運動会の朝、先生たちは何してる? 知られざる「運動会準備の裏側」を現役教員に聞いた
All About NEWS10/10(金)21:20
子どもたちが登校してくる前、先生たちは学校でどのような準備や業務を行っているのでしょうか。現役の小学校教師に、先生方の朝のリアルな様子を伺いました。(画像出典:PIXTA)
運動会当日は、子どもが緊張して早起きしてしまったり、いつもとは少し違う持ち物があったりと、各家庭でも慌ただしい朝を過ごすことが多いのではないでしょうか。では、運営側である学校の先生たちは、当日の朝、一体何をして子どもたちを迎えているのでしょうか?現役の小学校教師である松本隼司さんに、「先生たちの運動会の日の朝」についてお聞きしました。(今回の質問)運動会の日の朝、先生たちは学校でどんな準備をしているのですか? (回答)基本的には物品準備や最終の環境整備をしています。前日や当日に雨が降っていると、早朝から出勤してグラウンド整備をしていることも。どういうことなのか、以下で詳しく解説します。■当日の天気次第で朝の慌ただしさが変わる私が働いている自治体の通常の出勤時間は8時です(実際には、子どもたちが登校してくる前に準備が必要なので、8時より少し早く学校に到着しています)。運動会の日にはそれよりも30分〜1時間ほど早く出勤しています。とはいえ、私のような中堅以上の年齢の教員があまり早く出勤し過ぎると、若手の先生方にプレッシャーを与えてしまうため、最近は以前ほど早い時間には行かなくなりました(笑)。子どもたちが来る前に何をしているかというと、前日までに用意しておいた用具の配置が主な作業です。基本的に準備は前日に済ませておくので、当日は体育館に準備した道具をグラウンドに運び出す程度です。グラウンドのライン引きも、前日までに行う作業です。そのほか、音響機器の最終確認などを行っています。運動会の前日や当日に雨が降っていなければ、特別な準備作業はほとんどありません。■朝4時からグラウンド整備をすることも……本当に大変なのは雨が降った時の運動会です。管理職や運動会担当の先生が、朝から開催可否の判断を迫られるのはもちろんですが、それ以外の先生にも重要な任務があります。それは、グラウンド整備。前日に雨が降った場合や、土砂降りとなった場合も、開催が決まれば朝からグラウンドにラインを引く必要があります。グラウンドが広いため、朝早くから準備に取りかからなくてはならず、本当に大変です。最もハードなのは、水たまりができてしまうほどの雨が降った場合の処理です。ひどいときには、朝4時ごろから職員全員でスポンジを使って水たまりを取り除いたこともあります。甲子園などでスポンジで水を吸い上げているのを見たことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、まさにそのイメージです。そこまでして当日に運動会を決行したいと思うのは、なるべく予備日にずらしたくないという思いからです。多くの場合、運動会の予備日は平日に設定されており、そうなると運動会を見に来られないという保護者の方も少なくありません。子どもたちにとっても、運動会は自分の晴れ姿を保護者の方に見ていただける貴重な機会ですから、できる限り予定通りに開催したいというのが教師としての思いです。■競技の平等性を保つための準備も当日に行う作業ではありませんが、意外と皆さんが気付いていない運動会準備についてご紹介します。運動会の競技の定番「玉入れ」ですが、実は球の数は赤白きっちり数えて、同じ数になるようにしています。当たり前といえば当たり前ですが、そこまで意識していなかった方も多いのではないでしょうか。競技の公平性を保つために、新人時代に先輩教師から「こういう点をしっかりしないといけないよ」と教えられたことがあります。また、用具を同じ地区内のほかの小中学校に借りることもあります。例えば大きな和太鼓が使いたかったとすると、「市内のB小学校にあるから借りられるかどうか聞いてみたら?」というように、同じ地区内のどこの学校にどんな備品があるかを先生同士で情報共有しています。これは、転勤が多いという先生の職業の特性を生かし、それぞれがこれまで勤務していた学校の備品情報を共有しているのです。限られた予算の中でも、子どもたちが最大限に活躍できる運動会を目指して、日々準備に励んでいます。松下隼司さん大阪府公立小学校教諭。令和4年度文部科学大臣優秀教職員表彰受賞。令和6年版教科書編集委員。第4回全日本ダンス教育指導者指導技術コンクール文部科学大臣賞、第69回(2020年度)読売教育賞 健康・体力づくり部門優秀賞などの受賞歴を持つ。新刊「先生を続けるための『演じる』仕事術」(かもがわ出版)など著書多数。voicyで『しくじり先生の「今日の失敗」』を発信中。この記事の執筆者:大塚 ようこ
子ども向け雑誌や教育専門誌の編集、ベビー用品メーカーでの広報を経てフリーランス編集・ライターに。子育てや教育のトレンド、夫婦問題、ジェンダーなどを中心に幅広いテーマで取材・執筆を行っている。