提起に対して門戸を閉ざすことはないとしている。ただ、為替については加藤勝信財務相が協議することになるとの説明を繰り返し、今週はできる限りこの話題を避けたいという思いをにじませている。
日本政府は、第1次トランプ政権下で為替問題を通商交渉から切り離すことに成功しており、今回も同様の戦略を試みている。為替問題は財務当局に任せるとの認識を当時の安倍晋三首相とトランプ氏が共有し、最終的に両国が署名した貿易協定に為替条項は盛り込まれなかった。
加藤財務相は15日、ワシントンで来週開かれる国際通貨基金(IMF)会合への出席を調整しており、その場でベッセント氏との会談を試みる意向を示した。
グリア氏はCBSの番組で、「各国は自国が人為的に競争力を高めていないことを確認するため、通貨を切り上げる必要があった」と指摘。「われわれはバイデン政権が残した1.2兆ドルの貿易赤字を抱えている。これは人類史上最大の規模で、為替がその一因であることは確かだ」と述べた。
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原題:Japan-US Trade Talks Risk Adding Further Volatility to Yen(抜粋)