バリケードが異例の購入、グッズ化も 「いらないけど欲しい」可愛さ

有料記事

森北喜久馬

 工事現場でよく見かけるバリケードが「いらないけど欲しい」と評判を呼び、一般の個人客から注文が相次ぐ異例の現象が起きている。さらにはお菓子やおもちゃなど様々にグッズ化されるまでに。一体、何が起きているのか。

 人気を集めるのは、福島県会津若松市にあるワシオ商会が作った「赤べこバリケード」だ。

 工事現場や舗装中の道路で、人が入らないよう安全対策で置くバリケード。近年はデザイン性に富むものが増え、キリンやタヌキ、ウサギといった動物のほか、くまモン熊本県)や、ぐんまちゃん群馬県)、トッキッキ(新潟県)など「ゆるキャラ」をあしらった製品もあるが、福島県のご当地版はまだなかった。「それなら郷土玩具の赤べこを」と、工事用機材の販売・レンタル業を営む鷲尾伸一社長(62)が思いつき、妻の一美専務(50)がデザインした。

 赤べこは疫病神が嫌う赤色をしたウシで、会津では魔よけや疫病よけの縁起物として親しまれている。

 2023年春、福井県にあるメーカーに「この色にして下さい」と赤べこを添えて3千台を発注した。

 販売価格は1台8800円(税込み)。半分は建設や土木関係の業者、残り半分はレンタル用という想定だった。ところが、個人客への販売がすでに500台近くになっている。

相次いだ1台だけの注文、役に立たないのに…

 きっかけは、福島県が主催するデザインのコンテストに応募し、プロダクトデザイン部門で銀賞をとったことだ。入賞作はJR福島駅近くにある福島県観光物産館で展示・販売される。

 観光物産交流協会がX(旧ツイッター)で今年3月に「赤べこバリケード」を紹介すると、「買えんのこれ!?ほっしぃ」「いらないけど、すごく欲しい!」「かわいい!欲しい!でも使い道が思いつかない」「うわーッ、可愛い…可愛すぎる…!欲しいけど狭い我が家のどこに置くのか…これは熟慮しなければ」などと投稿が相次いだ。表示回数(インプレッション)は266万を超えた。

 この後、全国から1台だけの注文が舞い込むようになった。バリケードは金具に鉄パイプを通して複数台をつなげることで初めて役立つもので、1台だけだとぱったり倒れてしまう。不思議に思って購入者に聞いてみると「室内で立てかけて飾っている」という答えが多かった。

 驚きは24年秋の会津若松市鶴ケ城ハーフマラソン大会でもあった。ワシオ商会の社長や社員たちは、赤べこバリケードをあしらったそろいのTシャツで出場した。すると、「どこで売っているんだ」と問い合わせが相次ぎ、急きょ商品化した。

手元に「残したい」「置きたい」と続々商品化

 商品はワシオ商会以外からも売り出されている。

 福島県いわき市小名浜にある菓子メーカー「いわきチョコレート」は、自社製品のパッケージに採用した。

 始まりは、栁沼大介社長(65)が23年夏、一美専務から「バリケードの形をしたチョコを作って欲しい」と相談を受けたことだった。

 「金型を作るだけでかなりかかる。売れなかったら大損ですよ」と断ったもののデザインが気に入った。手提げ用の紙袋を発注している印刷会社のデザイナーに「これをパッケージにできないか」と相談した。

 残したいと思えるように、商品名はあえて入れない。封は、はがしにくいテープを使わずに切れ込みを入れることにした。

 売り出した当初は「いらない」という店もあった。平箱に比べて数が置けないからだ。ところが、しばらくたつと「どうして持って来ない」と文句が来た。指名買いが相次いだのだ。

 今年7月下旬には、カプセルトイとしてメモ用紙が挟めるスタンドクリップとペンスタンドが売り出された。

 企画したのは三洋堂(愛知県岩倉市)のカプセルトイ部門の杉原龍興部長(39)。仙台市出身で、小学校の修学旅行で会津若松に行き、絵付け体験をして以来の赤べこ好きだ。入社後はブロック、ソフトビニール、コインケースと手を変え品を変え、赤べこを商品化してきた。会津若松に出張した際に高速道路の出口でバリケードを見かけ、ワシオ商会に相談した。

 カプセルトイは個人的に楽しむものだが、今回は職場でも使える実用性を重視した。「愛知だと『赤べこって東北だっけ』ぐらいしか知らない人が多い。会津の守護神だと知ってもらいたかった」

 カプセルトイは10月下旬からバンジハンエース(東京都台東区)も売り出した。2台を棒でつなぐという本物の縮小版。ボックス版も別に販売し、こちらには立て看板やドラム缶などを付け工事現場を再現する。

 生みの親の鷲尾社長と一美専務は言う。「工事用の資材がこんなことになろうとは。赤べこは幸せを運んでくれました」

工事資材店に「聖地巡礼」のファンが

 バリケードや関連商品を買った人たちに「どこが魅力なのか」と聞いてみた。

 東京都町田市でデザイン工房…

関連記事: