地球最強のサバイバル力、「クマムシ」の驚くべき3つの事実(Forbes JAPAN)

■2. 乾眠状態になれば、ほぼ不死身 クマムシは、「クリプトビオシス(乾眠)」と呼ばれる状態になることで、死を回避できる。 クリプトビオシスは、代謝が完全に停止した状態だ。乾燥したり、気温が氷点下になったり、酸欠になったりという極端な環境下では、クマムシは体内の水分を減らして体を小さく丸め、樽型の形状に変化する。この乾眠状態に入ると、活動がほぼ停止し、生命の兆候が見られなくなることが、2017年3月に『Molecular Cell』で発表された研究で明らかになっている。 一般に、乾眠状態になった生物は、周辺の環境が改善されるまで、何年どころか何十年も生き延びることができる。それが可能なのは、体内に蓄積された糖の一種であるトレハロースが細胞を保護し、タンパク質のガラス化によって細胞組織が安定するからだ。ただし、クマムシについてはトレハロースの蓄積があまり見られない。近年の研究によって、クマムシ固有のタンパク質による乾燥耐性メカニズムがかなり解明されてきている。 科学的研究では、乾眠状態になったクマムシが、絶対零度(摂氏で約マイナス273度)より少し上という極度の低温から、摂氏150度という高温まで耐えられることがわかっている。実際、30年にわたって凍っていたクマムシが生き返ったケースもある。まさに、比類なき強じんさだ。 乾燥した生息地に水が戻ってくるなどして、環境が再び快適な状態に戻ると、クマムシは、水分を補給して代謝を再開し、息を吹き返す。 ■3. 最も過酷な宇宙空間でも生存できることを証明 居住可能な空間ランキングがあるとしたら、その最下位は宇宙空間だ。大気はなく、温度は極端で、致命的な宇宙線を浴びることになる。にもかかわらず、クマムシは2007年、宇宙の真空空間を生き延びた最初の生物となった。 2008年9月に『Current Biology』で発表された研究論文によると、クマムシは、欧州宇宙機関(ESA)が行なった「Tardigrades In Space(TARDIS:宇宙のクマムシ)」と名付けられた実験プロジェクトで、10日間にわたって過酷な宇宙空間にさらされ、見事に生還した。 クマムシはこの実験中、真空空間で、宇宙線のみならず太陽放射を直に浴びた。ところが驚くことに、クマムシは生き延びたばかりか、その一部は地球に戻って来てから繁殖までしている。これは耐久力の偉業であり、損傷を受けたDNAを修復する驚異的な能力と、放射線の有害な影響を軽減する効率的な抗酸化作用を有することの証明だ。 ありとあらゆる困難を生き抜く術をマスターしたクマムシという生物は、進化の驚異を体現している。クマムシが宇宙で生き延び生還したことは、宇宙生物学ならびに地球外生命体の研究に深い影響を与えている。そして、宇宙のどこかの同じような極限的環境に生命体が存在しているのではないか、という疑問を投げかけている。

Scott Travers

Forbes JAPAN
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