[社説]質を欠く財政と成長から脱却せよ

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財政拡張と超低金利政策の果てに実質成長も物価の安定も実現しない――。2026年はこうした悪循環から脱却する年にしたい。重要なのは政策の「質」を見極めて追求する姿勢だ。実質、良質、本質といった視点で考えたい。

日本の消費者物価指数は22年4月以降、政府・日銀が物価安定の目標とする前年比2%上昇を一貫して上回っている。インフレは4月に足かけ5年目に突入する。

26年の日本経済で最大の課題はインフレへの対処となろう。

1947〜49年に生まれた「団塊の世代」は2025年までに全員が75歳以上の後期高齢者となり、ほぼ引退した。60年ぶりの丙午(ひのえうま)となる今年は出生率の低下に再び焦点が当たるだろう。外国から来る働き手との共生も円滑には進んでいない。

生成AI(人工知能)は労働力不足を解決するだろうか。米連邦準備理事会(FRB)のバー理事は新卒者など労働市場に入ったばかりの若年の事務職を侵食する可能性を指摘する。これは好ましい変化とはいえないし、目先、AIが労働力不足を劇的に解消する展望は描きにくい。技術進歩に期待して賃金上昇圧力が自然に弱まると考えるのは現実的ではない。

ロシアのウクライナ侵略など地政学的な要因から食料や原材料の供給が制約され、そのサプライチェーン(供給網)が途絶するリスクも根強い。円安の進行は輸入物価の上昇に拍車を掛ける。

こうした環境下で、政府が財政拡張を優先する政策運営を続け、日銀による金融正常化の決断を先送りさせればインフレの高進を避けられない。

インフレの世界で重要なのは経済を名目ではなく実質で見る視点だ。すでに「実質賃金」の低迷は政治的な課題となっている。「物価上昇を上回る賃上げ」を引き続き政労使で追求すべきだ。

賃金の決定は企業の経営判断である。インフレ下では企業も内部留保や現預金を使わなければ実質的な価値が目減りして収益機会を逸失すると認識すべきだろう。

政府の手段には賃上げ税制のような政策的な誘導や大企業と中小企業の取引が適正かどうかの監視などがある。コーポレートガバナンス(企業統治)改革をさらに進めることも、企業から家計への資金の還元に寄与するはずだ。

政府の成長戦略の質も問いたい。インフレ下での成長戦略は、需要の追加ではなく、供給制約を解く改革でなければならない。必要なのは短期的に需要面から国内総生産(GDP)を押し上げる財政・金融政策ではないし、各省庁が所管する業界に補助金や税制優遇を与える産業政策でもない。

良質な成長戦略とは資本、労働、技術進歩という3つの要素から供給側に働きかけて持続的な経済成長を促す政策である。

高市早苗首相を議長とする日本成長戦略会議は「危機管理投資」「成長投資」についてAI・半導体、造船、量子など17の戦略分野を示している。

とりわけ民生用と軍事用の境界が曖昧な軍民両用技術は、特定国への過度な依存が経済安全保障上のもろさとなりつつある。安定した成長の前提条件として、供給網の自立性と多角化を確保する必要性は高まっている。

よく目を凝らしたいのは単なる補助金行政や業界保護に陥っていないか、業界と自民党の間に献金などが介在して政府の政策決定が資源の配分をゆがめていないかだ。戦略分野こそ規制緩和や競争政策、労働市場改革といった供給面からの構造改革を通じて民間の活力を刺激しなければならない。

政府が成長産業を見極めるのでは後れを取る。政府は民業の補完に徹し、企業家のアニマルスピリッツや市場の力による資源配分に信を置くことが活路を開く。

経済という言葉が「経世済民」の略であることはよく知られている。「国を治め、民を救う」というほどの意味だが「国民の安全と財産を守る」という首相の政治信条にも相通ずるはずだ。

インフレや地政学的な緊張、地震や火山の噴火など自然災害のリスクに直面する「海図なき時代」に財政余力を確保するのは政府の責務だ。主要国最悪の財政は健全化が急務だ。経済の本質は成長の持続と財政規律の両立にある。

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