「ホンダ・日産」はリストラ策の評価焦点-ホンダは今週にも方針

ホンダ日産自動車と計画している共同持ち株会社について、早ければ今週中にも一定の方向性を示す見通しだ。ホンダが計画実現の絶対条件として日産の経営再建を挙げるのに対し、日産が策定中のリストラ案は工場閉鎖を伴わないソフトな内容にとどまる方向。世界3位の自動車メーカー誕生へ両社が歩み寄れるか予断を許さない状況だ。

  主力市場の米国と中国での販売不振を受けて業績が悪化している日産は昨年11月、世界の生産能力2割、9000人の人員削減などを柱とするリストラ計画を公表した。事情に詳しい関係者らによると、リストラ計画のとりまとめは順調で海外も含めて工場閉鎖はせず、生産ラインの統廃合やシフト変更などで能力を減らす方針という。

  日産は11月の決算会見でもこうした方向性を示唆していたが、12月にあったホンダによる救済の色彩が強い共同持ち株会社計画の発表を受けても当初の方針が変わらなかったことになる。

  リストラ案の骨子に関する報道を受けて、日産の株価は一時前日比2.2%安の413.3円を付けた。ホンダ株も同1.1%安となった。

  ブルームバーグとのインタビューに応じた日産のポンツ・パンディクティラ北米事業担当チーフ・プランニング・オフィサー(CPO)は日産にとって最大の市場である北米に関して日産はここ数年で販売台数の減少を反映して生産能力をすでに削減しているとし、北米で「生産能力を縮小しなければならないリスクはほとんどない」と述べた。

  ホンダの三部敏宏社長は昨年12月の会見で、今回の取引は日産への救済ではないと明言した上で日産の再建策の実行が計画実現の「絶対的な条件」だとし、両社が「自立した2社として成り立たなければこの経営統合の検討は成就することはない」と話していた。

ホンダの三部社長(右)と日産の内田社長(2024年12月23日、都内)

  ホンダは今後の方向性について今月末をめどに一定の方針を打ち出すとしており、6月には株式移転計画を含む最終契約書の締結を予定している。

  残された時間は長くない中、英調査会社ペラム・スミザーズ・アソシエイツの自動車アナリスト、ジュリー・ブート氏は日産が「リストラや固定費の削減などを行っていることを示すのは重要だが、4-5カ月でできることではない」と持ち株会社への出資比率などの面で不利になる可能性は否めないとした。

  一方、ホンダと同様、1月末をめどに計画に参画するかのどうかの結論を出すとしていた三菱自動車は共同持ち株会社への合流を見送る方向で調整に入ったと読売新聞が24日、複数の関係者を引用して報じた。両社との協業の強化は図るものの、上場は維持して強みとする東南アジアでのシェア拡大へ現在の体制を当面維持するという。

  日産のパンディクティラ氏はホンダは賢明な企業で、日産が資金危機に陥る可能性があるともし本気で考えているのであれば、堅実なバランスシートを傷つけるリスクは冒さないだろう、と主張。「私は非常に楽観的な未来を見ている」と述べた。

  ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生アナリストはホンダが注目しているのはリストラ策の具体的な内容ではなく、再建をやりとげる日産の経営陣の意志だろうと指摘。リストラ案が不十分とホンダが考えているとすれば月内にも示されるホンダの方針には、統合の不成立を予見させる内容が含まれる可能性もあるとし、そうなれば「非常にマーケットインパクトも大きい」と述べた。

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