35A調達縮小は決定的か、残る懸案事項は発表のタイミング

カナダはF-35導入契約の見直しを進めている最中で、カナダメディアのLa Presseは30日「オタワの政界で最大の関心事はF-35A調達計画を縮小し、代わりにサーブのグリペン導入を決断するか否かという点である」「水面下で戦闘機調達に関する決断は事実上決定されている」と報じた。

参考:Analyse Après les GlobalEye, le gouvernement Carney lorgne les avions de chasse Gripen

カナダと米国の2ヶ国間関係はトランプ政権のカナダ併合発言や関税問題の影響を受けて大幅に悪化し、New York Times、Defense News、War Zoneなどは「トランプ大統領の併合発言に執着するのではなく取引に集中すべきだ」「どうせトランプ大統領が脅しをかけてきたとしても冗談半分なのだから」「オタワとワシントンの関係がどうであれ装備品調達から米国製を排除するのは賢明ではない」と訴え、F-35A契約の維持や早期警戒機入札へのボーイング参加について楽観視していた。

出典:Mark Carney

しかし、カナダのカーニー首相は「防衛と安全保障上の優先事項」に関する演説の中で「米国の優位性は過去のもの」「現在の米国は覇権的地位を金銭獲得のため利用している」「安全保障分野への追加投資は国内産業を強化して米防衛産業への支払いを少なくすること」「カナダは欧州再軍備計画に参加する」と発言したため、米メディアは「防衛産業がカナダ市場へのアクセスを本当に失うかもしれない」と危惧、ダボス会議での演説でも「もう米国が掲げる秩序やスローガンを支持するのをやめる」と言及して蜜月関係の終焉を宣言。

カナダ政府は17日に発表した防衛産業戦略の中でも「カナダには米国と密接に協力してきた長い歴史があり、今後も強固な米加防衛関係の継続を期待している」と前置きした上で「重要な防衛能力のカナダ化のため国内サプライヤーからの購入を優先する」「共通の目的のためパートナーシップを構築する」「カナダは信頼できる同盟国や多国籍企業との提携を追求して必要な能力を確保する」と言及し、防衛産業協力や装備品調達における米国依存をやめて欧州やインド太平洋地域のパートナーと協力すると打ち出してきた。

出典:The White House

これは「米国と手を切る」という意味ではなく「もう米国への盲目的な追従をやめる」「カナダの国益に合致すると判断された場合のみ協力する」「今後の米国は絶対的ではなく数ある選択肢の中の1つ」となり、トランプ大統領が再三要求するゴールデン・ドーム参加について「カナダの国益に合致するなら参加する」という立場で、この国益とは軍事的合理性のことだけではないため「ゴールデン・ドームはカナダの安全保障に役立つから参加すべき」というのは野暮だ。

F-35A契約の維持や早期警戒機入札へのボーイング参加について同様で、カーニー首相は5月27日「サーブとグローバルアイ購入に向けた交渉に入った」と明かし、E-7採用を期待していた米防衛産業を落胆させたが、カナダメディアのLa Presseは30日「オタワの政界で最大の関心事は『カーニー首相がロッキード・マーティンのF-35A×88機の調達計画を縮小し、代わりにサーブのグリペンを導入してハイ・ローミックスの戦闘機戦力を構築する決断を下すか否か』という点である」「関係筋は水面下で戦闘機調達に関する決断は事実上決定されている」と報じた。

出典:Saab

カナダは2023年にF-35Aを88機取得する計画を発表し、既に16機分の契約を締結して資金供給を開始しているものの、残り72機分の商業契約が未締結なので「計画された88機取得」には法的強制力はなく「予定通りF-35Aを導入して米国に大きな影響力の行使を許すのか」「F-35Aとグリペンとの2機種体制にして米国の影響力を引き下げるのか」を検討中で、カーニー政権の閣僚らは公の場で「ロッキード・マーティンが契約全体を維持したいのであれば、カナダ国内への投資=オフセット内容を拡大しなければならない」と言及。

メラニー・ジョリー産業相は最近「F-35導入はカナダに対する産業的波及効果が不十分だ」「それ以上でもそれ以下でもない」「我々の目的は国内での雇用創出だ」と述べ、サーブはグリペンを採用した場合「カナダ向け需要とウクライナ向け需要の一部をカナダ国内で製造できる」「これにより約9,000人の新規雇用が創出され重要な防衛分野のサプライチェーン強化が期待できる」と提案し、La Presseは「政府はF-35A×約30機とグリペン×約60機を導入する折衷案を検討しており、残る懸案事項はこれを発表する最適なタイミングの政治的判断で、米国の中間選挙後に決定が下される可能性が高い」と報じた。

出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Andrew Lee

“米国はカーニー政権に対してF-35調達契約に関する決断を迅速に下すよう強く要求している。さらにコルビー国防次官は先週「カナダが国防上の公約について具体的な進展を見せていない」という理由で、北米最古の防衛協力機関=米加防衛常設合同委員会(PJBD)の活動凍結を発表した。ただし、こうした米国からの圧力に対してオタワは意に介さない姿勢を見せている。カーニー首相はLa Presseの取材に「私はナショナリストだ」と断言し、予想されるグリペン導入の決断はカナダの明確なナショナリズムを誇示する強力な象徴となるかもしれない”

北米航空宇宙防衛司令部のグレゴリー・ギヨト司令官は3月、米上院の公聴会で「北米の国境防衛においてF-35のような戦闘機は率直に言って必要不可欠なものではない」「F-35はむしろ海外での地上攻撃任務に適している」と述べており、米国の中間選挙後=11月以降にF-35調達計画の大幅削減という米国離れを象徴する動きが登場するかもしれない。

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※アイキャッチ画像の出典:SAAB

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