<侵食>犯罪収益で日本の物件購入か 中国人が在留資格目的で実態なく会社経営
日本人を主なターゲットにしたSNS型投資詐欺の詐取金約500億円がマネーロンダリング(資金洗浄)されていた事件で、警視庁などの合同捜査本部が逮捕した男が、不正に得た犯罪収益で日本の不動産を購入している疑いがあることが13日、分かった。購入した不動産の転売先のほとんどは中国人とみられ、日本の「経営管理ビザ」の取得を目的としたペーパーカンパニーを作るために利用されていた疑いが浮上している。
住宅街に起きた異変
男は組織犯罪処罰法違反(犯罪収益隠匿)の疑いで逮捕、起訴された会社役員の林明旺被告(38)=東京都足立区。
「(アパートの)前で中国人が話しているのが目立つが、住んでいる様子はない」
東京荒川区の住宅街にあるアパートの周辺では今年に入り、異変が起こっていた。近くに住むハイヤー運転手の男性(40)は、近所の様子をいぶかしく感じていた。
近くに住む会社員の30代女性も「中国人が目の前の道路に車を止めていて通りづらくなっていたり、回収日でない日に大量のごみを捨てていたりして、警察に相談しようと思ったこともある」と語る。
関係者などによると、このアパートは林被告が昨年6月に犯罪収益で買い取ったとみられる物件だ。外にあるポストから9つ部屋があるとみられ、そのうちのいくつかには会社名が書かれたシールが貼られている。入り口の扉は1つで、取っ手にダイヤル式の鍵がかかっていた。
このアパートは、中国人が、日本国内での新規事業立ち上げを促進するための在留資格「経営管理」を取得するために法人登記用の建物として利用している可能性があるという。
日本でマネロン
捜査関係者によると、林被告は、平成24年5月に中国から日本に帰化し、会社を立ち上げた。令和2年には不動産会社も設立。会社を運営しながら、3年ごろから中国語のチャットグループでSNS型投資詐欺グループらからの依頼を受け、マネロンをしたり、自身が管理するペーパーカンパニーを悪用して詐欺などに使用するスマートフォンを不正に契約したりしていた。
4年に大阪府警による大手都市銀行に対する電子計算機使用詐欺事件の捜査の過程で林被告が浮上。昨年5月に都内で銀行口座のやりとりなどを巡って中国人とトラブルになり、逮捕監禁容疑で逮捕されたことで、マネロンを主導していた犯行が明るみに出た。
林被告が購入していた物件などは全国16都県にわたるとみられ、かつては工場や旅館、老人ホームとして使われていた場所など廃虚のような所も多いという。
経営管理ビザの需要
中国人が日本への移住を望む背景には、治安の良さや日本の教育、安定した社会保障制度を受ける目的があるとみられる。
移住するための一つの手段が経営管理ビザだ。日本に事業所があり、「2人以上の常勤の職員が従事していること」もしくは、「資本金が500万円以上であること」などの条件を満たせば取得でき、最長5年在留できる。
経営管理ビザで日本に滞在する中国人は令和6年6月時点で、2万551人(香港、その他含む)に上る。経営管理ビザが設けられた平成27年に比べ約2・8倍に増加した。
経営管理ビザは、資格に合う活動をしているかの実態確認は難しいとされる。ペーパーカンパニーの設立などを斡旋するブローカーの存在も確認されている。
今回、マネロングループによる犯罪収益が日本での不動産購入につながり、資格外目的での滞在者を増やしている可能性も浮上。捜査関係者は「治安の悪化につながりかねない」と警鐘を鳴らしている。