読売新聞が首相退陣報道を検証 「結果として誤報、おわびします」

 読売新聞は3日付朝刊で、石破茂首相の進退について「退陣へ」などと報じた7月の紙面や号外の経緯を検証する記事を掲載した。首相が辞意を周囲に明言したがその後翻意した可能性があり、結果として誤報となったとの見解を示した。あわせて読者へのおわびのコメントを載せ、関係者の処分を発表した。

 検証記事は朝刊では1面と、1ページの特集で掲載。読売新聞オンラインでも3日、配信した。

 検証対象としたのは「月内にも退陣を表明する方向で調整する」と報じた7月23日付夕刊1面と号外、「退陣へ」と報じた翌24日付朝刊1面。読売新聞オンラインでも同様に報じている。

 首相は、読売新聞などが退陣の意向を固めたことを報じた後の23日午後、記者団に「一部に報道があるが、私はそのような発言をしたことは一度もない」などと退陣を否定。その後も、続投の意思を表明している。

 検証記事では、読売新聞が23日付夕刊で報じる前日の22日夜、首相は周辺に「記者会見を開いて辞意を表明する」などと明言。23日には、首相の意向に変化がないことを改めて取材し、退陣の意向は「変わりはない」との認識を示したことから、首相側にメールで通告し、報じたとした。しかし、首相がその後、翻意した可能性があり、その可能性への思慮が足りなかったと結論づけた。

 検証記事では「首相は様々な場で『自分は辞めるとは言っていない』と繰り返している。こうした虚偽の説明をされたことから、進退に関する首相の発言を詳細に報じることにした」と説明している。

 検証記事の掲載時期について読売新聞グループ本社広報部は「9月2日の自民党両院議員総会で続投する意向を表明するタイミングを捉え、報じることにした」と朝日新聞の取材に回答した。また、読売新聞オンラインで配信された「退陣へ」の記事について同広報部は「当時、石破首相が2日にわたり、複数回、退陣する意向を明言していたことは事実であり、当時の報道を取り消すべきでないと考えている」として、削除しないと答えた。

 検証記事では、読売新聞東京本社は9月9日付で、前木理一郎専務取締役編集担当と滝鼻太郎執行役員編集局長について、役員報酬・給与を1カ月10%を返上する処分を発表。川嶋三恵子政治部長と政治部デスクを譴責(けんせき)、首相官邸クラブキャップを厳重注意にするという。

 読売新聞は8月にも、東京地検の捜査対象者を取り違えたとして前木専務取締役編集担当の減給処分などを発表している。

 首相の「虚偽説明」と断じられたことについて林芳正官房長官は3日の記者会見で、7月の退陣報道に対し「(首相は)一部にそのような報道があるが、私はそのような発言をしたことは一度もない旨述べられている」と語った。

自民党広報担当の経験もある政治アナリスト伊藤惇夫さんの話

 政治家が実際に語ったことでも、翌日になって「状況が変わった」と言われればそれまで、というのが永田町の世界だ。政治取材では常識で、首相退陣報道は「辞任ありき」で取材したのではないか。一国の総理大臣の退陣について、報じる直前に直接取材しない手法はどうかと思う。検証したこと自体は評価できるが、遅きに失した感がある。また、首相は「辞める」と明言した、と殊更に強調し「虚偽説明」とまで断じるのは「自分たちは間違っていない」という言い訳に思え、検証としては疑問が残る。

     ◇

 参院選大敗を受けた石破首相(自民党総裁)の進退をめぐっては、朝日新聞は選挙直後から政権幹部らに対し、取材を重ねてきた。その結果、首相に退陣する考えはなく、続投に強い意欲を示していると判断していた。こうした状況を踏まえ、7月24日付朝刊1面に「首相進退、党内の対立激化 石破氏、即時退陣を全面否定」という記事を掲載した。

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