愛子さま人気への恐れと“麻生太郎の野望”…皇室典範改正のドタバタ劇で“読売”が最後に激怒した法改正の核心(文春オンライン)
最初は「ちょっと下世話な憶測かな」と自分でも思っていたことが、スポーツ紙で取り上げられ、さらに一般紙も書き始める。そんな変化を見ると、「あ、実際にそういう見方もされているんだな」と確認できることがある。 今回の皇室典範改正をめぐる報道がまさにそうだった。タイトルをつけるなら「麻生太郎の野望」だろうか。 まず目を引いたのは、日刊スポーツの匿名コラム「政界地獄耳」(7月10日付)だ。内容は「麻生と自民党の腹の内は 現代の藤原不比等との声も」。 藤原不比等は、娘を天皇の妃とし、その子を天皇にした人物だ。麻生氏は寬仁親王妃・信子さまの実兄で、今回の養子制度では信子さまも養親候補となり得る。そこから自民党内では「現代の藤原不比等」という声もあるという。「皇統のっとり」「麻生家私物化」という刺激的な言葉も並ぶ。 皇室典範改正のニュースを追いながら、「麻生氏の思惑もあるのではないか」と半信半疑で考えたことはあった。ところが同じ見方が、自民党内にもあるというのである。 すると同日、一般紙にも注目すべき記事が出た。朝日新聞デジタルは「男系男子の養子、受け入れ想定は4宮家 自民・麻生太郎氏の妹も対象」という記事を掲載した(7月10日)。
記事では、 「養親となりうる当事者の皇族の身内が養子案の議論を主導していることに、宮内庁内や識者らから懸念の声も聞かれる」 と書く。「麻生の野望」とは一言も書かない。しかし、「麻生太郎氏の妹も対象」という見出しを掲げ、この一節を置く。一般紙らしい巧みな書き方だ。このあたりから報道の空気が変わり始めたと感じた。
では、長年永田町を取材してきたジャーナリスト・後藤謙次氏は、この一連の動きをどう見ているのか。 後藤氏は今回の国会運営を、 「麻生・鈴木体制のクーデターの要素があるのではないか」 と表現した。クーデターとは政権を倒すという意味ではない。麻生太郎氏と、その義弟である鈴木俊一幹事長を軸にした国会運営によって、維新の選択肢が封じられたという意味だ。 麻生氏に近いとされる森英介衆院議長が「皇室典範改正を最優先」と打ち出したことで、維新は反対できず、副首都法案や衆院議員定数削減法案は後回しになった。後藤氏は、その政治手法を「クーデター」と呼んだのである。 もっとも、後藤氏は維新の力が弱まったとは見ていない。むしろ逆だ。自公政権では公明党が「ブレーキ役」だった。しかし維新は自ら「アクセル役」を担う。その結果、自民党の中からブレーキを踏まなければならない構図が生まれたという。後藤氏は、今回の国会でその政権構造が鮮明になったと分析する。 では、なぜそこまで皇室典範改正を急いだのか。 「野党幹部は、自民党右派が最も恐れているのは『愛子さま人気』だと見ています」(後藤氏) もし愛子さまがご結婚され、お子さまが誕生すれば、「そのお子さまに皇位を継承してほしい」という世論が一気に高まる可能性がある。だから、その前に男系男子による継承を制度として固めたい。そんな見方も語られているというのだ。
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そうした話を聞いたあと、新聞各紙を読み比べていると、その先が見えてきた。 この問題で最も印象に残ったのは、読売新聞の動きだった。当初から読売は、「立法府の総意」を超える内容が法案に盛り込まれたことや、わずか3時間余りの審議で衆院を通過したことを問題視していた。 社説では、「数を頼んで一気呵成に成立を図るといった乱暴な行為は許されない」と厳しく批判した(7月9日)。 そして法案成立後はさらに踏み込み、「旧宮家から養子を取る制度は白紙に戻して再検討すべきだ」とまで主張した(7月18日)。 しかし、もっと興味深かったのは、その後である。
読売は社説だけでなく、検証記事でも今回の法改正を掘り下げ始めた。養子制度こそが法改正の核心であり、女性皇族の身分保持も、養子制度への野党の理解を広げるための材料だったという見方を紹介した。 一方、朝日も、読売も、麻生氏が法改正で果たした役割を書き始めた。 そして読売は、政治過程だけでは終わらなかった。今度は政治家ではなく、皇室側の受け止めを書き始めたのだ。天皇陛下は2021年、養子案について説明を受けた際、「国民の理解が得られるのでしょうか」と懸念を示されたという。 複数の宮内庁関係者によると、陛下は養子案に違和感を覚えられていたという。さらに元宮内庁幹部は、「天皇家は旧宮家出身者を皇族として戻すことは想定していなかった」と証言している。 最初は、スポーツ紙からの「麻生の野望」という下世話なお題だった。最後には、皇室は今回の法改正をどう受け止めているのかという問いにまでたどり着いた。保守系の読売が、一番怒っていた。いや、保守系だからこそ、怒ったのか。 新聞は、事実だけでなく、ときどき紙面から感情まで伝わってくる。それが面白い。
プチ鹿島