噴火の兆候に見える異常な活動、「ゾンビ火山」の復活はあり得るか

南米ボリビアのウトゥルンク山。研究チームが、変形などの活動を調べ、火山が休眠状態から覚めつつある兆候なのかどうかを探った/Michael Sayles/Alamy Stock Photo

(CNN) 通称「ゾンビ火山」と呼ばれる中央アンデス山脈の「ウトゥルンク」は、南米ボリビアの南西部にある最高峰。25万年以上も噴火していないにもかかわらず、ガスの噴出や地震など、活火山と同じような活動の兆候がある。こうしたゾンビが目を覚ますことはあり得るのか。

ウトゥルンクは20年以上前に撮影された衛星レーダー画像から、内部の活動によって山頂付近のおよそ150キロの範囲が隆起した後に沈下していたことが分かっている。研究チームは今回、ウトゥルンクで現在も続く変形などの活動を詳しく調べ、火山が休眠状態から覚めつつある兆候なのかどうかを探った。

研究チームは衛星データと地震活動の分析データを組み合わせ、さまざまな圧力に対する岩盤の反応を表すコンピューターモデルを作成。ウトゥルンク内部の「解剖学」を視覚化して不安定さの原因を解き明かし、4月28日の米科学アカデミー紀要に発表した。

火山噴火は通常、地下にたまったマグマが噴気孔や亀裂から噴出して発生する。マグマが厚いほど噴火の規模は大きくなり、閉じ込められたガスの圧力が高まって突然放出され、マグマが溶岩となって噴出する

しかしウトゥルンクの状況は違っていた。今回の研究の結果、マグマとガスと塩水が熱水系の中で相互に作用して、ゾンビのような轟音(ごうおん)を発生させていることが分かった。

蒸気の放出

ウトゥルンクの地下10~20キロの地点には、およそ200キロにおよぶ世界最大級の巨大なマグマだまりが存在する。過去の研究では、このマグマだまりと地上の山脈を結ぶ熱水系の存在が指摘されていたが、マグマと流体の相互作用については分かっていなかった。

研究チームは2009年から12年にかけて観測された1700回以上の地震活動の信号を利用して、ウトゥルンクの地下の浅い部分の地殻の高解像度画像を作成。さらに地下の重力の変化や岩石の化学組成の変化などを記録して、地熱で熱せられた液体が循環する火山の内部について、これまで分かっていなかった詳細を解明した。

ウトゥルンクの地下では液体がマグマ体に熱せられてガスが放出され、ガスと液体が上方に移動して、火口の下の空洞にたまっていることが判明。この移動によって地震活動が誘発され、蒸気が放出されて岩盤を変形させ、地表を年に1センチほど隆起させていることが分かった。

こうした内部の仕組みが解明されたことで、近い将来、ゾンビが復活しそうにないことが分かったと、オックスフォード大学のマイク・ケンドール氏は解説する。

ウトゥルンクでは地震活動が増加する兆候も、マグマが移動するといった噴火の兆候も見られないといい、「この火山は単にガスや蒸気を放出して落ち着かせているだけのようだ」と同氏は話す。

世界で観測が続けられているウトゥルンクのようなゾンビ火山は数十に上る。今回の研究は、どのゾンビ火山に噴火の恐れがあるかを見極める役に立つと期待されている。

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