夏の紫外線対策ではビタミンDの欠乏に注意、骨折リスクも 生活科学研究科の桒原晶子教授 明解!大阪公立大ゼミ(14)

夏の紫外線対策において、ビタミンDの欠乏に注意すべきだと訴える大学院生活科学研究科の桒原晶子教授=大阪公立大羽曳野キャンパス(山田耕一撮影)

夏の暑い時期、日焼け止めや日傘などで紫外線対策を行う人も多いはず。ただ対策を徹底しすぎると、カルシウムの吸収に必要なビタミンDの欠乏につながり骨折リスクなどが高まることをご存じだろうか。ビタミンDは魚やキノコ類に多く含まれるが、食生活の変化などにより日本人に不足しがちな栄養素ともいわれる。紫外線対策と両立したいビタミンDの欠乏対策について、大阪公立大大学院生活科学研究科の桒原晶子教授に聞いた。

--ビタミンDとは

「カルシウムの吸収を高めて骨の形成などを促す脂溶性ビタミンです。食品で摂取するだけでなく、紫外線を浴びた皮膚でもつくられます」

--季節にも左右されるのでしょうか

「ビタミンDの血中濃度は、紫外線を浴びる量によって変化することが分かっています。食事で同じ量のビタミンDを摂取しても、紫外線量が多い夏の方が血中濃度は高いです。北海道などの高緯度地域は南に比べて紫外線量が少なく、特に冬の時期は、皮膚でつくるのは難しいといわれています」

--ビタミンDは体内でどんな役割を果たしてくれますか

「カルシウムの吸収を高めてくれます。骨はリン酸カルシウムやタンパク質などからつくられます。骨を建物に例えるとタンパク質は鉄筋の骨組みで、リン酸カルシウムはその上で固めるコンクリート。ビタミンDが欠乏するとカルシウムが減り、コンクリートの部分が弱くなるので、丈夫な骨ができなくなります」

--欠乏するとどのような症状が出ますか

「代表的な症状として、『くる病(骨軟化症)』があります。骨が軟らかくなって足が変形するなどの症状が出ます。日本ではビタミンDが欠乏、不足している人が9割を超えています」

--それほど割合が高いのですね

「若い女性の間では、日焼けを気にして日差しを避ける人が多く、欠乏が顕著です。過去の調査では、欠乏が原因で10年後、15年後の骨折のリスクが高まることが分かっています。またビタミンDは筋肉量にも関係しており、高齢者では欠乏による筋力の低下で転倒するリスクも高まります」

--欠乏しているかどうかを自分で確認する方法はありますか

「大塚製薬と協力して、ビタミンDの欠乏リスクが確認できるチェック表をつくりました。7項目の質問に回答するだけで簡単に分かるので、ぜひ大塚製薬のホームページにある『ビタミンD レベルチェック』を調べてみてください」

--妊娠中の女性も欠乏に注意が必要だとの話を聞いたことがあります

「妊娠中にビタミンDが不足すると、合併症のリスクが高まります。その他にも、産後うつや低体重児出産のリスクが高まるという研究結果もあるので、妊娠中はビタミンDの摂取を意識することが重要です」

--ビタミンDを多く含む食材は何ですか

「特に魚に多く含まれます。例えば、クロカジキやサケ、ウナギ、イワシなどです。卵、キノコ類のマイタケなどにも含まれます。ビタミンDの血中濃度を上げるには、こうした食材を習慣的に摂取することが効果的です」

--普段、魚を食べる機会が少ないのですが…

「そんな方には強化食品がおすすめです。大手食品会社は、ビタミンDを効率よく摂取できるヨーグルトや牛乳などを販売しています。スーパーなどで売られているので、ぜひチェックしてみてください」

(聞き手 喜田あゆみ)

くわばら・あきこ 昭和57年9月生まれ。京都府出身。大阪公立大大学院生活科学研究科教授。大学院時代から健康や疾患に対する脂溶性ビタミンの関わりについて研究を行っている。ビタミンDの不足・欠乏者が多いことを研究で目の当たりにし、サプリメントで補う生活をしている。特技は早起き。

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