「早く帰ってきて」アキレス腱の手術翌日になぜ42歳の夫は死亡したのか 医療事故の患者側が抱える「情報開示の壁」【スポットライト】

FNNプライムオンライン

病院で起きた重大な医療事故をめぐって、患者側への情報開示の問題が長年の課題となっている。患者やその家族はなぜ「説明されていない」と感じるのか。医療事故を経験した患者家族の訴えと、医療情報を積極的に患者と共有する先進的な取り組みなどから、医療の安全と信頼のあり方を見つめた。

【画像で見る】手術翌日に死亡、肺炎で入院し意識不明…患者側が直面する情報開示の問題とは

◆アキレス腱手術後に死亡群馬県前橋市の赤坂裕さん(42)は、車の部品の金型を設計する技術者として働き、子供3人と妻の5人で暮らしていた。子煩悩で、ひょうきんな父親だった。しかし、去年7月、趣味のバレーボールをしている際にアキレス腱を断裂。手術を受けたが、翌日に死亡した。なぜ、ケガの治療で命を落とすことになったのか。裕さんの妻に話を聞いた。赤坂さんの妻:病院から電話かかってきて「すぐ来てください」みたいな感じだったので。ベッドに横たわる主人がいて、夫はただその心肺蘇生で体が揺れているだけっていう姿を見て…。裕さんは体重が117キロあり、血栓ができるリスクが高いため、最初の手術の前には血液検査をしていた。その後、再び手術することになったが、その際、血液検査は行われなかった。翌日、裕さんは、「血栓」が肺の動脈に詰まり、死亡した。医師(遺族が記録した音声を元に再現):毎回(検査を)やるかどうかはケースバイケースになったとは思いますけれども、そこで採血がとれなかったのが…ちょっとすみません。自分の中で、えっと、あの…まあ、足りなかったところじゃないかと思います。死亡直後の説明では「足りなかった」という言葉を使った医師。病院側の別の男性(遺族が記録した音声を元に再現):できるだけ、我々も皆さんにわかりやすい言葉で、いろんな内容を隠さずお伝えできるようにしたいと思います。ところが、死亡から2〜3カ月たった頃から、病院側の対応の変化を感じたという。赤坂さんの妻:「逐一報告します」みたいなことを言っていたんですけど、全然報告がない。病院側からは「事故調査委員会の結果が出ない限り、何も答えられない」と伝えられたという。病院の対応に不信感を募らせた遺族は、民事訴訟に踏み切った。6月にまとまった調査報告書は、「追加の検査は必須ではなかったが、要否を検討する余地はあった」と指摘した。しかし、裕さんの妻は、今も夫の「死」を受け止められていない。妻:ご飯の量とか、作る量とかも分からないんですよね、いまだに。本当に、早く帰ってきてほしいな、と思います。病院は取材に対し、「和解協議を行っている」と回答した。◆人工呼吸器用チューブの誤挿管群馬県館林市の22歳の大学生。去年11月、肺炎で太田記念病院に緊急入院したところ、突然、意識不明となった。1年近くたった今も意識が戻らないまま、自発呼吸もできない状態にある。父親は当時を、こう振り返る。父:(病院から)電話かかってきて、息子の「心臓が止まりました」ということで「は?なんで?なんで?」人工呼吸器用のチューブを「気管」ではなく、誤って「食道」に挿入されたという。父:「おそらくもう、低酸素脳症になっていると思います」ということを言われて…なぜミスが起きたのか、家族は詳しい説明を求め続けてきたが、病院側は「内部で確認中」などとして、明らかにしなかったという。家族は10月、当時の病院関係者を刑事告訴した。病院側は10月、初めて家族に対し説明会をしたが、「誰」が「どの時点」でミスをしたのか、肝心な情報はなかったという。父:11カ月かかって、きょう(の説明)なんで。透明性はあるとは全く言えないですね。刑事告訴を受けて、病院は「院外にて調査継続中のため、現時点での回答は控える」としている。◆医療データ開示する病院も医療事故の度に起きる、「情報開示」の問題。過去の失敗を教訓に、患者との向き合い方を根本的に変えた病院がある。2014年に発覚した群馬大学医学部附属病院の患者死亡事故。1人の外科医が行った腹腔鏡手術で8人が死亡し、社会に衝撃を与えた。現在、この病院が取り組んでいるのは患者に医療データを徹底的に開示することだ。群馬大学医学部附属病院 病院長補佐 対馬義人教授:(カルテは)まさに自分のことが書いてある。それなのに、なぜそれを知る時にわざわざ看護師さんに、技師にわざわざ聞かなきゃいけないんですか?医師に聞かなきゃいけないんですか?リアルタイムでカルテを見ればいいじゃないですか、ということになりますね。医師が見せるのは、患者用のアプリ。患者自身が自分のカルテや検査をした画像などをスマホで見ることができる。今年3月から、希望する患者全員がこのアプリを使えるようになりました。群馬大学医学部附属病院 病院長補佐 対馬義人教授:「何一つ隠してませんよ。見ていただく、だったらいつでも見ていただいても構わないですよ」ということは信頼関係を築く上で僕は大事なことだと思っています。(医療過誤を防ぐには?)真のチーム医療をやることがですね、事故を防止する最大の方法だと思います。そこに患者さんがまだ入ってきてくださる。さらに安全性が高まると思います。◆解決に向けた「逆転の発想」このような「患者参加型医療」には、さらなるメリットがあるという。千葉県鴨川市の亀田総合病院。アプリを7年前にいち早く、導入している。こちらの70代の女性患者は、アプリを開き、血液検査の結果などをみている。女性患者:診察の前に見れるので、(診察時には)質問できる状態でいます。先生との距離も縮まったと私は思っております。さらに、ピンクで示された自分の医療情報の他に、水色の夫の情報もみられるようにしていた。こうした患者や家族への情報共有は、医療ミスの防止にもつながると期待されている。亀田総合病院 小川理医師:(医療過誤を減らすにはどうしたら?)診断のリポートとか情報がすでにあるのに、そこを見逃す、という部分に関しての「過誤」というのであれば、そこは防げるかな、と思います。医療事故が起きる度に繰り返される患者や家族への「情報提供」の問題。「はじめから情報を共有する」という「逆転の発想」が解決の一つの鍵になるかもしれない。(「イット!」11月4日放送より)▼医療事故問題・情報募集フジテレビでは、医療事故をめぐる問題を継続取材しています。情報提供してくださる方は、ぜひこちらまでご連絡ください。HP:https://www.fujitv.co.jp/spotlight/ 

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