牛丼すき家の「みそ汁」にネズミ、客は代金払わなくていい? たまに発生する混入事件の法的問題

牛丼チェーン「すき家」は、客に提供した「みそ汁」の中にネズミが混入していたと発表した。あまり想像したくない出来事だが、飲食店の料理に「異物」が混入するケースはたまに起きている。法的にはどんな問題があるのだろうか。

●従業員が目視で混入を確認したという

すき家び運営会社の発表(3月22日付)によると、鳥取南吉方店で今年1月21日、客から「みそ汁にネズミが混入している」という指摘があった。その場で、従業員が目視で混入を確認したという。

原因について調査したところ、みそ汁の具材を入れたお椀を複数準備していて、そのうちの1つの中にネズミが混入していたと考えられているという。

この店はすぐに一時閉店して、衛生検査をおこなったり、従業員に徹底した教育をおこなったほか、保健所にも相談・確認してもらったうえで営業再開しているという。

客に「ネズミ」などの異物が混入した飲食物を提供した場合、どのような法的問題があるのだろうか。冨本和男弁護士に聞いた。

●代金の支払いを免れることができる

――異物が混入した飲食物を提供した場合、どのような法的問題がありますか?

まず前提として、店には「注文された飲食物を提供する義務」があり、客には「代金を支払う義務」があります。

そして、この義務を果たす際に「債務の本旨に従って履行」する必要があります。「債務の本旨に従って」といえるかどうかは、当事者の意思によって決まります。

社会通念上、ネズミが混入した飲食物の提供を受けたいという客はいないでしょう。店が提供した飲食物にネズミが混入していたのであれば、「債務の本旨に従った履行」とは言えません。

したがって、客としては、店に対して、代わりの飲食物の提供を求めることが考えられます(完全履行請求権)。

しかし、ネズミが入ってるような場合、客からしたら、ふたたび飲食物の提供をされても困る、あるいは代金を支払いたくないと思うのが普通でしょう。

このような場合、店の飲食物提供義務は社会通念上「履行不能」となったと考えることができ、客としては、契約を解除して、代金の支払を免れることができると考えます(民法542条1項1号)。

●客に損害が生じたら「賠償」も

――もし客が異物が混入した飲食物を食べてしまったりした場合はどうでしょうか?

また、もし客に健康被害や精神的な損害が生じた場合、店は不法行為責任や製造物責任があるとして、客に対して損害賠償しなければならなくなると考えられます。

製造物責任とは、製造物の欠陥から生じた損害に対して製造者などが負う責任のことです。

――こういう混入事件が発生した場合、店側はどんな対策をすべきなのでしょうか?

被害拡大を防ぐために、いったんお店を休業して、事実確認や原因調査をおこなうのは当然ですが、保健所等に速やかに報告する必要もあります。原因がわかれば、再発防止策をとる必要があります。

これらと並行して、客や世間一般に対しても謝罪・説明といった誠実な対応をとるべきでしょう。信頼回復のためには、必要なことだと思います。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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