金融庁長官、金利上昇で地銀の「優勝劣敗」鮮明に-再編など改革促す
- 財務・人的基盤の強化促す-「今からやらないと全く間に合わない」
- 国債の含み損拡大の懸念-「健全性の観点で気にしている」
金融庁の伊藤豊長官は、金利上昇を受けて地方銀行間の競争が激化し、「優勝劣敗」が鮮明になるとの見通しを示した。再編や提携を通じた財務基盤の強化や人的投資といった改革を促した。
7月1日に就任した伊藤氏がブルームバーグのインタビューに応じ、地銀を取り巻く環境は大きく変化したと指摘した。「金利がある世界では法人、個人ともに行動が変わる。競争が激しくなる」と語った。
メガバンクも含め銀行間で預金獲得などの競争は既に激しくなっている。人口減少や高齢化が進む地方を主戦場とする地銀にとっては、これまでの延長線上の経営では展望が描きにくい。再編も含めた対応策を迫られている。
「今やらないと間に合わない」
伊藤氏は、地域金融機関としての機能を発揮し続けるため「財務基盤や人的基盤が必要だ」と強調した。「10年先の話ではない。今からやらないと全く間に合わない」と経営陣に早期の改革を促した。
選択肢として「再編や他業態との提携も含まれる」と指摘した。他行と共同でマネーロンダリングやサイバーセキュリティーの対策を講じることも考えられるとした。「規模が小さくてもやり方によっては対応できる」と述べ、再編ありきではないと説明した。
地銀界では今年に入り、再編や提携が活発だ。 第四北越フィナンシャルグループと群馬銀行は4月、持ち株会社方式で統合する基本合意を結んだ。 静岡銀行と長野県を地盤とする八十二銀行、山梨中央銀行は3月、包括業務提携を結んだ。
政府は地銀を地域活性化の要と位置付ける。公的資金注入制度の延長や、再編を促す資金交付制度の拡充などを盛った「地域金融力強化プラン」を年内に策定する予定だ。伊藤氏は「スムーズにいろいろな経営判断をできるよう、われわれとしてできることを全部やる」と話した。
金利上昇、健全性の観点で留意
日本銀行が2024年3月にマイナス金利政策を解除し、その後の利上げは地銀の収益の確保にとっては追い風となった。金融庁の統計によると、25年3月期決算の全地銀の銀行単体ベースの純利益は合計で前の期と比べて4割増えた。
ただし金利の上昇は、地銀が保有する日本国債の含み損拡大につながりかねない。伊藤氏は「健全性という観点で気にしている」と述べた。
現在の政権基盤は不安定で、財政拡大の懸念が広がる。国債の格付けが下がる可能性を問われ、伊藤氏は「政府全体として格付けが高くなるようにする必要がある」とした。
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