甲子園ボウルは史上初の関西勢対決に 関西学院大学「泥臭く」、立命館大学「楽しむ」

篠原大輔

2025/12/03

(最終更新:

関学の大村監督(右端)は「甲子園ボウルは勝ち上がってきたご褒美のような面があったけど、ここで立命さんとやるのは関東とやるときより気持ち的にシリアス」と言った(すべて撮影・篠原大輔)

アメリカンフットボールの全日本大学選手権決勝、第80回甲子園ボウル(12月14日、兵庫・阪神甲子園球場)は史上初の同一リーグ勢対決となる関西勢対決となった。2年ぶりの出場で35度目の優勝を狙う関西学院大学ファイターズ(関西1位)と2003年以来の2連覇を狙う立命館大学パンサーズ(関西2位)の対戦。昨年から甲子園ボウルでの関西勢、関東勢同士の対決がありうるトーナメント形式になっていた。リーグ最終節での対戦では関学が24-3で快勝している。

カラーの違いがはっきりした両キャプテンの発言

リーグ戦にプレーオフや選手権なども含めた両校の秋シーズンの対戦成績は、関学の52勝17敗1分け。立命館が甲子園ボウルに初出場で優勝した1994年以降だと関学の23勝15敗1分けとなる。12月1日には両校の監督、キャプテンが参加して阪神甲子園球場で記者会見が開かれた。

最初に甲子園ボウルの意気込みについて両キャプテンが語ったとき、早くも両チームのカラーの違いがはっきりした。関学のDL前田涼太(4年、箕面自由学園)は「いつも通り一戦必勝を目標にして、目の前の試合をしっかり勝ちたいです」と言った。一方で立命館DB今田甚太郎(4年、駒場学園)は「このチームでやるのも最後ということで、そこにしっかりフォーカスして、楽しんでアメフトをしたいと思います」と語った。

面識はあったという二人。今年初めに会ったとき、立命館の今田(左)が主将になると本人から聞いた関学の前田(右)は「勝ったやん」と言った

30年来のライバルである両校だが、関学がタレントの数で立命館を上回った年は少ない。だから関学は頭を使って戦術に向き合い、考えて突き詰めて初めて到達できる境地に立って勝負してきた。大村和輝監督は「アメフトには二つの面白さがあって、一つはプレーすること。もう一つが突き詰めること」と話す。立命館は1990年代に入ってスポーツ推薦制度を先んじて導入。個の力で勝る集団がフットボールに打ち込む楽しさを知って、はつらつとプレーする。これが立命館の勝ち方だ。勝利に対して違うアプローチをしているチーム同士のせめぎ合い。だから関立戦は面白い。

立命・高橋監督「10回やって1回勝てるかどうか」

関学は準決勝で、リーグ戦では引き分けた関西大学を52-7で粉砕した。立命館の高橋健太郎監督は「関学さんの完成度の高さを目の当たりにしました。我々はリーグ戦でもタッチダウンなしで負けていますので、正直言って10回やって1回勝てるかどうか。その確率もないかもしれないぐらい力の差はある。ただ学生スポーツは何があるか分かりません。アツい2週間を過ごして、いい試合をしたいと思います」と話した。

就任2年目の立命館の高橋監督。前回の甲子園ボウル2連覇時はパンサーズの主将だった

立命館は昨年に続いて準決勝で早稲田大学と対戦。42-31で下した。関学の大村監督は「立命さんはタレントがそろっているので、攻守のラインが頑張ってゲームを作るのが大事かなと思ってます」と言った。

自チームの強みを問われ、関学の前田キャプテンは「1対1にはそこまで自信を持ってないので、オフェンスならスタート、フィニッシュ。ディフェンスならパック、パシュートにかけてやってきました。泥臭くやれるのが強みです」と語った。立命館の今田キャプテンは「ノリと勢いです」と言って笑った。

立命館の今田は最近私(篠原)に「いい記事になるようにドラマを作ります」と言った。おもろい男だ

相手で警戒する選手について関学の大村監督は「オフェンスはRBの蓑部君やと思うんですけど、彼を気にしすぎるとQBの竹田君にやられるんで、竹田君かなと思います。ディフェンスは今田君を含めたDB陣ですね。ランをしたときに後ろがどれぐらい関与してくるのか。あとはレシーバーとの1対1の勝負がどうなるか。そこが非常に大事になる」と話した。立命館の高橋監督は「QBの星野兄弟がキーになると思ってます。お兄ちゃんが後ろにいることもあって、太吾君が思いきってプレーできてます。思いきってできないようにさせられるかどうかですね。ディフェンスではDLの田中志門君が思いっきりのいいプレーをしているので要警戒ですね」と語った。

立命館の印象について「勢いがある」を連発した前田(左)のあとを受け、大村監督は「ものすごく勢いがあって」と言って笑いを取った

「Fight Greed」vs「BUCHIAGE」

甲子園の大観衆の前でどんなプレーがしたいかと問われ、関学の前田キャプテンは「自分がスローガンに決めた『Fight Greed』を体現して貪欲(どんよく)に戦い続けるだけです」と言った。立命館の今田キャプテンは「歴史上初めての試合なので、お客さんも甲子園のスタンドが埋まるぐらいに集まるんじゃないかと思ってます。僕らのスローガンは『BUCHIAGE』なので、会場全体をぶち上げられるようなプレーがしたいです」と語った。

関学の前田は中学時代、アメフトをやりながら陸上部に入っていて投擲の選手だった

昨年は関学が準決勝で法政大学に負けて甲子園ボウルの連覇が6で止まった。一方で高橋監督の1年目だった立命館は9年ぶりの甲子園ボウル制覇を果たした。そこからの一年について両監督が語った。関学の大村監督は「連続して甲子園ボウルに出させてもらってて、なんとなく選手たちが『来られるところ』と勝手に思い込んでました。行けないもの、という現実を突きつけられて、努力しないといけないという原点に向き合えたのは大きかったです」と語った。

立命館の高橋監督は「チームとして久々に甲子園に出て、自信というか一つの成功体験になったと思います。ただ今年それが過信になってしまい、チームの方向性を見失ったところがあります。リーグ戦の途中で気づけてよかったんですけど、ターニングポイントが手前(シーズン終盤近く)にありすぎて、苦しいシーズンにはなっています。ここからいい方向に変化を起こせるように持っていきたいです」と力を込めた。

「ちょっと当たった感じでお願いします」と言ったらこうなった。高橋監督(左)は元DB、大村監督(右)は元TEだ

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