〈大いなるトランプの矛盾〉関税は粗悪な武器、中国共産党以上に米国民を痛めつけることに…トランプ狂騒曲の行方は?(Wedge(ウェッジ))

 ウォールストリート・ジャーナル紙の4月10日付け社説‘Does Trump Have a China Trade Strategy?’が、トランプの対中政策には戦略が欠けており、対中問題の解決のためには同盟国の力が必要だがトランプは関税で同盟国を痛めつけている、と述べている。主要点は次の通り。  トランプが4月9日に関税の一部を停止したことを「勝利」として売り込もうとするホワイトハウスの情報操作には、思わず笑ってしまう。現実には、トランプは行き当たりばったりで動いており、特に中国への戦略が欠けている。  ベッセント財務長官は、米国の貿易政策の目標は最初から、中国を主要な違反国として孤立させることだったと述べた。略奪的な貿易慣行を考えると、中国に対し他と異なる対応を取ることには正当な理由がある。米国に対するサイバー攻撃、知的財産の窃取、中国での米国企業への不平等な扱い、新型コロナウイルスを巡る数々の嘘などだ。  しかし、トランプ、ベッセントが中国に何を望むのか、その達成のために如何なる戦略を取るのかは明確でない。米中の全面的なデカップリング(切り離し)を望んでいるのか。  145%という関税水準は、それを示唆している。しかしそれでは、短・中期的に経済的な大混乱になる。  米中は約6000億ドルに上る貿易取引を失うか、他の調達先や行き先を探すかの選択を迫られる。重要な物品に対する戦略的デカップリングの方が理に適っている。  トランプは4月9日、中国との貿易ディールを依然望んでいると述べた。その場合、関税は単に習近平を交渉のテーブルに着かせるための手段になる。問題は、関税は粗悪な武器のようなもので、米国人も中国の輸出業者が受けるのと同程度の打撃を受けることだ。  また、トランプの他の対中措置との間に矛盾がある。トランプは、ロシアからの石油購入で結果的にロシアの戦争遂行を支援している中国企業に対する制裁も拒んでいる。こうした決定によりトランプは、中国の不当行為に本気で対処するつもりはないとのメッセージを習近平に送っている。  トランプが本気なら、最善の策は中国の重商主義との戦いという大義の下に同盟国を集結させることだが、トランプはそれにも関心を示していない。同氏は大統領1期目に、中国が参加していなかった環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱し、貿易面で中国を孤立させるための絶好のチャンスを無駄にした。中国はその後、米国から冷遇されていた国々の多くと協定を結んだ。  第2期政権のトランプは、一致団結した対中戦略のために必要な同盟国をあからさまに痛めつけている。カナダ、メキシコ、日本、韓国、欧州連合(EU)、ベトナムなどだ。  これら関税の適用は90日間停止されたが、対象とされた国々は、トランプがいつでも再び関税を課してくる可能性があることを知っている。トランプは、日本製鉄が何十億ドルもの投資を約束していたにもかかわらず、同社によるUSスチール買収を認めないことで日本を侮辱している。

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