認知症による要介護リスクが50%減「元気な高齢者がしていること」【6000人調査で判明】(ダイヤモンド・オンライン)

6/14 20:00 配信

 健康状態は年代ごとに大きく変化し、それらは個人の働き方にも少なからず影響を及ぼしている。さまざまなデータをもとに高齢期の仕事と健康の関係を読み解く。※本稿は、ニッセイ基礎研究所生活研究部の坊 美生子『女性たちの定年後――お金・仕事・暮らしのリアル』(祥伝社)の一部を抜粋・編集したものです。● 働き続ける上で重要な “健康状態”という視点 いつまで働くか、どのように働くかを考える上で、健康は重要な判断材料でしょう。健康状態は個人差が大きい問題であり、一般化が難しいですが、少なくとも男女で異なる傾向が見られるので、ご説明します。 男女共同参画白書(令和6年版)より、性に特有の病気を年齢階級別に見ると、男女では内容と発生時期が異なります(図表16)。男性は「前立腺肥大」や「前立腺の悪性新生物(前立腺がん)」などは40代までは少なく、50代に入ってから急増しています。

 これに対して女性は、20代から60代前半まで、ピーク時期を分けて、さまざまな病気の患者数が増減しています。「月経障害」は20代をピークに、40代後半ごろまで多く発生しています。

 「乳房の悪性新生物」(乳がん)は30代後半から増え始めて50代でピークを迎えています。「閉経期及びその他の閉経周辺期障害」(更年期障害)は40代から50代後半まで多く発症し、60代前半になるとゼロに近づきます。つまり、女性は就業人生の始めから定年に近づくころまで、何らかの、性に特有の病気を抱えやすいと言えます。 病気にかかわらず、何らかの体調不良を感じている人の割合も、女性は男性に比べて高いです。内閣府の「令和5年度男女の健康意識に関する調査」より、過去1カ月間で体の具合が悪い箇所(自覚症状)を男女別に見ると、女性でもっとも多いのは「肩こり・関節痛」(腰、膝、手足)で、40〜50代だと4〜5割が感じています。同年代の男性は3割前後なので、男女で10ポイント以上の差があります。● 働く女性が確保しづらい 自分の健康のための時間 また、「だるい、疲れやすい、動悸・息切れ」も、女性の40〜50代は3割を超えるのに対して、同年代の男性は約2割ですから、やはり10ポイント以上の差があります。その他の自覚症状も、概して女性のほうが、割合が高いという結果になりました。逆に、体調不良が「特にない」と回答した割合は男性のほうが高いことが分かりました。 就業期間を通じて体調不良を覚えやすい女性は、現状でどのように対応しているのでしょうか。実は、我慢している人が多いのです。同調査によると、「もっとも気になる症状に十分に対処できている」と回答した割合は、女性で43.5%でした(男性は45.5%)。男女差はそれほど目立たないものの、回答者の属性別に細かく見ると、ここでも男女役割分業の影響が浮かび上がってきました。

 正規雇用の労働者で、かつ小学生以下の子と同居している人のうち、「十分に対処できていない」と回答した人にその理由を尋ねると、「仕事や家事・育児・介護で忙しく病院等に行く時間がない」が、女性では40%に上りました(男性は24.6%)。仕事が忙しいと、通院を後回しにしがちなのは男女共通だと思いますが、女性の場合は、さらに育児など家の仕事が上乗せされ、「自分の健康のための時間を、なかなか確保できない」といったところではないでしょうか。

 それでは、女性が働き続ける上で、このような病気や体調不良にどう対応していけば良いのでしょうか。特に定年時期が近くなったり、定年を過ぎたりすれば、「体調が悪いから仕事を辞める」という判断は自然なことですが、「ペースを落とせばまだ働ける」と言う方は、体調や体力に応じて、柔軟な働き方ができる職場を選ぶという方法もあるでしょう。後述しますが、仕事を続けることで介護予防や孤立・孤独予防にもつながります。 例えば、勤務地が自宅から近い職場を選ぶことで通勤負荷を下げられますし、正社員で「週4日」「1日6時間」などの短日勤務や短時間勤務ができる職場や、パートタイムを選ぶことができれば、疲労回復しやすく、仕事を続けられるかもしれません。● 高齢期の働き方は 選択肢が増える 筆者がインタビューした女性Nさんは、体力を考えて、65歳以降は週2日勤務に切り替えたいと話します。また、通勤の負担軽減のために、職場近くに引っ越し、60歳手前で人生初のひとり暮らしを選んだ女性もいます(Yさん)。支出が減り、高い収入を得る必要性が減る高齢期こそ、「働く」「働かない」の2択ではなく、多様な選択肢の中から自身に合った働き方を選ぶことができるのではないでしょうか。 仕事と健康の関係についてもう1つの重要な視点は、高齢期に働き続けることが介護予防や認知症予防につながり、健康面のプラス効果が期待できることです。 これまで老年学では、高齢者自身の社会参加が、生命維持や介護予防、認知症予防などにプラスの影響を与えることが指摘されてきましたが(*1)、就労の場合も同様の効果があることが報告されています(*2)。 直近では、東京都健康長寿医療センター研究所の藤原佳典氏らの研究チームが、もともとフレイル(要介護手前の心身機能が悪化している状態)ではない高齢者約6000人を3.6年間、追跡調査したところ、フルタイムで就業している場合と、パートタイムで就業している場合のいずれも、まったく働いていない場合に比べて、要介護認定を受けるリスクが約3割低いことが分かりました。特に認知症を主因とする要介護認定を受けるリスクは、約5割抑制されたことが分かりました(*3)。 また、もともとフレイルの状態だった高齢者についても、要介護認定を受けるリスクは、フルタイムで就業している場合は、まったく働いていない場合に比べて約6割低いことが分かりました。つまり、高齢者は仕事を続けることが介護予防や認知症予防につながると改めて裏付けられたのです。 高齢になったら、心身への負荷が大き過ぎない範囲で働き、しばらくして、就労そのものを負担に感じるようになってきたら、ボランティア活動や地域活動などで社会参加をできる範囲で続けることが、健康維持のためにはメリットが大きいと言えます。 (*1)…岡戸ほか(2002)、吉澤ほか(2019)など。(*2)…高ほか(2008)

(*3)…Y.Fujiwara et al(2023),The relationship between working status in old age and cause-specific disability in Japanese community-dwelling olderadults with or without frailty:A3.6-year prospective study,Geriatrics&Gerontology International(WILEY Online Library).

坊 美生子

最終更新:6/14(日) 20:00

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