すばる望遠鏡、昆虫のような複眼を装備し宇宙観測を強化!

この画像を大きなサイズで見るすばる望遠鏡 国立天文台

 「すばる望遠鏡」は日本の国立天文台がハワイ島に設置した大型光学赤外線望遠鏡で1999年に観測が開始された。当時最先端の技術を誇っていたが、今回新たにすごい装備を手に入れた。それはまるで昆虫のような”複眼”である。

 この複眼は、「超広視野多天体分光器」と呼ばれるもので、2400個もの目でさまざまな星々からやってきた光を同時にとらえ、それぞれを色に分けて観測することができる。2025年2月より正式に運用される予定だそうだ。

 これにより、すばる望遠鏡の観測性能は、まさしく世界で唯一のものとなった。

 今後、天文学者たちはこのスーパー複眼を駆使して、銀河やこの宇宙がどのように誕生し、進化してきたのかという長年の謎を解明してくれることだろう。

 すばる望遠鏡に搭載された複眼の正式名称を「超広視野多天体分光器(Prime Focus Spectrograph/PFS)」という。これはすばる望遠鏡の最新プロジェクト、すなわち「すばる2」計画における主力装置の1つとなる。

 PFSが複眼と呼ばれるのは、直径1.3度という主焦点の広い視野内に、約2400本の光ファイバーが組み込まれているためだ。これらを観測したい星々に向けることで、さまざまな天体を同時に観測することができる。

 国立天文台の田村直之教授は、ニュースリリースで次のように語る。

これは、長期的な運用を続け、前代未聞の科学的成果をあげ、マウナケアからの大ニュースを地元コミュニティと目一杯共有するという究極の目標に向けた一歩に過ぎません(田村直之教授)

 同教授によれば、この最先端の装置でなされる発見は「日本のみならずハワイの人々全員が誇れるもの」になるだろうとのことだ。

 すばる望遠鏡のチームは、今後約5年間にわたって大規模な宇宙の調査を開始する予定だ。

 観測時間はすべて合わせて360夜分になり、数百万の銀河のほか、天の川銀河やアンドロメダ銀河で瞬く数十万の星々のデータが収集される。

この画像を大きなサイズで見るすばる望遠鏡に搭載されるPFS主焦点装置 すばる望遠鏡

 日本の国立天文台が世界に誇るすばる望遠鏡は、1999年のファーストライト(初観測)当時、世界最大の一枚鏡式反射望遠鏡として宇宙を見つめてきた。

 その間、太陽系最遠の天体「ファーアウト」を発見したり、太陽系外惑星の直接撮影に成功したりするなど、たくさんの宇宙の大ニュースを世界に届けてくれた。

 そんなすばる望遠鏡は、昨年25周年を迎え、2022年より次なる一大プロジェクト「すばる2」計画も始まっている。今回のスーパー複眼もそのためのものだ。

 すばる2の主な目的の1つは、宇宙最大級の謎であるダークマターやダークエネルギーの性質を解明することだ。

 ほかにも宇宙や銀河の形成・進化についての理解を深め、太陽系の外にある地球型惑星を捜索するといった使命も帯びている。

 世界でも唯一無二の性能を誇るすばる望遠鏡が、これから宇宙の驚くべき真実を伝えてくれることは間違いない。新しいニュースがあり次第、カラパイアがお伝えすることを約束しよう。

References: すばる望遠鏡の超広視野多天体分光器、いよいよ本格始動 | 国立天文台(NAOJ)

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