イエメン反政府組織、サウジアラビア空軍のF
米空軍は2025年の対フーシ派空爆作戦=ラフ・ライダー作戦中にF-16とF-35が防空システムによって撃墜されそうになったが、フーシ派の軍事広報機関=MMY(الإعلام الحربي اليمني)は16日「サウジアラビアのF-15を撃墜し、イエメン北部のマリブ県に墜落した」と発表した。
参考:مشاهد نوعية لإسقاط طائرة مقاتلة سعودية من نوع F15 وحطامها في محافظة مأرب – 16 سبتمبر 2026م 参考:Houthis Claim Saudi F-15 Kill Over Yemen
米国のトランプ政権は2025年3月、イエメンの反政府組織(フーシ派)に対して大規模な空爆作戦=ラフ・ライダー作戦を開始したものの上手く行っているようには見えず、トランプ大統領は2025年5月6日「もう戦いたくないとフーシ派が宣言した。これを尊重して我々は空爆を停止する。彼らは降伏したのだ」と勝利を宣言したが、New York Timesは唐突な勝利宣言の裏側について「軍事力で解決できない費用が嵩むだけの作戦にトランプ大統領は我慢できなかった」と指摘した。
出典:U.S. Navy Photo by Petty Officer 2nd Class Nicholas Russell
この記事の中でNew York Timesは「トランプ大統領はフーシ派空爆を承認した際『30日以内に結果を出したい』と考えていたが成果は得られなかった。米軍はフーシ派支配地域での制空権すら確保できず、軍事力で解決できない費用が嵩むだけの作戦だった。米軍はフーシ派の防空能力を過小評価していたため最初の30日間でMQ-9を6機失い、4月初めには7機目の損失が確認され、複数の国防当局者らはF-16とF-35がフーシ派の防空システムに撃墜されそうになったと証言した」と指摘。
TWZも「我々の取材に国防当局者は『フーシ派の地対空ミサイルを避けるためF-35は回避行動を余儀なくされた』と証言し、New York Timesの報道内容を裏付ける結果になった。初歩的な防空能力しか持っていないフーシ派でさえ『米軍機による直接攻撃の制限』に成功し、高価なスタンドオフ兵器やステルス機に頼らざるを得なかったという事実が重要な意味を持っているのは間違いない」と報じ、フーシ派の初歩的な防空能力が如何に侮れないかについて掘り下げた記事も公開している。
出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman Alexander Cook
“未だに詳細は不明だが、フーシ派に対する空爆作戦の中で複数のF-16C/D、1機のF-35(バージョンは不明)が撃墜される寸前まで追い詰められたと報じられている。フーシ派の防空能力は初歩的なものだが、それ故に米軍の戦闘機にとってユニークで厄介な挑戦となる。フーシ派の防空能力は主に移動式システムで構成されているため、事実上どこにでも出現し、綿密に練られた攻撃作戦を混乱させる可能性がある。さらに大半のシステムはパッシブ方式の赤外線センサーや空対空ミサイルを流用した即席のもので、この脅威を事前に察知することも、脅威の接近を警告する手段もほとんどない”
“F-35はプラットホーム自体のステルス設計に加え、AN/APG-81、主翼及び操縦翼面の縁部、機体下部に埋め込まれたアンテナと高度に統合された電子戦システム=AN/ASQ-239を活用し、作戦目標まで自機をセルフエスコートし、安全な距離が十分保てない敵放射源を電子的に攻撃することも可能で、F-35のパイロットは搭載された高度なセンサーと電子戦システムのおかげで生存性に関する決定を迅速に下すことが出来る。この能力は低観測性設計への依存を相殺するのに役立ち、特にF-35の後部はXバンドに対するレーダー反射断面積が大きく、この方向からのレーダー探知や交戦に電子戦システムなしでは脆弱だ”
出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman Jasmyne Bridgers-Matos
“F-35は最もステルス性能が高いミッション構成でも、空対空ミサイルや空対地兵器を使用するためウェポンベイを開く必要があり、この瞬間だけは敵に遠距離からの探知を可能にする機会を与えるが、フーシ派が過去10年間で作り上げた防空網の中心要素は、目標の検出、追尾、指示に赤外線センサーを使用していることだ。フーシ派はR-73及びR-27を地上発射用に改造したThaqib-1とThaqib-2、小型ジェットエンジンを搭載する徘徊型の対空ミサイルも保有しており、このユニークな兵器は戦闘機を危険に陥れる能力を実戦で証明している”
“つまりF-35のような第5世代機は電子的な脅威に対して効果的でも、赤外線センサーによる探知から逃れることは出来ず、これに捕捉され追尾されていることも、赤外線誘導方式のミサイルに狙われていることも気づくことはなく、F-35は機体に設置された6台の赤外線センサー=AN/AAQ-37で飛来するミサイルを検出できるものの、それでもパイロットに与えられる対処時間は短く、飛来するミサイルから回避できるかどうかは本当に一瞬の出来事だ”
出典:الإعلام الحربي اليمني
“さらに問題を複雑化させているのはフーシ派が赤外線センサーとレーダー誘導方式の地対空ミサイルを組み合わせて運用していることで、このユニークなアプローチはミサイル誘導のための電波照射時間を限定的なものに、電波照射によるシステム暴露の可能性を低減させ、狙われたパイロットが反応できる時間も短くすることが出来る。その上、赤外線センサーの有無に関わらず移動式防空システムは神出鬼没で追加の難題を突きつけ、最も効果的かつ安全なミッションルートを計画することが困難になり、特にF-35がもつ優位性を損なわせる”
この懸念は2026年2月に開始された対イラン作戦=エピック・フューリー作戦で的中し、少なくともイラン領上空でF-15E×1機が撃墜され、F-35A×1機とA-10×1機が被弾し、ホルムズ海峡上空でAH-64×1機が撃墜されており、イラン領上空に侵入するリスクが高すぎるため高価な長距離攻撃兵器に依存して弾薬備蓄が枯渇する事態に繋がっている。
مشاهد نوعية لإسقاط طائرة مقاتلة سعودية من نوع F15 وحطامها في محافظة مأرب – 16 سبتمبر 2026م pic.twitter.com/rk0suliePT
— الإعلام الحربي اليمني (@MMY1444) September 16, 2026
そしてフーシ派の軍事広報機関=MMY(الإعلام الحربي اليمني)は16日「サウジアラビアのF-15を撃墜し、イエメン北部のマリブ県に墜落した」と発表したが、サウジアラビア側はF-15撃墜を認めていない。ただし、フーシ派が公開した墜落現場の写真には「サウジアラビアの国籍マーク」と「5539」と書かれたF-15の垂直尾翼が写っており、これはキング・ハリド空軍基地でF-15SAを運用する第5航空団所属の第55飛行隊機であることを示し、TWZは「サウジはF-15SAを84機受領し、旧型のF-15Sも現地でF-15SA基準にアップグレード(F-15SR=Saudi Retrofit)された。5539は後者の機体だ」と指摘した。
今回の件についてもTWZは「フーシ派の防空システムがもたらす脅威が依然として続いていることを浮き彫りにしている。フーシ派の防空システムは簡素な外観からは想像できないほど高性能で、制圧が困難であることが証明されている。特に懸念されるのは探知、追跡、ミサイル誘導にパッシブ赤外線センサーを使用している点だ。従来の射撃管制レーダーとは異なり、赤外線センサーは航空機の電子戦システムに探知や捕捉されている早期警告を発しない」と述べている。
出典:الإعلام الحربي اليمني
フーシ派が運用する防空システムは西側諸国が運用する統合型防空システムと根本的に思想が異なっており、フーシ派の防空システムは広域防空や拠点防空ではなく「待ち伏せして戦闘機を狩る」という目的に使用し「どこから狙われるか分からないリスクによって航空作戦を抑止する」という思想で、統合型防空システムのように「空中の脅威を可能な限り迎撃して無力化する」とは真逆だが、西側諸国のパイロットを含めた戦闘機運用コストは恐ろしく高価な上、敵の支配地域に墜落して取り残されたパイロットを助け出すコストも非常に高額なため抑止力として機能してしまっているのが現状だ。
まだサウジアラビア側がF-15撃墜を認めていないため今回の件が事実かどうかは不明だが、正直なところラフ・ライダー作戦やエピック・フューリー作戦を見る限り、高価で高性能な戦闘機は勝利を決定づける要素にはなっておらず、戦闘機を失うリスクを恐れてスタンドインではなく高価な長距離攻撃兵器に依存する姿からは「大金をかけてステルスを追求する必要があるのか?」「その金を長距離攻撃兵器の射程に投資した方が使い勝手がいいのではないか?」という疑念が湧いてくる。
出典:U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Jennifer Nesbitt
ステルスを否定しているわけでは無いが、投資に見合うだけの結果を最近の戦場で残しているようには見えないし、戦闘機を失うリスクを恐れてスタンドインではなく高価な長距離攻撃兵器に依存するなら「ステルスが戦場での生存性を担保する」ではなく「ミサイルの射程が戦場での生存性を担保する」となってしまい、戦闘機はCCAの登場でますますリスクから距離をとる方向にシフトする可能性が高く、ステルスはスタンドインによる安価な兵器の運搬で作戦コストを圧縮できるという話はもう成立しなくなっているのかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:الإعلام الحربي اليمني