とあるゲーム開発者が「ローカライズ要望のために不評レビュー投稿するのはやめて」と呼びかけ、注目集める。つらいから

とあるインディーゲーム開発者が12月28日、「ローカライズ希望の意思を伝えるために不評レビューを投稿するのはやめてほしい」とX上で投稿をおこなった。同ポストには共感や反論などさまざまな意見が寄せられ、話題を呼んでいる。

今回話題の発端となったのは、ゲーム開発者のKO.DLLことKarel Matejka氏の投稿だ。Matejka氏はゲーム会社で30年以上のキャリアをもつという業界のベテランで、2023年11月に2Dアクションゲーム『BZZZT: バズボット!』をリリース。Matejka氏がほぼすべてひとりで制作したという同作は、美しいドット絵や歯ごたえのあるゲームプレイなどが評価され、Steamユーザーレビューでは一時「圧倒的に好評」ステータスを獲得するなど好評を博していた。

そんな『BZZZT: バズボット!』はデモ版の段階で、英語やフランス語など6つの言語の表示に対応していた。そこから3つの言語表示が追加され、昨年11月の製品版リリース時点では9つの言語をカバー。さらに今年の7月には日本語とトルコ語へも対応が果たされ、本稿執筆時点で、11種類の言語への対応がなされている。デモ版から段階を追って、少しづつ対応言語が拡大されてきた経緯があるわけだ。

そうしたなかMatejka氏は12月28日、自分の作品に寄せられたユーザーレビューを引用しつつ、X上にてポスト。「開発元にローカライズの要望を伝えるために不評レビューを投稿するのはやめてほしい」と呼びかけた。理由として同氏は、不評レビューは作品の売れ行きに悪影響を与えるものであり、開発元が長期的にその作品をサポートし続けられる可能性を低くしてしまう行為だからと説明。ローカライズしてほしいと思うほどそのゲームのことを気に入ったのであれば、不評ではなく好評レビューを投稿して、開発元を応援してほしいと伝えた。

There are many ways to ask tiny indie devs to add localization to their game. These requests can be polite or rude, but leaving a negative review for missing localization is one of the worst approaches.I pay localizations from my pocket, and I hate blackmail practices!🤬🥺🤢 pic.twitter.com/FPBpukIR25

— Ko.dll (@ko_dll) December 28, 2024

Matejka氏の投稿は反響を呼び、該当のポストには本稿執筆時点で800件以上のリプライが寄せられている。ゲーム開発者など業界人からは共感の声も寄せられており、たとえばあるクリエイターは「多くの人々は、テキストファイルを機械翻訳に突っ込むだけで、ローカライズが完了すると勘違いしている」と返信。Matejka氏もこの意見に同調し、実際のローカライズには多くの調整作業が必要で、時間と費用を要するタスクであるとした。

一方同氏のポストは、まだ対応がなされていない中国語圏などの一部プレイヤーの反発も招き、『BZZZT: バズボット!』には不評レビューがここ数日で多数投稿。一時98%に達していたすべてのレビューの好評率も本稿執筆時点で84%まで下がり、最近のレビュー評価は「やや不評」に。いわゆるレビュー爆撃状態となってしまっている。

投稿に寄せられた批判には「ユーザーが購入したゲームをどう評価するかは当人の自由であり、特定の言語に対応していないというのは低評価する理由になりうる」といったものがある。これに対してMatejka氏は、レビュー内容はユーザーの自由という点について同意しつつも、「Steamのストアページではどの言語に対応しているかわかりやすく表示されているため、プレイヤーは購入前から承知しているはず」と反論。自分の言語に対応していないことを知りながら購入し、何時間もプレイしたけど、やっぱりローカライズしてほしいから不評レビューというのは、開発元にとってはつらいものがあるとして理解を求めた。

Matejka氏は、いろんな国の人が自分のゲームを気に入ってくれるのは嬉しいし、できるだけ多くの言語に対応したいと思っていると繰り返し強調。ただローカライズにはコストがかかるもので、同氏の作品『BZZZT: バズボット!』の場合だと、1言語につき1500本ほど売れなければペイできないという。費用は同氏のふところから出しているが、赤字となってしまうことも多いのだそうだ。また各言語ごとに信頼できる翻訳者とのツテも必要で、気軽に実施できるものではないため、不評レビューで“脅迫”するのではなく、好評レビューで応援してくれたら嬉しいと改めて呼びかけている。

Steamのユーザーレビューにおける好評率は、作品の売り上げやストアページでの露出に影響を与えるとされる。以前には業界人より、「冗談で低評価を入れるのはやめてほしい」といった呼びかけもおこなわれたこともあった(関連記事)。レビューの影響力はユーザーが想像するより強いともいわれ、少なからぬ開発・販売元が気にかけているようだ。

またローカライズについては各ゲームそれぞれ事情や戦略があるだろうが、一般的にいえば好調に売り上げを伸ばして人気作となった方が、多言語に対応する確率は高まるだろう。日本語未対応のゲームを楽しんで遊んだものの、やはりできれば日本語に対応してほしい。そんな作品があったら、まずはゲームを購入し気に入ったならば好評レビューを投稿して応援しつつ、開発元にローカライズ希望の意思を伝えてみるのもよいかもしれない。今回図らずも不評レビューを集めることになってしまった『BZZZT: バズボット!』が、今後どこまで対応言語を伸ばしていくのかも気になるところだ。

『BZZZT: バズボット!』はPC(Steam)/Nintendo Switch向けに配信中だ。ゲーム内は日本語表示に対応している。

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