AIが解決できない教育の壁、グーグル幹部が語る「動機」の重要性(Forbes JAPAN)

ベン・ゴメスの母親はインドで地理の教師をしていた。しかし、チョークの粉じんへのアレルギーでキャリアを断たれると、代わりに自宅で子どもたちに教えるようになった。母親が植え付け、以後50年にわたり息子の人生を形づくることになるものがある。好奇心だ。ゴメスはその後、21年にわたりGoogle検索の構築に携わり、1日に何十億件ものクエリを処理するシステムを統括した。現在はGoogleラーニング&サステナビリティ担当チーフ・テクノロジストとして、教育の未来と、AI(人工知能)を世界の教育に取り入れるという同社のより広範な取り組みを考える、社内でも最上位の人物の1人である。 私がゴメスと向き合ったとき、確かめたいことがあった。AI企業が自動化されたチューターや個別最適化の学習エンジンを競って開発するいま、Googleの教育分野を率いるキーパーソンの1人は、学びにおける最重要課題は何だと考えているのか。 返ってきた答えは拍子抜けするほどシンプルだった。「動機」である。そして彼は、解決策がAIだとは思っていない。 ■「どう学ぶか」ではなく「なぜ学ぶか」 「テクノロジーは、学び方やその細部を改善できる」とゴメスは言う。「しかし、なぜ学ぶのかは非常に人間的なものだ」 AIを活用した教育ツールに何十億ドル(何千億円)も投じている企業に身を置く人物の発言としては、印象的な主張である。だがゴメスは会話を通じて繰り返し、この区別に立ち返った。学習のメカニズムはテクノロジーで次第に解けるようになっている一方で、学びたいという欲求は、頑固なまでに、そして美しいほどに人間の領域に残り続けているという点だ。 彼はそれを個人的な観察に基づいて語った。「人生で大きな成果を上げた人で、『1冊の本によって開花した』と言う人を私は知らない」と彼は言う。「ほとんどの場合、人によって開花する」 彼は言葉を切った。「ほとんどの場合、教師が何かを言ったり、違う接し方をしたり、学ぶというプロセスに対する感じ方を変えたりする」 私自身もかつて教室に立ち、かつて工業で栄え、現在は衰退したイングランド北部の町で働いていた者として、これは腑に落ちる。私は実際の授業と同じくらい、教室運営に時間を費やした。伸びたのは最も豊かな環境を持つ生徒ではなく、ゴメスの言うところの「開花」を、誰かから引き出された生徒だった。自分は大切にされているのだと感じさせてくれる誰かがいた生徒である。 「その状況で自分は大事な存在だと感じた瞬間、前へ走り出せる」と彼は言う。「そして、そこで初めて、あらゆるツールが役に立つ。前進を助けるために」 含意は明確だ。AIは加速装置ではあっても、点火装置ではない。 ■スペル修正から学びの未来へ ゴメスの視点が一風変わっているのは、そこへ至る道筋にある。Google検索で彼が手がけた大きなプロジェクトの1つがスペル修正だった。この仕事のパートナーはノーム・シャジーアで、のちに2017年、今日の主要AIモデルの基盤となるTransformer(トランスフォーマー)アーキテクチャを提示した論文「Attention Is All You Need」の共著者となった人物である。 「検索における中核課題は、言語の課題だった」とゴメスは言う。そして、その初期の仕事から、生成AIがいま教育分野で可能にしていることへと、彼は一直線に結びつけた。

Forbes JAPAN
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