グリーンランドは「売り物」? 上川前外相が現地で見たトランプ危機

到着間近の機上で上川陽子前外相が撮影したグリーンランドの風景=提供写真

 トランプ米大統領が「購入」に意欲を示し、波紋が広がるデンマーク自治領グリーンランドを上川陽子前外相が訪れた。米国とロシアの間に位置し、氷に覆われた世界最大の島は、安全保障面で世界中の注目が高まっている。自治政府の要人らとの対話で何を感じ、日本はどう向き合えばいいのか。上川氏に聞いた。【聞き手・鈴木悟】

 ――今月2、3日にグリーンランドを訪問した経緯を教えてください。

 ◆私は民間人だった20代の頃から北極を巡る平和政策や活動に携わり、政治家としても自民党の「北極のフロンティアについて考える議員連盟」で幹事長を務めてきました。

 トランプ氏の発言以来、グリーンランドの地政学的な重要性がさらに強まっている状況もあり、自治政府側から「ぜひ現地を視察してほしい」と声をかけていただきました。

 私自身、これまで北極に関しては広い意味で日本の外交安全保障政策の一環として位置付けてきましたので、その延長線上で今後さらに関係を強めたいとの思いで訪問しました。

 ――トランプ政権に対し、現地でどのような思いを感じましたか。

 ◆自治政府の要人や先住民の方々と対話し、グリーンランドが今、非常につらい立場にあることを感じました。

 マッツフェルト外相からは「私たちは常に経済的に開かれているが、売り物ではない(not for sale)」との象徴的な発言がありました。持続可能な開発や先住民コミュニティーの主権を守る強い意志を感じました。

 ――米国のバンス副大統領が3月にグリーンランドを訪れ、「デンマークより米国の安全保障の傘下にいた方がいい」と述べるなど、一方的に自国領とするかのような発言もしています。

 ◆現地の声を聞いて感じたのは、急激な注目と関与の高まりで戸惑っている状況だということです。自治政府や先住民コミュニティーは、トランプ政権幹部の発言や訪問を懸念しているように見受けられました。

 ――自治政府の今後の方針は。

 ◆北極圏は今もなお、温暖化で急速に氷が解け続け、…

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