田久保真紀氏の再選と同じくらい恐ろしい…候補者乱立「伊東市長選」で囁かれる「当選者ナシ、再選挙」の現実味(プレジデントオンライン)

「学歴詐称疑惑」が全国的な注目を集めた伊東市長選が12月7日に告示される。元静岡新聞記者でジャーナリストの小林一哉さんは「9人が立候補を表明している市長選は、田久保氏も含めて誰も当選せず、『再選挙』になる可能性がある」という――。 【写真】立花氏が勾留されながら伊東市長選に立候補したとしても、田久保氏への「二馬力選挙」はほぼ不可能だ ■全国的な注目を集める伊東市長選  学歴詐称疑惑で失職した静岡県伊東市の“お騒がせ”田久保真紀・前市長(55)が、12月7日告示、14日投開票の伊東市長選に出直し出馬を表明したことで、全国的な注目を集めている。  ことし6月に学歴詐称疑惑が発覚したあと、田久保氏が伊東市議会議長らに“チラ見せ”した卒業証書について、「卒業の事実はなかったが、『卒業証書』は本物であると信じている」と普通ではあり得ない主張をして、大混乱を招いた。  疑惑解明のために設置された市議会百条委員会が田久保氏に「ノー」を突きつけたあと、市議会は全会一致で不信任決議を採択した。  市長不信任決議に対して、田久保氏は大義名分のない市議会解散で抵抗、その後の出直し市議選を経て、10月31日の臨時議会で再度の不信任決議案が可決され、ようやく田久保氏は失職した。 ■田久保劇場の幕はまだ下りていない  ただこの失職で、「田久保劇場」の幕が下ろされたわけではなかった。  市長失職の際、出直し選挙へ出馬の含みを持たせていた田久保氏は11月19日に会見を行い、「伊東市政の改革は道半ば、常に市民の先頭に立って戦う、強く美しい街を再生する」などと再出馬の表明を行ったのだ。  当然、騒ぎの発端となった学歴詐称疑惑の説明責任が問われたが、これまで通り刑事告発を理由に回答を拒否した。  田久保氏は再出馬の理由に、「支援者からの強い声」を挙げていた。そう田久保氏には熱心な一定数のファンがいることは事実である。

■田久保市長を応援する「熱心な支持者」の人数  ことし5月の市長選で、田久保氏は元市長の小野達也氏(62)を約1800票差で破り、初当選した。田久保氏の得票数は1万4684票だった。前回選は小野氏の掲げた約42億円の図書館建設に反対を唱え、白紙撤回することを選挙戦の最大の争点として、主に女性層の支持を取りつけた。  今回の市長選では、田久保氏の“お騒がせ”に反感を抱く市民は二度と投票しないだろう。  しかし、市長選を巡っては12月4日現在、田久保氏を含めて9人が立候補を表明している。さらに立候補の動きもあり、大乱戦が予想される。  現在の情勢だけを見れば、田久保氏の当選はほぼないだろう。しかし、田久保氏に強烈な「追い風」が吹くこともありうる。  前回市長選の投票率は約50%だったが、田久保氏への追い風などをきっかけに投票率が上がり、その結果、田久保氏の票数が増えてしまうことが考えられるのだ。  ある地元関係者は、田久保氏を熱心に支持する市民について、直近の選挙結果などから多く見積もって4000〜5000人はいるとみている。その基礎票に、何らかの風が吹いて、田久保氏の票を一気に押し上げれば、兵庫県の斎藤元彦知事(47)のように勝利してしまう可能性が出てくる。  今回の出直し市長選の最大の焦点は、田久保氏がもう一度、「市長の椅子」に座るような結果になるのかどうかである。  田久保氏に味方する「追い風」とは何か。 ■流行語にもなった「卒業証書19.2秒」  一つ目の追い風の可能性は、2025年の社会・世相を反映した新語・流行語大賞の候補に「卒業証書19.2秒」が選ばれたことだ。  「卒業証書19.2秒」とは、「田久保劇場」を象徴することばである。  田久保氏が市議会議長らに卒業証書と称する書類を「チラ見せ」したことが発端だった。ところが、田久保氏は百条委員会で、卒業証書と称する書類を「チラ見せ」したことを否定、「19.2秒見せた」と主張した。百条委員会は、「19.2秒」が書類を見せた時間ではなく、一連のやり取りのすべての時間だとして、田久保氏の「チラ見せ」の否定を虚偽だと認定した。  伊東市政の一連の混乱を象徴する「チラ見せ」かどうかを連日、テレビのワイドショーなどがおもしろおかしく報道した。その結果、田久保氏の主張した「卒業証書19.2秒」が新語・流行語大賞の30候補にノミネートされてしまった。  12月1日に発表されたことしの流行語大賞には、高市早苗首相の「働いて働いて働いて働いて働いてまいります/女性首相」が選ばれ、高市首相はじめトップ10の新語・流行語大賞の受賞者が発表会場に駆けつけた。  トップ10を期待した田久保氏だったろうが、「卒業証書19.2秒」は選外だった。伊東市発の新語・流行語をひっさげて市長選を戦う思惑は外れてしまったが、爪痕を残したことは事実だろう。

プレジデントオンライン
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