トランプ氏のウクライナ政策転換、防衛関連株に好機-アジア勢に注目
欧州は自衛する必要があると米国は明確に表明した。一部の投資家にとって、これは防衛関連株を大量に仕込めという号令に映った。
防衛費急増が予想される中、安全保障関連銘柄は今年に入り急騰。MSCI世界指数のパフォーマンスでトップの銘柄は、ドイツのラインメタルだ。この流れはアジアにも波及し、韓国のハンファエアロスペースとその子会社ハンファオーシャンの株価上昇はいずれも2倍以上で、アジアで群を抜く。
従来の安全保障同盟にトランプ米大統領が変化をもたらしたことで、防衛費支出に対し新たなコミットメントが行われる方向にあり、防衛企業の中で武器を迅速かつ安価に提供できるアジア勢が注目されている。
防衛関連株の人気はロシアのウクライナ侵攻でまず高まったが、トランプ氏がウクライナへの軍事支援停止を決めたことで、こうした流れに拍車がかかるだろう。
関連記事:トランプ氏、ウクライナへの軍事支援停止-ゼレンスキー氏に圧力 (2)
投資会社に助言を行うインパクトフル・パートナーズのマネジングディレクター、キース・ボルトルッツィ氏は、「トランプ氏が言っているのは、ロシアが欧州を攻撃しても、米国は守らない。自分でなんとかしろ、ということだ」と指摘。それで「欧州は域内の防衛産業を強化せざるを得ない」だろうとの見方を示した。
欧州連合(EU)は防衛支出拡大に向け1500億ユーロ(約23兆9000億円)の融資を提案すると、欧州委員会のフォンデアライエン委員長が4日発表した。ドイツのメルツ次期首相は、喫緊の防衛分野投資に取り組む政策見直しの一部として、5000億ユーロ規模のインフラ基金を設立する。
関連記事:ドイツが借り入れ制限緩和へ、主要政党はインフラ基金立ち上げで合意
こうした状況を追い風に、ラインメタルの株価は年初来で90%余り上昇。5日は1192.50ユーロで史上最高値を更新した。ロシアがウクライナを全面侵攻する前の同社株価は、100ユーロにも満たなかった。
韓国の主要防衛企業であるハンファエアロスペースも株価が昨年1年で2倍強となり、今年も高値更新を続けている。同社傘下の造船子会社、ハンファオーシャンは12月終盤以降の株価上昇率が115%に達した。両社は株価上昇で時価総額が合計210億ドル(約3兆1400億円)増加した。
日本でも重機メーカーのIHIが買われ、株価は1990年以来の高値を付けた。
ただ、目覚ましい上昇で株価には割高感が表れている。ハンファオーシャンの将来の利益予想を基にした株価収益率(PER)は49倍。ハンファエアロは20倍、ラインメタルは37倍だ。
それでも安全保障支出の増額が見込まれることから、楽観できる理由は多いと投資家は指摘する。
フィボナッチ・アセット・マネジメント・グローバルのユン・ジュンイン最高経営責任者(CEO)は「米国がもはや手放しでは守ってくれないとの認識から他の欧州諸国も国防費を増額するだろう」とした上で、「台湾を巡る米中間の対立や周辺海域での軍事衝突の可能性も排除できない。いずれも、今後数年にわたって韓国防衛企業の収入を大きく押し上げる要因になるだろう」と述べた。
原題:Trump’s Ukraine Pivot Fuels 100% Gains in World’s Defense Stocks(抜粋)