ホンダが日産と経営統合交渉入り、1.1兆円上限に自己株取得も

ホンダ日産自動車は23日、2026年に新たに共同で持ち株会社を設立する検討に入ると発表した。実現すれば販売台数で世界3位の自動車グループが誕生することになる。会社側は否定しているが実質的なホンダによる救済の色彩が濃い。ホンダは同時に発行済み株式総数の23.7%、1兆1000億円を上限に自己株取得することも発表した。

  発表資料によると、両社の完全親会社となる共同持ち株会社を設立し、26年8月の上場を予定する。ホンダと日産の両社は上場廃止となる見通し。持ち株会社の社長はホンダが指命する取締役から選定するほか、社内・社外取締役のそれぞれの過半数もホンダが指命する。

  実現すれば、人材や技術などでシナジーが生まれ、市場環境の変化への対応力も高まるとしている。同日都内で日産や三菱自と共同会見したホンダの三部敏宏社長は、シナジー効果は、営業利益ベースで1兆円以上となると説明した。日産が筆頭株主の三菱自動車は、25年1月末をめどに両社の計画へ参加するかどうかの結論を出すとしており、合流すれば販売台数は800万台を超え、トヨタ自動車と独フォルクスワーゲンに次ぐ3位の規模となる。

  日産とホンダは独占交渉の義務を負い、解約手数料は1000億円となる。今後、両社で設置する統合準備委員会での検討と今後実施するデュー・ディリジェンス(資産査定)の結果などを踏まえて、より具体的なシナジー効果について分析していくという。

経営統合すれば販売台数でトヨタとVWに次ぐ規模になる

出典:マークラインズ

  電気自動車(EV)やソフトウエアなどの領域で協業を検討していた両社は8月に「ソフトウエア・デファインド・ビークル(SDV)」など5つの分野での協業に合意していた。両社の力を合わせることで自動車の電動化・知能化に向け膨らむ開発投資を分担することなどで規模で勝るトヨタ自動車、EVで先行する中国の比亜迪(BYD)や米テスラなど新興勢に対抗できるかが注目される。

  ホンダの三部社長は、新興メーカーに対して「規模感だけで勝てるかというと、そんなことは全然ない」と述べた上で、今回の計画をきっかけに反転攻勢を仕掛けていきたい考えを示した。「最終的にはやはり今一度世界をリードしたいと思っているので、その中で今日はその一歩目の検討と理解してもらいたい」と続けた。

道路を挟んで営業するホンダと日産の販売店、実現すればディーラー網の整理も課題となる(23日、都内)

  一方、日産は商品ラインアップの刷新やハイブリッド車投入の遅れなどさまざまな原因から販売不振に陥っており立て直しが急務となっている。同社は11月、業績不振を受けて人員や生産能力を削減するリストラ計画を打ち出したが詳細は明らかにしていない。

  ホンダの自己株取得の取得期間は2025年1月6日から同年12月23日まで。資本効率の向上や機動的な資本政策の実施、株主還元の強化などが理由で、従来計画していた1000億円上限の自己株取得は中止する。三部社長は日産との協議中は機動的な取得が制限されるため、現時点で一括で多額の自社株買いをすることにしたと明かした。

ゴーン元会長は疑問視

  両社はこの日の発表資料で、交渉は日産の再建計画の着実な実行が前提となる、とくぎを刺し、三部社長は会見で計画は将来の競争力を見据えたもので、日産の救済が目的ではないと明言。実現するかにかかわらず、日産の業績立て直しは必須となる。

  日産株はアクティビスト(物言う投資家)も保有も明らかになっており、これら株主の今後の動向も注目される。日産を巡っては台湾の鴻海精密工業が株式取得を目指していると報道されたが、内田社長は鴻海から「われわれに対するアプローチの事実は一切ない」と述べた。

  会見に先立ち、逃亡先のレバノンから同日に日本外国特派員協会の会見にオンライン参加した日産のカルロス・ ゴーン元会長は両社の計画は「成功するとは思えない」と述べた。両社の事業には重複する部分が多く、補完し合える領域が少ないことや、ホンダ側にアライアンスの経験がないことを理由として挙げた。

  会社法違反(特別背任)などの罪で起訴され、約5年前に公判中に国外逃亡したゴーン氏は「将来は読めないが、紛争の種はすでにある」と主張した。

  日産の大株主であるルノー・グループは日産・ホンダの発表を受けて、事態はまだ初期段階にあるとした上で、自社および当事者にとって最大の利益となるようあらゆる選択肢を検討していくと述べた。

原題:Renault to Consider All Options in Honda-Nissan Talks(抜粋)

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