ベルギーの新型フリゲート調達が7年も遅延、既存艦退役に間に合わない可能性

ベルギーは新型対潜フリゲートの共同開発でオランダと合意し、2027年までに1番艦を手に入れる予定だったのだが納入遅延とコスト高騰に直面し、オランダ国防省は20日「引き渡しが2030年から2033年に変更された」と発表したため、ベルギーメディアが衝撃を受けている。

参考:Defensie Projectenoverzicht 2026 参考:Netherlands eyes more JASSM weapons for F-35, discloses ASW frigate delivery delay 参考:De Belgische marine heeft een groot probleem: bouw van nieuwe fregatten loopt helemaal fout

オランダはドローンなどの新しい脅威に対する防御力を強化したいと考えているため設計の見直しが続いている。

ベルギー海軍は1991年に運用を開始したオランダ海軍のカレル・ドールマン級フリゲート2隻を2005年に取得し、2007年に対潜フリゲートとして1番艦レオポルド1世と2番艦ルイーズ・マリーを再就役させたが、1980年代に建造された両艦の老朽化、武装の旧式化、スペアパーツの入手困難は深刻さを増しており、オランダ海軍もカレル・ドールマン級フリゲート2隻を更新する必要があるためベルギー海軍と共同で新型対潜フリゲート(ASWF)計画を立ち上げた。

出典:F931 Louise-Marie

両国は2017年に新型対潜フリゲートを計4隻調達することで合意、オランダがASWF計画を主導し、ダーメンとタレスが主契約者として新型対潜フリゲート(約6,000トン)の設計や建造を請け負い、オランダ海軍向けの1番艦を2024年、ベルギー海軍向けの1番艦を2027年までに引き渡す予定だったのだが、2020年にオランダ海軍への引き渡しが2027年~2028年に変更され、2023年にオランダ海軍向け1番艦の就役が2029年に、ベルギー海軍向け1番艦の就役が2030年になると発表。

この時点でASWF計画の遅れは確定していたものの、オランダ海軍は発注数を2隻から4隻に、ベルギー海軍も3隻目の発注がほぼ確定したため新型対潜フリゲートは建造規模は4隻から7隻に増えたのだが、オランダ国防省は20日に発表した国防プロジェクトに関する文書(Defensie Projectenoverzicht 2026)の中で「当初設計案は艦の安定性が不十分であると判明したため問題を修正するための作業、さらに将来の拡張性マージン(艦内の空間と重量)を増やす変更も行われ、設計フェーズが長期化した結果として新型対潜フリゲートの引き渡しが2030年から2033年に変更された」と言及。

出典:Ministerie van Defensie

ベルギーメディアのDe Morgenは23日「ベルギー海軍は深刻な問題に直面している」「新型フリゲート艦の納入が完全に滞っている」「緊急対策がなければ海軍は崩壊の危機に瀕する」と報じた。

“単純な話だ。海上でプレゼンスを示そうとするならば軍艦が不可欠である。ベルギー海軍が現在運用しているフリゲート艦2隻は既に退役時期に達しており、これでは到底本来の任務を遂行できない。現場の提督や水兵たちは長らく新型艦配備を渇望してきたが、その忍耐もいよいよ限界に達しつつある。オランダ政府はまたしても共同開発中の新型フリゲート艦計画が遅延すると公式発表した。ベルギー向けの1番艦が引き渡されるのは最短でも2034年になる見通しだ。これは当初の予定から実に7年もの遅れで、建造コストも上昇の一途をたどっている”

出典:F931 Louise-Marie

ベルギー海軍は2034年までレオポルド1世とルイーズ・マリーを維持するのは不可能だと見ており、関係者らは「フリゲート艦のない海軍などあり得ない」「これを運用していた人員を2034年を遊ばせることになり、フリゲートを使用した訓練もできず、NATOの海上演習にも参加できなくなる」と警告、2017年に合意した計画の調達コストは1隻6億ユーロだったのに現在は10億ユーロまで高騰、さらに最低でも2.5億ユーロの追加費用がかかると見込まれている。

“関係筋によれば「オランダ側は『気の毒だ』と言うだろうがそれだけだ」という。オランダ海軍は我々よりも規模が大きく遅延をカバーする選択肢も複数あるため新型フリゲート艦計画の遅延は決定的な致命傷にならない。オランダはドローンなどの新しい脅威に対する防御力を強化したいと考えているため設計の見直しが続いており、これが遅延とコスト増の主な要因だ。ベルギー側の解決策としてはシティ級掃海艇に対海賊対策能力を追加し、フリゲート艦の任務を部分的に肩代わりさせる案が浮上している。ただし対潜戦などの主要任務には対応できないためフリゲート艦のリースという選択肢も囁かれている”

出典:Naval Group

“最悪の場合、ベルギーはオランダへの発注をキャンセルして別の選択肢を検討しなければならないだろう。フランスのフリゲート艦は小型・高性能ではないが納期自体は早い。ただし、スウェーデンがフランスにフリゲート艦を4隻発注したので生産ラインも2032年まで一杯になっているかもしれない。オランダはベルギーが発注をキャンセルした場合でも確定発注分2隻を買い取る意向なので財務的な影響が限定的だが、ベルギーとオランダの海軍協力は同一艦運用が前提なので軍事的なダメージは計り知れない”

“専門家も「ベルギーの兵士は問題なくオランダのフリゲート艦で勤務できるが、フランス製艦艇に乗り換えればこの相互運用性は失われる」と指摘した。政治的にも現在の与党はオランダとのパートナーシップを重視している。デ・ウェーファー首相は今年初め「オランダ、ドイツ、ポーランド、バルト三国、イタリアなどによる新しい中央ヨーロッパ(Mitteleuropa)構築に未来を見出している」と語り、特にオランダとは軍事的な連携を深めたい考えだ。そしてフランス側はベルギー海軍のフリゲート艦調達に関心が薄い。気をつけないと「どうしてフリゲート艦が必要なのか」と言い出しかねない”

出典:Defensie – La Défense – Belgian Defence

ちなみに2番艦ルイーズ・マリーは2024年4月に地中海へ到着、スエズ運河を通過してフーシ派封じ込めの紅海作戦に加わる予定だったのだが、その前に実施された無人機の迎撃訓練でシースパローがランチャーに詰まって発射出来ず、他の迎撃手段(76mm砲、CIWS、機関砲、M134、SMASH搭載の小銃、ベネリM4)も標的の阻止に失敗したらしい。

この結果を受けてベルギー国防省はルイーズ・マリーの作戦参加を無期限で延期、4月末までに技術的問題を解決して紅海作戦に加わった。

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※アイキャッチ画像の出典:Ministerie van Defensie

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