金スポット価格が1オンス=3000ドル上回る、史上初めて
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- 中銀の買い、経済の脆弱性、トランプ氏の貿易政策が価格押し上げ
- 一部アナリストは1オンス=3500ドルが次の目標になると予想
金スポット価格が14日、史上初めて1オンス=3000ドル(約44万6000円)を上回った。中央銀行の買い、世界的な経済の脆弱(ぜいじゃく)性、トランプ米大統領の関税政策などが金価格を押し上げる要因となっている。
金価格は一時0.4%高の3001.20ドルとなった。
心理的な節目である3000ドルを突破したことで、激動の時代における価値の貯蔵手段、市場における恐怖心の指標としての金の役割があらためて浮き彫りになった。
価格は過去25年で10倍となり、同期間に4倍になった米国株の指標、S&P500種株価指数を上回るパフォーマンスを達成した。
金価格は通常、幅広い経済的・政治的ストレスに伴って上昇する。金融危機の後、1オンス1000ドルを突破し、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の最中に2000ドルを超えた。
パンデミック後は1600ドル付近まで下落したが、2023年には再び上昇し始めた。準備資産を多様化するために金塊を購入する中央銀行が原動力となった。中銀はドルで保有すると米国による懲罰的措置の対象になり得ることを懸念した。
Source: Metals Focus, Refinitiv GFMS, World Gold Council
25年の金相場を大きく動かしているのは米国の新政権による攻撃的で予測不可能な通商政策だ。トランプ大統領はカナダ、メキシコ、欧州連合(EU)に追加関税を課し、中国製品や鉄鋼・アルミニウムの輸入品に課税した。
フィデリティのマルチアセットポートフォリオマネジャー、イアン・サムソン氏(シンガポール在勤)は「米国の政策から生じる大きな不確実性は、今年の世界経済に影を落としている」と述べた。
金価格上昇の基盤は、地政学的不確実性と、ドルへの過度な依存に対する世界の中銀の警戒感によって形成された。
22年のロシアによるウクライナ侵攻後、海外に保有されていたロシアのドル資産の多くが凍結され、世界の中銀は米国の意向によりドルが武器として使用される可能性があることに気づいた。
米国の歴代政権が地政学上のライバルと見なしてきた中国は、22年に購入を大幅に増やした。価格高騰に伴い購入ペースは鈍化したが、他の中銀がその分を補った。ワールド・ゴールド・カウンシルによると、昨年はポーランド、インド、トルコが最大の購入国だった。
But emerging economies are buying faster
Source: IMF IFS, Respective Central Banks, World Gold Council
金価格は上昇しているとはいえ、インフレ調整後の過去最高値(1980年に記録した1オンス=約3800ドル)にはまだ遠く及ばない。当時は成長低迷、インフレ高進、地政学的な緊張の高まりが相まって価格高騰を招いた。一部のアナリストは、同様の要因により2025年には金が未開の領域に進むと予想している。
3000ドルへの上昇は、ほとんどの主流の予測者が予想していたよりも速いペースで起こった。過去1年に価格が2000ドル、2500ドルという重要な心理的節目を次々と超える中で、アナリストらは予想を上方修正してきた。既に次の大きな節目を予想するアナリストもいる。
マイケル・ウィドマー氏率いるバンク・オブ・アメリカ(BofA)のアナリストは「1オンス=3500ドルに達するには投資需要の10%増が必要だろう。かなりの数字だが不可能ではない」と2月12日付のリポートに記している。
原題:Gold Breaks Through $3,000 as Trump Turbocharges Record Rally(抜粋)