【日本市況】円一時150円台に下落、リスク回避緩和-株反発、債券安

5日の日本市場では円が一時1ドル=150円台前半に下落した。米国のトランプ政権による関税強化への警戒感がやや和らぎ、円買い・ドル売りの持ち高を解消する取引が優勢となった。日本銀行の内田真一副総裁の講演にサプライズがなかったと受け止められたのも円売り要因。株式は反発し、債券は下落している。

  ラトニック米商務長官が4日にカナダとメキシコに対する関税を軽減する可能性を示唆し、市場のリスク回避ムードが後退した。一方、トランプ米大統領は日本時間5日午前に施政方針演説に臨み、4月2日から貿易相手国と同水準まで税率を引き上げる「相互関税」を課すと改めて述べた。関税に対する警戒感は根強く、円の下値は限られている。

  日銀の内田副総裁は5日、静岡市での金融経済懇談会で「経済・物価の見通しが実現していくとすれば、引き続き政策金利を引き上げる方針だ」と述べた。午後2時から記者会見を行う予定だ。

  オーストラリア・ニュージーランド銀行外国為替・コモディティ営業部の町田広之部長は、実需のドル買いや海外時間にドルを売った参加者の買い戻しもあり「150円台を付けにいく動きが出た」と述べた。

国内債券・為替・株式相場の動き-午後1時36分現在
  • 円相場は対ドルでニューヨーク終値比ほぼ横ばいの149円78銭
  • 東証株価指数(TOPIX)は前日比0.5%高の2722.82
  • 日経平均株価は0.5%高の3万7504円36銭
  • 長期国債先物3月物は前日比18銭安の139円15銭
  • 新発10年債利回りは2.5ベーシスポイント(bp)高い1.445%

為替

  東京外国為替市場では、米商務長官がカナダとメキシコへの関税軽減の可能性に言及したことや、日銀の内田副総裁の講演内容は無難との受け止めから円を売り戻す動きが一時強まった。

  野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは、内田副総裁の講演内容にサプライズはないとし、きょうのドル・円は外部要因の影響が大きいと指摘。トランプ大統領の議会演説での発言に振らされている面があり、カナダやメキシコに対する関税がどのくらい軽減されるのかが注目だと述べた。

株式

  東京株式相場は、トランプ米大統領の演説を通過した安心感から午後に上げ幅を拡大した。ラトニック米商務長官がカナダとメキシコに対する関税を軽減する可能性を示唆し、自動車など輸出関連株が買われている。

  しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンドマネジャーは、トランプ氏が施政方針演説で日本に対する関税に触れなかったため、日本株には安心感から買いが入ったと話した。一方、関税政策を巡る不透明感は続き、「腰の据わった買い」は入りにくいとみている。

  インベスコ・アセット・マネジメントの木下智夫グローバル・マーケット・ストラテジストは、自動車株の上昇はラトニック氏の発言を受けて関税政策が和らぐとの思惑が働いていると述べた。

債券

  債券相場は下落。米国の長期金利が上昇したことを受けて売りが優勢だ。内田日銀副総裁の講演の影響は限られたが、午後の記者会見を警戒する見方は根強い。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤原和也債券ストラテジストは内田副総裁の講演について、いまの市場が織り込む利上げパス(経路)をけん制することもなく黙認した格好で、債券相場に大きな影響は出ていないと述べた。もっとも、「午後の記者会見で金融政策に踏み込んだ質問や回答があるかが引き続き注視される」と述べた。

  日銀が5日に実施した国債買い入れオペで、残存期間1年超3年以下、10年超25年以下などの応札倍率が前回から上昇し、需給悪化が示されたことも相場の重しとなっている。

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