グリア米通商代表、APEC会合で引っ張りだこに-会談望む各国代表

韓国の済州で15、16両日にアジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易担当相会合が開かれ、米国からはグリア通商代表部(USTR)代表が出席する。トランプ政権との関税交渉進展を目指し会談を望む加盟国・地域の間で、同代表は引っ張りだことなりそうだ。

  ベッセント米財務長官とグリア氏はスイス・ジュネーブで先週末に行った中国側との貿易協議で、相互の関税率を一定期間引き下げる合意を取りまとめたばかりだ。なお、武藤容治経済産業相は今回の会合を欠席する。これは日本政府が一段と有利な合意を得るために時間をかける方針であることを示唆している可能性がある。

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  世界の貿易環境はトランプ大統領の関税政策に揺さぶられており、各国・地域の代表はどう対応すべきか意見交換することになりそうだ。また、代表の多くはグリア氏との個別会談を要請すると見込まれる。

  USTRで交渉官を務め、現在は調査会社ユーラシア・グループの日本・アジア貿易部長、デービッド・ボーリング氏は「多くの貿易担当相にとって、グリア氏との一対一の会談実現が主な目標になるだろう」と語った。

  「各代表は自分たちの国や地域の経済に影響を及ぼしている関税について協議するため、短時間であってもグリア氏との会談を望んでおり、出席者する貿易担当相のうちで彼は最も多忙となるだろう」との見方を示した。 

スイス・ジュネーブで行われた米中協議の様子(5月10日)

  このほか、中国商務省の李成鋼次官も14日に済州に到着した。グリア、李両氏はジュネーブでの米中協議に続き、再度会談する可能性も考えられる。 

  各国・地域の代表は米中による90日間の関税率大幅引き下げ合意についてさらなる情報を得たい考えであるほか、中国が強硬姿勢を貫いて好結果を得たことで、この合意が自分たちの対米交渉にどのような影響を与えそうかについても、手掛かりを探ることになりそうだ。

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  こうした中で、ブルームバーグ・ニュースは、米国と韓国が今月5日に為替政策を協議し、協議を継続することで合意したと、事情に詳しい関係者を引用して報じた。その後、米当局者は世界各国と貿易交渉を行っているが、通貨政策に関する約束を合意内容に盛り込もうとはしていないと、事情に詳しい関係者が明らかにした。

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  一方、中国はトランプ政権の関税政策の圧力にさらされている国や地域の間で自国への支持を広げようと努めているが、グリア氏の会合出席がこうした取り組みへの抑止として機能する可能性もある。

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  個別の国・地域間でのディール(取引)に重点が置かれる現状にあって、APECの最終的な目標は当面脇に追いやられることになりそうだ。ユーラシア・グループのボーリング氏は「貿易担当相の一部は、多国間貿易体制への支持を強化しようとするかもしれないが、そうした試みは流れに逆らうものとなるだろう」と話した。

原題:Trade Chiefs Jostle for Time With Greer at APEC Meeting in Korea(抜粋)

(米韓高官の為替政策協議に関するブルームバーグ報道などを追加して更新します)

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