薬物投与されるも生き延びた米死刑囚、人工呼吸器を装着して意識不明 何が起きたのか?
ナッシュビルの法廷に姿を見せたクリスタ・パイク死刑囚/Dipti Vaidya/Imagn/Reuters
(CNN) 米テネシー州で9月30日、薬物注射による刑の執行を受けながらも生き延びたクリスタ・パイク死刑囚。だが今後の容体がどうなるのか、法的にどのような扱いになるのかは、まだ見通せない。
弁護団が10月2日に裁判所へ提出した書面によると、パイク死刑囚はナッシュビル近郊の病院で人工呼吸器につながれ、意識不明の状態が続いている。
弁護団は1日、パイク死刑囚について、致死量とみられる鎮静薬ペントバルビタールを2度投与された後に重体に陥り、救命治療を受けていると明らかにしていた。
弁護士は声明で、「パイク氏は刑の執行が試みられた際に投与されたペントバルビタールで深刻な影響を受け、治療を受けている。両腕にも重い損傷がある」と説明した。
弁護団は2日、ナッシュビルの裁判所に緊急申し立てを行い、「9月30日夜に起きた州の死刑執行失敗に関連する全ての証拠を保全する」よう、テネシー州矯正局に命じることを求めた。
弁護団は、この申し立てについて速やかに審問を開くことも求めている。州矯正局は、係争中の案件であることを理由にコメントを控えた。
パイク死刑囚は1995年、コリーン・スレマーさん(当時19)を殺害した罪で死刑判決を受けた。執行されれば、テネシー州で200年ぶりに処刑される女性となるはずだった。今回の事態を受け、パイク死刑囚をめぐる法的手続きは当面、停止することになる。
テネシー州のリー知事(共和党)は1日、パイク死刑囚のケースについて、第三者による「徹底的かつ包括的な」検証を行う方針を発表した。CNNは知事室にコメントを求めている。
テネシー州のスクルメッティ司法長官の事務所は声明で、「知事が調査を求めたのは適切な判断だ。何が起きたのかを解明する必要がある」とした。
リー知事はまた、12月に予定されていたゲーリー・サットン死刑囚の刑執行も停止した。
サットン死刑囚の弁護団は声明で、執行停止に感謝の意を示したうえで、「クリスタ・パイク氏が味わったような苦しみは誰一人強いられるべきではない」と述べた。
テネシー州ではここ数年、死刑執行の停止と再開が繰り返されてきた。リー知事は2022年にも、検証のため執行を一時的に停止。今年に入ってからも、静脈の確保に手間取り、薬物注射による死刑執行を断念する事例が起きていた。
弁護団は減刑を要求
パイク死刑囚の刑の執行は当初、9月30日午前に予定されていたが、直前の法的な申し立てを受け、同日の遅い時間帯に延期された。
現場に立ち会ったメディア関係者によると、刑の執行手続きは夕方から始まり、パイク死刑囚は午後7時26分に最期の言葉を述べた。しかし薬剤を2度投与された後も、いびきをかき、生きているように見えたという。
地元メディアWPLNの記者は、「何もかも異常だった」「私は昨年の死刑執行をすべて取材し、今年もほとんどを取材しているが、こんな例は見たことがない。ひどい状況だった」と振り返った。
テネシー州矯正局は、失敗に終わった今回の執行の間、一貫して定められた手順に従って対応したとしている。
パイク死刑囚の弁護士の1人は、執行手順の検証を求めた州知事の要請だけでは不十分だと指摘。パイク死刑囚は「米国の死刑の歴史上、誰よりも過酷な」罰に耐えたとして、リー知事に減刑を求めた。
弁護団は裁判所に対して事前に、パイク死刑囚は静脈に問題があり、薬物注射による刑の執行は難しいと警告していたという。
弁護士は声明で「我々の予想が的中したのは、決して喜ばしいことではない。だが、パイク氏が訴えていた懸念は現実のものになった。静脈の確保の難しさ、静脈の損傷、ペントバルビタールの劣化。必然的に問題が生じた際にも、救急医療を受けられなかった。すべては今なお秘密に包まれている執行手順の下で行われた」と指摘した。
9月30日に起きたのは、まさにパイク死刑囚が「最も恐れていたこと」だったと、弁護士は語る。
「死ぬことを恐れていたわけではない。長時間にわたって苦痛を味わう凄惨(せいさん)な死に方を恐れていた。実際、その通りのことが起きた。死なずに済んだ、という一点を除けば」