補正予算「前年超え」提言、高市政権で初の諮問会議 収支均衡は棚上げ
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政府は12日、高市早苗政権で初めての経済財政諮問会議を開いた。近くまとめる総合経済対策や中長期の財政政策を議論した。対策を裏づける2025年度の補正予算を巡り、新任の民間議員は前年を上回る規模での編成を訴えた。収支均衡にこだわらない意向もにじむなど、政権の積極財政の姿勢が鮮明となった。
経済財政政策を提案する民間議員は高市政権発足を機にメンバー4人のうち3人が入れ替わった。初回の12日は4人が個別に文書を示し、意見を述べた。第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストと若田部昌澄早大教授は初出席の場で早速、24年度の13.9兆円より規模の大きい補正予算を組むよう提起し、「リフレ派」の主張を前面に押し出した。
2人は積極財政をかかげる高市首相の考えに近い。大規模補正を訴えたのは、物価高による消費の腰折れや米国の関税政策による国内産業への悪影響を懸念しているためだ。7〜9月期の国内総生産(GDP)は6四半期ぶりのマイナスの可能性が指摘されている。日本経済研究センターの10月の「ESPフォーキャスト調査」では、民間エコノミストらが7〜9月期の実質GDPが年率で1.35%減になると予測している。
永浜氏は会議で、25年度補正が前年の規模を上回らなければ積極財政の期待が低下する可能性があるとした。「税収の上振れをふまえた『基調的な税収増の想定』を恒久的な財源として使える」との見解を強調した。
政府の補正予算は新型コロナウイルス禍前の19年度までは一般会計で数兆円の計上にとどめていた。ただ、20年度以降は様相が一変し、毎年度のように10兆円を超える規模での編成が続く。今回も冬場の電気・ガス料金の補助や、地域で利用できるプレミアム商品券の発行支援など物価高対策を中心に財政出動を計画する。
会議に出席した片山さつき財務相は経済対策について「物価と金利が上昇する新たな局面における財政運営のあり方をしっかり多角的に検討していく。予算、税制、財政投融資や規制・制度改革といった手法を総動員し必要な施策を積み上げていく」と発言した。
高市首相は物価高対策として「重点支援地方交付金の拡充がカギ」と強調し、迅速に対応するよう指示した。
大規模対策に関しては「突き詰めるとインフレ政策であり、短期的には景気にプラスだが、物価高騰のリスクがある」(伊藤忠総研の武田淳氏)といった見方もある。財政健全化への配慮も求められる。
残る民間議員の2人は新任のディー・エヌ・エー(DeNA)の南場智子会長と、続投した経団連の筒井義信会長(日本生命保険前会長)で、石破茂前政権までのBNPパリバ証券の中空麻奈氏、東大教授の柳川範之氏、サントリーホールディングス前会長の新浪剛史氏は退任した。
12日の会議では経済対策に加え、財政健全化目標も議題となった。首相は7日の衆院予算委員会で国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の黒字化について「単年度のPBという考え方は取り下げる」と明言し、複数年度で健全化を判断する新たな手法を検討する考えを明らかにした。
首相が訴える危機管理投資や成長投資は成果を中長期で見る必要がある。歳出拡大によって目先は収支が悪化しても、将来の税収増となって財政が改善する可能性はある。首相は国・地方のPBを単年度で評価するのは主要7カ国(G7)でも特異な考え方だと主張している。
若田部氏は12日に「PB黒字化目標はデフレ時代の歴史的産物で使命を終えた」と説明した。名目成長率が長期金利の伸びを上回る足元の経済状況を考慮して「一定の財政赤字は許容可能」との考えを示した。
政府内で成長戦略のとりまとめ役を担う城内実経済財政相は「財政の信認が揺るがない限り、あらゆる手段を使ってもいい」と、これまでに国債増発の可能性を示唆している。
経済の底割れを防ぐために積極財政が求められる一方で、日本の財政の持続可能性に疑問符が付けば、市場において国債の金利上昇を招く恐れがある。国債の格下げリスクもくすぶる。
筒井氏は成長投資をする中で「財政の持続可能性の確保、市場の信認を維持し続けることが最も重要」と強調した。「債務残高対GDP比を安定的に引き下げ、中長期的な財政健全化を目指すべきだ」と求めた。
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