デビュー当時「ハモっただけで手品扱いされた」ゴスペラーズ、風に乗って30年「音楽の神様のご褒美がある」
美しいハーモニーを聴かせる5人組のゴスペラーズが21日、メジャーデビュー30周年を迎える。1990年代以降のポピュラー音楽界にボーカルグループとしての地位を確立。5曲収録の新譜「Pearl」(ソニー)を出すなど精力的に活動を展開する中、節目の思いを聞いた。(文化部 北川洋平)
5人で取材に応じ、それぞれの発言にうなずいたり、言葉を補い合ったり、チームワークの良さがにじんだ(左から村上、安岡、黒沢、北山、酒井)=関口寛人撮影「愛情を持って接してくれる方々とたくさん巡り合えた。その数が少なかったら限界が来ていたはず。ラッキーだと言えるけど、運だけでも、努力だけでも駄目なんで、それらをひっくるめて迎えられた節目です」。ソウルフルなファルセットを聴かせるリーダーの村上てつやはこう語った。
94年にメジャーデビュー。全員がリード歌唱をこなし、作詞作曲も手がける実力者だが、デビュー時はボーカルグループが少なく苦難も味わった。
クリアボイスとともにヒューマンビートボックスも魅力の酒井雄二は「当時はマイノリティーで、ハモっただけで手品扱いされた。でも続けるうちに認知され、アカペラ曲の楽譜が出版されたり、後輩グループが誕生したりし、夢見ていたことが次々と実現した」と振り返る。
新譜「Pearl」転機は2000年「 永遠(とわ) に」と01年「ひとり」の大ヒットだろう。「日本中にR&Bの風が吹く中(『永遠に』の一節である)〈あなたの風になって〉という追い風を起こすことができた」(村上)というように、それは旋風となった。
ハイトーンで魅了する黒沢薫は、躍進の 秘訣(ひけつ) について「30年たつんでもう言っていいと思うけど、5人の相性がいい。ハーモニーを生み出すには練習が絶対に必要で一緒に過ごす時間は長い。でも、全員がずっと音楽を面白がり、貪欲さを保ち続けてるっていうのはすごいよね」と笑顔を見せる。
節目の新譜は、結婚30年を真珠婚と呼ぶことにちなみ「Pearl」と題した。未来への希望を歌うバラード「パール」やライブの夜への思いを描く「F.R.I.」など、持ち味のハーモニーを生かした楽曲が印象的だ。
甘いボイスが持ち味の安岡優は本作について「30年の間、僕らに向き合い、僕らの音楽を愛してくれた人たちへの思いを込めようと考えた。そのコンセプトで5人が同じスタートラインに立ったことで、一層強い思いでまとまった作品にできた」と手応えを語る。
過去のカップリング曲を集めた作品集の発表や、日本武道館と大阪城ホール公演、さらには全国ツアーも控える。ベースパートで魅了する北山陽一は「グループを続けることは簡単ではないけど、音楽の神様が少しだけこちらを向いてくれるようなご褒美体験がある。この先もその瞬間が待っていると皆で期待して歩みます」と語った。