コラム:プライベートクレジットの警鐘、07年のサブプライムの警告と共鳴
[オーランド(米フロリダ州) 10日 ロイター] - 金融危機は起こるたびに形が異なっているが、まさに類似の響きがある。現在プライベートクレジット市場で現在さざ波のように広がっている震動と、2007―09年の世界金融危機を招いた米国のサブプライム住宅ローン問題の震動の間に、類似点が姿を現し始めているのだ。
あの歴史的な大暴落が再び起こりそうだと言おうとするのではない。しかし、乏しいかまたは存在しない流動性、不透明な価格形成、そして解約請求の急増というプライベートクレジット市場で高まる緊張が株式市場や債券市場に波及し得るというリスクは高まりつつある。
運用資産約14兆ドルを誇る世界最大の資産運用会社ブラックロックは6日、解約請求が急増したため、旗艦デット・ファンドからの引き出しを制限したと発表した。オルタナティブ資産運用大手のブラックストーンはその数日前、記録的な払い戻し請求に応えるため、傘下のプライベート・クレジット・ファンド「BCRED」の解約上限を引き上げたと発表した。
こうした巨大資産運用会社2社が警鐘を鳴らしたのに先立って、先月は中堅資産運用会社ブルー・アウルで同様の事態が起き、昨年は米自動車部品メーカーのファースト・ブランズと米自動車販売のトライカラーが経営破綻した。JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)はこうした事態について「ゴキブリを一匹見つけたら、おそらくもっとたくさんいるはずだ」と警告した。
歴史を自覚している投資家、あるいは2000年代を知る人々はこうした状況全てにちょっとした既視感があるかもしれない。BNPパリバ、ベアー・スターンズ、HSBCは07年に米サブプライム関連ファンドの解約を凍結したか、あるいは経営難にあると警告した。当時は小さなリスクのように思われたが、その後に転移し世界的な金融崩壊に至ったのだ。
世界金融危機が本格的に爆発したのはもちろん、米当局が08年9月にリーマン・ブラザーズの破綻を容認した08年9月になってからだった。しかし、危機は少なくともその18カ月前から着実に蓄積されており、サブプライムファンドで生じた震動は困難な事態が起ころうとしていると投資家に知らせる初期的な警告だったのだ。
投資家に現時点で自分の資産にアクセスさせない理由は07年当時に正当化された理由とたぶん類似している。資産価値が恐らく著しく下落しており売却すれば多額の損失が出るとか、資産運用会社が解約資金をねん出するために他の資産の投げ売りを引き起こすと懸念するかもしれないとか、ファンドが流動性の低い資産を処分できずに苦労するかもしれないとか、あるいはこの3つ全てが少しずつ関わっているのかもしれない。
いずれにしても、07年当時のサブプライムローンや関連デリバティブ(金融派生商品)の場合と同じように、現在のプライベートクレジット資産は市場があまりに不透明で流動性がないために一体いくらの価値があるのか知るのは難しい。市場の価格形成機能が消滅した時に、より弱気な見方がしばしば支配的になるのだ。
07年当時のサブプライムと類似するもう一つの点は、プライベートクレジットとプライベート市場がシステム的な金融安定リスクを引き起こさないと信じられていることだ。われわれ全員が知っているように、当時は単なる希望的観測に過ぎなかったことが後になって分かった。
Stacked column chart showing private credit AUM to double by 2030chartBar chart showing US banks’ private credit loan exposure<サブプライムと共鳴するが再現でない>
今回は事情が異なるのだろうか。
市場規模の実態を見れば、おそらく異なるのだろう。インベステックによると、世界金融危機の根源となった住宅ローン担保証券(MBS)市場規模は07年当時で約7兆2000億ドル、世界中の証券価値全体の5%に相当した。現在のプライベートクレジット市場規模は約2兆ドルで世界中の証券全体に占める割合が1%に満たない。
一方で、現在のプライベートクレジットは07年当時のサブプライムのように、少なくとも伝統的な銀行融資に比べて規制が緩く、その影響が真におよぶ範囲を把握するのは容易でない。
さらには、一般の個人投資家がより関わりを深めつつある。インベステックによると、プライベート・クレジット・ファンドの保有者に占める個人投資家の割合は20年の5.5%から24年末に16.6%まで上昇した。
プライベートクレジットのデフォルト(債務不履行)率はその間に上昇しており、格付け会社フィッチ・レーティングスは先週、25年のデフォルト率が過去最高の9.2%に達したと発表した。この前の過去最高だった24年の8.1%から上昇した。
不気味なことに、このデフォルト率は主要な借り手となったソフトウエア企業を1社も含んでいない。ソフトウエア部門は今年、人工知能(AI)が破壊的な変化をもたらすとの懸念から大打撃を受けており、プライベートクレジットの巨人であるブラックストーン、KKR、アポロの株価がここ数カ月で30―45%急落している。
プライベートクレジットがもたらす広範なリスクは下振れ方向に偏っているように思われる。米経済は不安定な労働市場とともに、原油市場の激しい変動と現代版「スタグフレーション」の亡霊を含めた中東の戦争の影響に直面するという極めて微妙な局面にある。
確かに、市場の共通見解としては、経済の基礎的条件はしっかりしており、プライベートクレジットは国内総生産(GDP)の成長や広範な資産市場を撃沈させるほど巨大でも統合されてもいない。バークレイズのストラテジストたちの指摘によると、プライベートクレジットは問題を抱えているが、米国を景気後退に追い込むほど大きくないという。
こうした見方こそはもちろん、サブプライムが07年当時に受け止められていた状況とそっくりなのだ。
米著名投資家ウォーレン・バフェット氏の言葉を借りれば、潮が引いた時に誰が裸で泳いでいたかが分かるという。プライベートクレジット市場で最近起きている出来事はまもなくさらに多くのファンドが影響を受けるかもしれないことを示唆している。
(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
Jamie McGeever has been a financial journalist since 1998, reporting from Brazil, Spain, New York, London, and now back in the US again. His experience and expertise are in global markets, economics, policy, and investment. Jamie's roles across text and TV have included reporter, editor, and columnist, and he has covered key events and policymakers in several cities around the world.