米コアCPI、5カ月連続で予想下回る-自動車価格の下落響く
6月の米消費者物価指数(CPI)は、食品とエネルギーを除くコア指数が5カ月連続で市場予想を下回った。ただ細部を見ると、企業が関税に伴うコストの一部を消費者に一段と転嫁し始めている状況がうかがえる。
キーポイント- コアCPIは前月比0.2%上昇-市場予想は0.3%上昇
- 総合CPIは前月比0.3%上昇-予想と一致
コアCPIの伸びを抑えたのは自動車価格の下落。しかし、玩具や家電などトランプ大統領が打ち出した関税措置の影響を受けやすい一部品目は、数年ぶりの高い伸びを記録した。
連邦準備制度理事会(FRB)当局者の間では、関税が物価に及ぼす影響が一時的なのか、より持続性があるのかを巡って意見が分かれている。今回のCPIはその両方の見解に材料を提供した格好だ。
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すなわち、政策金利据え置きを支持する当局者にとっては、関税コストが商品価格に転嫁されている状況が示された。一方、利下げ支持派から見れば、影響が広範囲に広がっている証拠はいまだ乏しい。2週間後の連邦公開市場委員会(FOMC)会合では、政策金利が据え置かれるとの予想が市場ではなお優勢だ。
FHNファイナンシャルのチーフエコノミスト、クリス・ロウ氏は関税の影響は依然として限定的だと指摘。「今月末のFOMC会合では、さらなる証拠が必要だと主張する勢力が踏みとどまり、再び主導権を握る公算が大きい。しかし、今のような状況が続けば、昨年と同様に9月により大きな利下げを求める圧力が強まる可能性がある」と述べた。
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食品とエネルギーを除いたコアの財価格は前月比0.2%上昇。5月は横ばいだった。
玩具の価格は2021年4月以来の大幅上昇。家庭用インテリア用品とスポーツ用品はともに22年以来の大きな伸び。家電は約5年ぶりの高い上昇率を記録した。
一方で、新車と中古車の価格は下落した。
インフレーション・インサイツのオメイア・シャリフ社長によると、自動車を除くとコア財価格は0.55%上昇と、21年11月以来の大幅上昇。同氏は「関税が影響し始めたことを今回の統計は示す」とリポートに記した。
トランプ氏が利下げ要求
しかし、コアCPIが市場予想を下回る状況が続いていることは、トランプ大統領が打ち出す関税措置が実際にどの程度の広がりをもって消費者物価に影響を及ぼすのかについて疑問を生じさせている。
企業の間では関税発動を控えた在庫積み増しや、利幅を削ってコスト上昇分の一部を吸収する動きも見られる。
トランプ氏はCPI発表後にあらためて利下げを要求。「消費者物価は低い。政策金利を直ちに引き下げよ」と、トゥルース・ソーシャルに投稿した。
CPI発表後、S&P500種株価指数は一時、日中ベースの最高値を更新したが、その後は下げに転じる場面もあった。ドル指数は発表直後は安値圏でもみ合っていたが、その後、米国債利回りに連れて上昇幅を拡大。円は対ドルで一時1ドル=149円台に下落した。
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エネルギーを除くサービス価格は0.3%上昇となった。サービス部門で最大の項目である住居費は伸びが鈍化。ホテル宿泊費の下落が影響した。
米金融当局が注目する住宅とエネルギーを除くサービス価格は、0.2%上昇に加速した。病院サービスの伸びなどが大きかった。
ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミスト、アナ・ウォン、クリス・コリンズ両氏は「弱いCPIは9月利下げの可能性を高めるかもしれないが、FRBが重視する個人消費支出(PCE)のコア価格指数は6月分が大きな伸びになると、われわれは予想している。PCE価格指数はこの夏を通じて高めの伸びが続く可能性がある。これは4月中旬以降の株式相場上昇の遅行効果を反映したものと考えられる」と分析した。
金融当局は賃金上昇にも注目している。この日発表された別の統計によると、実質平均時給は前年同月比1%上昇と、1月以来の低い伸びにとどまった。
統計の詳細は表をご覧ください。
原題:US Core CPI Rises Less Than Expected Again Despite Tariff Impact(抜粋)