【最強】「介護食を食べてみたい」と軽い気持ちで高齢者向け施設を訪問したら、ガチでレストランすぎて普通に注文してしまった

先日、とあるラジオで共演した方から、「うち、アスリートシェフがいる介護施設をやってるんですよ」と言われた。

アスリートシェフ? 介護施設に??

その言葉のインパクトに引き寄せられるように、実際にその施設を訪問させていただいた。そこには、一般の方も利用できる、まさに知る人ぞ知る穴場レストランと呼ぶにふさわしいクオリティの食事が待っていた。

・介護食の取材に来たはずなんだが

向かったのは、千葉県柏市にある「ぞうさんナーシングホーム柏青葉台」

住宅街に佇むサービス付き高齢者向け住宅だ。普段、介護施設に入る機会はなかなかないので、まずは一通り案内してもらうことに。

2024年8月オープンとまだ新しいこともあって、空間はとても洗練されている。インテリアや香りにもこだわりが感じられ、ちょっとしたホテルのよう。

……と思った私の印象は、あながち間違っておらず、実は運営には元・有名ホテルマンの方が2人も携わっているのだとか。

屋上にも案内してもらったので、「ちょっと端っこに立ってもらえます?」なんて、ふざけたリクエストをしてみたり。

・事前予約で一般利用も可能

まぁ、それはさておき、最後に紹介されたのが施設に併設されたレストラン。その名もSUNレストラン

このレストランは、入居者とそのご家族が一緒に利用できるのはもちろん、一般の方も事前予約をすれば利用可能とのこと。

いざ席に着いた私は「そういえば、介護食って……」と話を聞こうとした瞬間、目の前に差し出されたメニューがこちら。

「そば粉のガレット?」「本日の自家製スパイスカレー?」

……えっ? 普通に食べたい。

ということで、気づいたら「ヘルシー日替わりプレート(1518円)」をオーダーしてました。

介護食の取材ってこと、完全に忘れてました……。

・日替わりプレートの内容はこちら

・はまぐりのスープ ・ローストポークのサラダ ・国産牛のデミグラス煮込み ・ぶりのカルパッチョ

・鹿肉のしぐれ煮

サラダにかかっているピンク色のものは自家製ビーツドレッシング。苦味がうまく抑えられていて、リーフやハーブ、エディブルフラワーもふんだんに盛り込まれている。

ポークはしっとりジューシー。国産豚をブロックで仕入れて、低温調理で仕上げているそうだ。

はまぐり出汁のスープは塩を使わず、うま味を爆発させている。香りづけにほんの少しレモンを加えているとのことだが、風味が奥深くて、正直びっくりした。

国産牛のデミグラス煮込みぶりのカルパッチョもとてもおいしい。

これは一般的なレストランの味を超えている……!

……って、私は何をしているんだ。介護食を食べに来たんだった!

・驚きのラインナップ

ということで、改めて「あの〜、介護食を……」とお願いしてみた。すると、別のメニューを渡される。

ふむふむ……鴨蕎麦もいいねぇ、リゾットも気になる……。

って、これも普通にレストランのメニューでは?

と思ったら、「これは入居者向けの介護食の見本メニューなんです」とのこと。

えーー! ラインナップがすごい!

こちらも実際にギリギリ残っていた一部をいただいてみた。味は、やさしめの薄味ながら、おいしい。

せっかくなので、キッチンものぞかせてもらった。

冷蔵庫に貼ってあるメニューも一般的な介護施設ではあまり目にしないようなものばかり。

聞けば、この施設の食事には、シェフのこだわりがたっぷり詰まっている。

化学調味料などは使用せず、素材の味をしっかり活かすこと、ゲル化剤や添加物はほとんど使っていないということなど、まさに手間と技術の賜物だ。

・アスリートシェフ × 介護食 = 最強では?

ここで再び席に戻り、カッコつけてこう言ってみた。

「シェフを呼んでいただけるかしら?」

登場したのは、この施設でシェフを務める坂本さん。元・アスリート専属シェフだ。

選手の海外遠征にシェフとして帯同していた経験があるほか、都内のレストランやホテルでの修行経験も豊富という実力派。

たしかに、施設の入口には選手のサインが描かれていたなぁ。

そんな彼が、これまでのノウハウを活かして、介護施設の食を本気でアップデートしているのだ。

「高齢者だからって、カロリーだけを重視した揚げ物やゼリーばかりじゃつまらない。アスリートも高齢者も、いいものをちゃんと摂るっていう基本は一緒なんですよ」と語るシェフ。

・食べたいものを、食べたいときに

印象的だったのは、こんなエピソード

ある入居者が、食材をすりつぶした「ムース食」から細かくした「きざみ食」に移行したタイミングで、ラーメンをリクエストしたそうだ。普段はなかなか完食できない方だったが、その日はぺろりと完食。

それを見たご家族は、「亡くなった父には、それが叶わなかった。今、母が本当に食べたいものを食べさせてもらえて嬉しい」と涙を流されたという。

介護食って、「制限の多い食事」だけじゃなくて、「もう一度、食を楽しむための手段」なんだなと、しみじみ思った。

・介護食の未来に期待が高まる

「でも、こういう施設って入居料高いんでしょ?」と思いきや、もろもろ含めて月々15万~と平均的な価格だったことにも驚いた。

正直、これまで私は介護食に対して「味は二の次」「見た目は地味」といったイメージを持っていた。けれど、ここでの食事は、味も見た目もプロの一皿だった。

なんだか、学びもありつつ、こんな素敵な食事に出会えたなんて、今日はラッキー! と思いながら歩いていたら、カラスの糞が真横にポトリ。

……ギリギリ当たらなかった私、やっぱりラッキー!

参考リンク:ぞうさんナーシングホーム柏青葉台 執筆:夏野ふとん Photo:RocketNews24.

▼自家製のコーラとジンジャーエール。氷までこだわりが詰まっていた

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