「根回し廃止」で福岡県議会に何が起きた? 知事が答弁詰まり、職員「体が持たない」
福岡県の服部誠太郎知事が、議員への根回しをやめると宣言して始まった福岡県議会の9月定例会は、25日までに代表質問と一般質問を終えた。“出来レース”ではない議論が行われるようになった一方、想定していない質問に服部知事が十分に答弁できない場面が目立ち、議員からは「議論がかみ合わない」と不満が噴出した。「ガチンコ」の審議により県議会はどう変わったのか検証した。 ■福岡県みやま市に完成予定のワンヘルスセンターのイメージ図
「ワンヘルスにつきまして…」「平成筑豊鉄道の問題でございますが…」。代表質問初日の15日、服部知事はたびたび言葉を詰まらせた。自民党県議団の渡辺勝将会長は、事前に通告していなかった「再質問」を10問以上連発。答弁に窮する知事の元には、部長らが何度も駆け寄ってメモを差し出した。 17日には、新政会の椛島徳博会長の代表質問で、服部知事が「質問を整理させてください」と議長に申し出て審議が約5分間ストップする場面も。ある職員は「知事はガチンコ議会を掲げていたのに、答弁の声も小さくて情けなかった」と漏らした。 県側は従来、主に自民議員に対し、事前に知事の答弁を伝え、内容に納得してもらえるまで何度も書き直して擦り合わせをしてきた。9月定例会からは、質問の趣旨を聞き取り、答弁を1度だけメールで送る対応に改めた。開会前、ある部長は「再質問に備えていっぱい準備せないかん」と不安げに語り、別の幹部も「今回は未知の世界。議事が止まるかもしれない」と身構えていた。 実際、代表質問が迫ると、職員らは、再質問に備え連日深夜まで想定問答を準備。始発列車で帰宅し、シャワーを浴びてすぐに職場に戻った職員は「こんな対応が続けば体が持たない」とこぼした。 こうした状況に、自民の渡辺氏は記者団に「職員の働き方改革が損なわれるのは良くない。再質問には50%も答えてもらえなかった」と事前協議の必要性を訴えた。県民の声ふくおかの原田博史代表も代表質問の中で「根回しと質問の趣旨確認は違う。排除すれば議論がかみ合わず、不利益を受けるのは県民だ」と苦言を呈した。 県側は18日に始まった一般質問から、答弁内容をメールで送るだけでなく、職員が議員と面会して直接説明をするよう対応を変更。この結果、知事が答弁に詰まる場面はほとんどなくなった。 県は「擦り合わせではなく、議員の問題意識をしっかりくみ取るための対応だ」(財政課)と説明する。ただ職員の間には「業務が増えた上に、答弁の準備に漏れがあれば責められる。以前の方が良かった」との声が広がる。自民内でも、予算が付くなど“手柄”となるような答弁が引き出せなくなったことへの反発が根強く、ある中堅は「支持者にアピールできる答弁が整えられるよう、職員と調整できる仕組みに戻したい」と本音を漏らした。 一方、蔵内勇夫前議長が議員辞職し「オール与党体制」が崩れたことを背景に、他会派の議員らは、ワンヘルス政策や海外活動など一連の問題に切り込むようになった。椛島氏は「県政のうみを出し切るためのやりとりが活発化してきた。試行錯誤すれば、さらに良い議論ができるはずだ」と話す。 服部知事は24日、記者団に「従来のような根回しをすることはないが、円滑な議会審議、職員の負担軽減という観点からも議会と協議し、12月議会までに見直すべきは見直したい」と述べた。 ■本質は政策検証 抜本的な改革を 九州大の出水薫教授(政治学)の話 これまでの福岡県議会の審議は、事前の擦り合わせによって儀式化し、執行部が無難な公式見解を答え、議員がアピールする場になってしまっていた。 9月定例会は根回しを行わない形で行われたが、有意義な審議を行うには、執行部は議員に十分な情報を提供しなければならない。これは根回しとは異なる。水面下でのなれ合いにならないよう、やりとりは文書で行いその内容は県民にも公開されることが前提だ。 問われるべきなのは議論の内容だ。代表質問は本来、県政の大局的な方針について問題意識を知事にぶつけ、将来検証できるように議事録に残すことに意味があるが、今回も、個別事業の単純な確認に過ぎない質問も多かった。 反省の機会を生かし、県民が参画できる形で、県議会の在り方を抜本的に見直す改革を行うべきだ。