7、カナダもグローバルアイ購入交渉を開始

カナダのカーニー首相は昨年の選挙中「カナダ製の空中早期警戒機を取得する」と約束し、米ディフェンスメディアは「入札からボーイングのE-7を排除すべきではない」と訴えていたが、カーニー首相はサーブとグローバルアイ購入に向けた交渉に入ったと明かした。

参考:Canada negotiating to buy Saab’s GlobalEye airborne early warning aircraft

カナダのカーニー首相は昨年の選挙期間中「我々は主権に対する米国の脅威に備えなければならない。米国は我々の土地、資源、水、そして我々の国を狙っているのだ。彼らは我々を支配するためカナダを壊そうとしている。そうさせないためには現実を認識し、もっと努力する必要があり、この新たな現実に対応した計画が必要だ」と述べ、選挙公約の中でも新型潜水艦、大型砕氷船、無人航空機、水中無人機、カナダ製の早期警戒機、自走砲、地上配備型防空システムの取得に言及。

出典:Mark Carney

米国のディフェンスメディアは「カナダとの不透明な関係が続く中でカナダ市場へのアクセスを失うのではない」と心配していたが、サーブは「Global6000/6500ベースのグローバルアイ提供準備が整った」「グローバルアイの中核をなすのはカナダ製のGlobal6000/6500だ」「この実績があるプラットホームに最先端のセンサーとミッションシステムを組み合わせることで費用対効果の高いソリューションを提供できる」「サーブはボンバルディアとの強力なパートナーシップを通じてカナダ国内からの調達を最大化し、付加価値の高い雇用を創出し、カナダ企業をグローバルサプライチェーンに統合することで防衛産業を支援できる」と発表。

これに対してWar Zoneは「グローバルアイはE-7とは異なり2つ目のレーダーを備えた監視機で、機体下部に搭載された海上監視専用のレーダーはジェットスキーや潜水艦の潜望鏡のような小型の物体も遠距離から検出可能だ」「E-7も搭載レーダーで海上監視も可能だが基本能力ではなく2つ目のレーダーも搭載していない」「北極圏におけるプレゼンス強化を目指すカナダにとってグローバルアイの能力は関心を引くものになるだろう」「しかもベース機体がカナダ製なので産業上の利点も大きい」と述べたが、それでも入札からボーイングを排除すべきではないと訴えた。

出典:flybyeigenheer/CC BY-SA 2.0

“カナダはCP-140の後継機にP-8を選定した。E-7はP-8と同じ737ベース、さらに米空軍もNATOもE-7を導入するため高度な相互運用性はもちろん相当な共通性も提供できる。しかしトランプ大統領は関税の対象国として真っ先にカナダを上げ、合衆国51番目の州にすると繰り返し主張している。そのためカナダにとって運用能力の独立性は非常に重要な問題となり、グローバルアイを選択すれば米国が支配するサプライチェーンやネットワークから解放されるだろう”

“過去にもボーイングは「ボンバルディアが補助金を受け取って市場価格よりも安価にCシリーズを販売し、ボーイングの売上を脅かしている」と訴え、両国間で経済摩擦が発生したためカナダはF/A-18E/F調達を中止した。その痛みもP-8を選定するころには忘れ去られていた。今回もオタワとワシントンの関係がどうであれ入札からボーイングを排除するのは賢明ではない”

出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Andrew Lee

しかし、カナダのカーニー首相は「防衛と安全保障上の優先事項」に関する演説の中で「米国の優位性は過去のもの」「現在の米国は覇権的地位を金銭獲得のため利用している」「安全保障分野への追加投資は国内産業を強化して米防衛産業への支払いを少なくすること」「カナダは欧州再軍備計画に参加する」と、ダボス会議での演説でも「もう米国が掲げる秩序やスローガンを支持するのをやめる」と言及して米国との蜜月関係終焉を宣言。

カナダ政府は今年2月に発表した防衛産業戦略の中でも「カナダには米国と密接に協力してきた長い歴史があり、今後も強固な米加防衛関係の継続を期待している」と前置きした上で「重要な防衛能力のカナダ化のため国内サプライヤーからの購入を優先する」「共通の目的のためパートナーシップを構築する」「カナダは信頼できる同盟国や多国籍企業との提携を追求して必要な能力を確保する」と言及し、カーニー首相は27日「高度なセンサーとミッションシステムを備えたサーブのグローバルアイは北極圏全域の脅威を探知し抑止するための重要なツールになるだろう」と明かし、カナダはグローバルアイ購入に向けた交渉に入った。

出典:U.S. Air Force photo by 2nd Lt. Mark Goss

フランスは独自に運用するE-3Fの後継機にグローバルアイを選択、ドイツのピストリウス国防相もAWACSの独自取得に向けて「グローバルアイが最有力候補だ」と言及、NATOもE-3後継機としてE-7を選定していたもののトランプ政権の不確実性、欧州の安全保障に対する方針転換、欧州と関係悪化が重なり、E-7購入を中止してE-3後継機にグローバルアイを選定し、2026年7月にアンカラで開催されるNATO首脳会議で「最終決定が下される予定だ」と報じられている。

米国では議員からの激しい反発を受けてE-7調達中止が撤回されたものの、NATO加盟国に対して米軍採用というアドバンテージは意味をなくしつつあり、サーブにとっては「何もしなくても競合が嫌われてグローバルアイが売れていく」という珍現象に笑いが止まらないだろう。

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※アイキャッチ画像の出典:Saab

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