英文学の名作「ジェーン・エア」に中国が注目 10代向けの恋愛の教材として

香港(CNN) 今月初めから新学期が始まった中国国内の学校で、必読書のリストに新しく加わった1冊の本が目を引いた。19世紀英国の小説「ジェーン・エア」だ。

この古典的な名作は、当初女性の権利拡大を描く先駆的な作品とみなされていた。中国では当局がイデオロギーへの同調を求め、教科書を厳しく監修しているだけに、意外な選択と思えるかもしれない。

だが中国当局は、作者シャーロット・ブロンテからのもうひとつのメッセージに着目している。それは、真実の愛を見つけることの尊さだ。

北京市共産党委員会の機関誌・北京日報によると、この小説にはSNS時代の「外見や財産をめぐる表層的な考え」に対抗する力があるという。

インターネット上では近年、富をひけらかす行動や裏切られた恋人たち、苦悩する大富豪、報復を企てる不運な愛人たちを描いた突拍子もない筋書きのオンライン小説やショートドラマが娯楽の主流となり、中国の検閲当局はこれに目をつけている。

放送規制当局は6月、恋愛関係や結婚への「ゆがんだ」見方を広めているとみなされる「有害で低俗な」コンテンツの取り締まり作戦に乗り出した。

北京日報によれば、孤児の少女が多くの苦難を乗り越えた末に裕福な雇用主と恋に落ち、自立を見出すという「ジェーン・エア」の物語によって、14歳の生徒たちの「より健全な価値観」が養われるという。

1896年、J・M・デント社刊の「ジェーン・エア」に挿入されたH・S・グレイグによる口絵/DEA Picture Library/De Agostini Editorial/Getty Images

「子どもたちが最初に恋愛感情を抱き始めながらも、まだ世間知らずで経験が浅い時期というのは、健全な人格を形成するうえで極めて重要な段階だ」と、北京日報は伝えている。

青春文学の「ジェーン・エア」は、1925年に中国に紹介されて大きな人気を呼び、これまでに数え切れないほど翻訳、出版されたり、舞台化、映画化されたりしてきた。文化大革命の混乱が終結した後の79年には、国内の劇場で英国製作の映画も上映された。

ジェーン・エアが将来の夫に「私が貧しく、目立たず、美しくもなく、体が小さいからといって、私には魂も心もないとお思いですか」と迫るせりふは有名だ。中国の労働者階級はずっと、そんなジェーンを抑圧に抵抗するヒロインととらえてきた。また、この本は中国の共産党体制にも長年受け入れられてきた。

だが中国でフェミニズムの議論や活動に対する監視が強化されつつある今、教育課程にこの本が組み込まれたのは驚きだ。

父母たちの間では、比較的恵まれた環境で育ってきた中国の現代っ子たちが、この小説に描かれる深く複雑なラブストーリーを理解できるだろうか、共感するだろうかと疑問視する声も上がっている。

ある母親は息子から、「ジェーン・エア」を読むのは「同級生の女の子たちに、恋愛によって自分の脳を理不尽に支配されるのがいいと教える」ことにならないかと尋ねられたという。

母親は中国のSNS「小紅書」に、ジェーンが失明した男性との結婚を選んだ理由が分からない、割に合わない話にしか思えないという息子の言葉を書き込んだ。

大学の文学部を最近卒業したという北京在住のチン・シーウェンさんはCNNとのインタビューで、「ジェーン・エア」のような名作を初等教育に取り入れることは「ぜひとも必要」だと語った。

「中国の基礎教育は学問的知識や成績の優秀さに大きな重点を置く一方で、愛や人格形成には全くといっていいほど目を向けていない」と、シーウェンさんは言う。

アロンゾ・チャペルが描いたシャーロット・ブロンテの肖像画/powerofforever/Digital Vision Vectors/Getty Images

だが、1847年に発表された同作品をめぐっては近年、ブロンテが繰り返し「屋根裏の狂女」と呼ぶ登場人物の扱いが批判を呼んでいる。

北京の清華大学で社会学を研究するヤン・ハイロンさんは、「屋根裏の狂女」の描写と作品の「根底にある植民地主義というテーマ」は「考えれば考えるほど、問題をはらんでいるように思えてくる」と話す。

ヤンさんは、この作品が若者の健全な価値観を培う助けになるのだろうかと疑問を投げかけ、一部の生徒は「内部に埋め込まれた問題のある概念を批判的に検討することもなく」、ただ話を吸収してしまうかもしれないと指摘した。

ヤンさんはCNNに、「この小説を中学校レベルで教えるのは少し心配だ。教科書として、あるいは奥深い恋愛の例として教えるとしたらなおさらだ」と語った。

イデオロギー強化策

中国が今月から導入した新たな教科書は、子どもたちの思想や価値観を共産党が掲げる核心的価値観に沿わせる取り組みの一環として、広範囲にわたり改訂されている。

9年間の義務教育制度では近年、共産党の歴史や中国伝統の道徳観、国の法制度が必修の項目となっている。21年には、習近平(シーチンピン)国家主席による「新時代の中国の特色ある社会主義思想」を説明する一連の教科書が配布された。

今年の変更点としては「ジェーン・エア」のほか、創造的思考に関する項目が削除されたこと、多方面に優れた社会主義の建設者となる方法を説く新たな教科書や、スポーツ、宇宙開発分野での中国の成果についての説明が導入されたことが挙げられる。

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原文タイトル:Love is in the Eyre: China turns to classic English novel to teach teens about romance

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