世界初、ドローンを避雷針代わりに利用するシステムを日本NTTが開発

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 日本の通信大手NTTが、驚くべき実験を成功させた。なんと、ドローンを使って雷を意図的に誘導することに成功したのだ。

 これは世界初の快挙であり、制御が難しい現象の一つである雷を、空飛ぶ避雷針として人間の手で管理できる可能性を示した瞬間だった。

 ドローン式避雷針は、危険な雷雲があればそこへ飛んでいき、強制的に雷を発生させることで機体に雷が落ちる確率を高めることができる。

 よりアクティブに街を雷の被害から守ってくれる新時代の避雷針なのだ。

 自然の放電現象である雷では、1度に家庭用の電力2ヶ月分(約400kW/h)に相当するエネルギーが放出されると推定されている。

 つい先日も中学生が落雷に遭うという痛ましい事故があったように、それが落ちた時の影響も甚大で、NTTによると国内だけでも毎年1000億~2000億円の被害が出ているという。

 危険な落雷から街を守るためによく利用されるのが避雷針だ。だが、この設備が有効に機能する範囲はかなり狭く、場所によっては設置できないこともある。

 そこでNTTの技術者たちは閃いた。「ドローンを飛ばして、避雷針代わりにすればいいじゃない!」と。

 それがNTTにより開発された「空飛ぶ避雷針」、耐雷ドローンである。

この画像を大きなサイズで見る耐雷ドローン image credit:NTT

 空飛ぶ避雷針を実現するにあたり、解決しなければならなかったのは、落雷でドローンが撃墜されないようにすることだ。

 たとえ雷を防いでくれても、壊れたドローンが落下してきたのでは、ちっとも安全ではない。

 そこで考案されたのが、雷撃へのシールドとして機能する「耐雷ケージ」だ。

 ドローン本体をアンテナのように囲むこの装備は、雷が直撃するとその電流を迂回させ、本体に流れないように作用する。

 またこのとき雷の電流は放射状に流れ、電流によって発生する磁界を相殺するようになっている。これによって、ドローンは電撃だけでなく、磁力によるダメージからも守られる。

 その防御力は平均的な落雷の5倍の威力に耐えられるもので、150kAの電流でもドローンは故障も誤作動もしないという。

この画像を大きなサイズで見る大電流・強磁界の耐雷化設計 image credit:NTT

 もう1つの工夫として、雷を誘導する「ドローン誘雷技術」も考案されている(ちなみに自然界にもあえて落雷を誘う樹木が存在する)。

 これはドローン周囲の電界強度を高めることで、強制的に雷雲から雷を発生させる仕組みだ。

 こうすることで、避雷針に偶然雷が落ちてくるのを待つのではなく、よりアクティブに落雷を予防できるようになる。

この画像を大きなサイズで見る電界変動を利用した雷誘発技術の原理 image credit:NTT

 島根県の標高900mの山間部で行われた実験では、雷雲から雷を発生させ、ドローンめがけて落とすことに成功。

 耐雷ケージの一部は溶けてしまったが、ドローン自体は直撃後も飛び続けることができたそうだ。

 今後の課題は、雷の発生位置を予測する技術の向上や、雷の発生メカニズムそのものの解明を通じて、ドローン誘雷の成功率をアップさせることであるそう。

 さらにドローンで受け止めた雷エネルギーの有効活用にも取り組むとのことだ。

この画像を大きなサイズで見るドローンを用いて街を雷被害から守り、雷エネルギーを蓄積するNTTのめざす世界 image credit:NTT

References: 世界初、ドローンを使用した雷の誘発・誘導に成功 / Japanese Scientists Just Summoned Lightning with a Drone. Here’s Why

本記事は、海外の情報をもとに、日本の読者がより理解しやすいように情報を整理し、再構成しています。

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